診療の補助における特定行為等に係る研修の体制整備に関する研究

文献情報

文献番号
201520033A
報告書区分
総括
研究課題名
診療の補助における特定行為等に係る研修の体制整備に関する研究
課題番号
H26-医療-指定-029
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 淺田 義和(自治医科大学 情報センター)
  • 阿部 幸恵(東京医科大学病院 シミュレーションセンター)
  • 大湾 明美(沖縄県立看護大学 )
  • 亀崎 豊実(自治医科大学 地域医療学センター)
  • 波多野 浩道(藍野大学 医療保健学部)
  • 本多 正幸(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
  • 本田 芳香(自治医科大学 看護学部)
  • 村上 礼子(富山 礼子)(自治医科大学 看護師特定行為研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,068,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、看護師が就労する地域や施設の規模による受講機会や研修内容の格差を最小限にするための方策を検討することであり、2つの研究課題を設定した。研究課題1はへき地や離島を含む地域で働く看護師の高度臨床実践能力の向上に資する遠隔教育の手法等の検討であり、研究課題2は高度な専門知識及び技能をもって行う必要のある行為について、各医療機関等において実施される研修のあり方(特に実習等の指導に関わること)の検討であった。研究課題2については昨年度に終了しており、本年度は、研究課題1について、演習・実習部分を含めたさらなる検討を行った。
研究方法
特定行為研修の指定研修機関かつ研修受講看護師がいる医療機関1か所、指定研修機関ではなく研修受講看護師がいる医療機関5か所、指定研修機関でもなく研修受講看護師もいない医療機関8か所、計14か所の看護管理者又は看護職教育責任者等を対象にヒアリングを行った。また、eポートフォリオ及び演習・実習の指導体制におけるICTの活用についての文献検討及び情報収集を行った。
結果と考察
手引き・教育例集(第一次案)の有用性については、5施設の対象から「参考になった」等一定の評価を得られた。有用であった内容は、共通科目で利用可能なeラーニングコンテンツの紹介及び制度・研修の詳細な説明、指定研修機関・指導者の要件、教育例等であった。回答しなかった理由は主に「指定研修機関でも協力施設でもなく、わからない」であった。 手引き・教育例集への要望内容は観察評価OSCEの実施方法及び評価方法、eポートフォリオの具体かつ詳細な説明、実習の協力施設になるための要件(必要症例数含む)と準備すること、指導者の育成・研修に関すること等であった。指定研修機関の申請について12施設は予定なし又は難しいと回答し、その理由は「必要な設備又は人材の確保が困難又は確保できるか不明」、「医師の協力を得ることが困難又は医師不足」等であった。協力施設については、13施設の内、4施設が希望すると回答した。指定研修機関である対象から聴取した、ICTを活用した特定行為研修の実施に関わる準備は、eラーニングにおけるコンテンツやコンテンツ作成のための物品及び実習のためのシミュレータの購入であり、人的な面については専従看護師や担当事務職の配置、指導者の手当の準備であった。経費は国の補助金を申請・活用していた。課題は、eラーニングについて受講者のフォローアップの体制づくり、eラーニングと対面授業のバランスであった。困難はeラーニングのコンテンツ作成であった。ICTを活用した研修について12施設の対象が受講しやすいと思う、と回答し、その理由は「自分のペースや工夫で学習時間を確保できる」、「就労を継続できる」等であった。自施設の看護師が研修を受講する上で障壁となることは、「学習時間の確保、学習ペースをつかむまで」、「孤独に一人で学習を進めいかなければならないこと」、「eラーニングによる学習方法に慣れること」、「学習意欲・モチベーションとその維持」、「特定行為研修の認知度が低いこと、同僚看護師や医師の理解・認識」、「受講料等経済的な負担」、「島であり、研修のために一定期間、家を離れなければならないこと(特に子どもが小さい場合)」、「受講看護師研修中の看護師の確保」があった。自施設の看護師が受講しやすくなるための研修体制への意見には「受講仲間とのネットワーク強化」、「受講看護師の所属部署の理解と協力、医師の理解を得ること」、「受講看護師の研修時に代替看護師が確保できる体制」、「研修のために宿泊を要する時の子どもを預けられるようなサポート体制」等があった。
以上の結果を踏まえ、演習・実習による研修実施の留意点も含め、手引きの構成を見直し、「就労継続支援型の看護師の特定行為研修の実施にあたっての手引き 改訂版」及び「特定行為におけるICTを活用した教育例集 改訂版」を作成した。
結論
看護師が就労する地域や施設の規模による受講機会や研修内容の格差を最小限にするための方策として、ICTを活用した就労継続支援型の看護師の特定行為研修の必要性が示唆された。課題は、研修実施側の情報リテラシーやeラーニング教育を実施するための基本的知識の習得、ICTの活用により効果的・効率的・魅力的な研修デザインとすること、eポートフォリオ等の活用による学習管理や学習目標の達成度に関するフィードバックとリフレクション支援、eラーニング・実技試験(OSCE)・実習の評価、研修修了後のフォローアップである。これらの課題への対応策や事例を示した研修実施のための手引き及び教育例集は有用であると考えられ、広く周知していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201520033B
報告書区分
総合
研究課題名
診療の補助における特定行為等に係る研修の体制整備に関する研究
課題番号
H26-医療-指定-029
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 淺田 義和(自治医科大学 情報センター)
  • 阿部 幸恵(東京医科大学病院 シミュレーションセンター)
  • 大湾 明美(沖縄県立看護大学)
  • 亀崎 豊実(自治医科大学 地域医療学センター)
  • 波多野 浩道(藍野大学 医療保健学部)
  • 本多 正幸(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
  • 本田 芳香(自治医科大学 看護学部)
  • 村上 礼子(富山 礼子)(自治医科大学 看護師特定行為研修センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、看護師が就労する地域や施設の規模による受講機会や研修内容の格差を最小限にするための方策を検討することであり、2つの研究課題を設定した。研究課題1はへき地や離島を含む地域で働く看護師の高度臨床実践能力の向上に資する遠隔教育の手法等の検討であり、研究課題2は高度な専門知識及び技能をもって行う必要のある行為について、各医療機関等において実施される研修のあり方(特に指導者研修)の検討であった。
研究方法
1年目に、研究課題1については看護職を対象とした1CT教育・研修の実態と課題を明らかにするために、特定機能病院全83施設、へき地医療拠点病院全258施設及びへき地医療拠点病院以外で単科でない100~400床未満の病院全459施設の計800施設に対し、郵送自記式質問紙調査を実施した。また遠隔教育等に関する文献検討等を行った。研究課題2については効果的な指導を行えるための指導者に対する研修内容・方法を検討するために、医師・看護師研修に詳しい有識者9名による会議を3回開催した。また診療看護師の育成に取り組んでいる医療機関等3カ所にヒアリングを行った。
2年目は、研究課題1について演習・実習部分を含めたさらなる検討を行うために、特定行為研修の指定研修機関かつ研修受講看護師がいる医療機関1か所、指定研修機関ではなく研修受講看護師がいる医療機関5か所、指定研修機関でもなく研修受講看護師もいない医療機関8か所、計14か所の看護管理者等を対象にヒアリングを行った。またeポートフォリオ及び演習・実習の指導体制におけるICT活用についての文献検討及び情報収集を行った。
結果と考察
ICT教育等の実態と課題に関する調査の結果、ICT教育等を実施しているのは特定機能病院では約7割、へき地医療拠点病院及び100~400床未満の病院では約4割であった。未実施群における教育対象者の課題は、特定機能病院では「パソコンが苦手な看護職が多い」が約5割、へき地医療拠点病院及び100~400床未満の病院では「個人的にネット環境が整っていない看護職は利用しにくい・しない」が約5割であった。組織上・実施上の課題は、病院種別に関わらず「運用・管理の経費が大きい」「ICT環境が整っていない」の順に多く、その他、へき地医療拠点病院では「運用・管理できる人材がいない」が約5割あった。文献検討及びヒアリング結果からICT教育の課題として、受講者のモチベーションの維持や受講者へのフィードバック、受講者同士の交流の機会の設定・促進等が明らかとなった。
2年目のヒアリングの結果から、手引き・教育例集(第一次案)の有用性について5施設の対象から「参考になった」等一定の評価を得られた。有用であった内容は、利用可能な既存のeラーニングコンテンツの紹介及び制度・研修の詳細な説明、教育例等であった。手引き・教育例集への要望内容は観察評価及びOSCEの実施・評価方法、eポートフォリオの具体的説明、実習の協力施設になるための要件と準備、指導者の育成・研修に関すること等であった。指定研修機関の申請について12施設は予定なし又は難しいと回答し、その理由は「必要な設備又は人材の確保が困難又は確保できるか不明」「医師の協力を得ることが困難又は医師不足」等であった。協力施設については、13施設中4施設が希望すると回答した。指定研修機関から聴取した、ICTを活用した特定行為研修実施に関わる課題は、eラーニングについて受講者のフォローアップ体制づくり、eラーニングと対面授業のバランスであり、困難はeラーニングのコンテンツ作成であった。ICTを活用した研修について12施設の対象が受講しやすいと思うと回答した。自施設の看護師が研修を受講する上で障壁となることは、「eラーニングによる学習方法に慣れること」「学習意欲・モチベーションとその維持」「特定行為研修についての同僚看護師や医師の理解・認識」「受講料等経済的な負担」「島であり、研修のために一定期間、家を離れなければならないこと」「受講看護師研修中の看護師の確保」があった。
結論
看護師が就労する地域や施設の規模による受講機会や研修内容の格差を最小限にするための方策として、ICTを活用した就労継続支援型の看護師の特定行為研修の必要性が示唆され、その実施のためには【ICTによる研修実施のための研修機関側の環境整備に関する方策】、【ICT教育にかかわる学習環境整備のための受講者への支援方策】、【受講者個々の学習目標到達状況及び進度に合わせたICT教育にかかわる学修支援方策】、【ICT教育の運用・管理にかかわる負担を軽減するための方策】、【ICT教育用のコンテンツ作成のための方策】が必要である。これらの方策を示した本研究班が作成した研修実施のための手引き及び教育例集は有用であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201520033C

成果

専門的・学術的観点からの成果
看護師を対象としたICTを活用した研修の利点及び課題を、地域特性別・施設の規模別また教育実施側・教育を受ける側に分けて明らかにし、インストラクショナルデザインの考え方に基づいて、ICTを活用した研修デザイン及び研修実施体制、研修開始にあたっての準備とオリエンテーション、eラーニング及びICTを活用した演習・集合演習・実習の方法、ICTを活用した学習管理・学習支援、学習到達度評価、研修計画の評価の観点から、それらの課題に対する方策を検討したこと。
臨床的観点からの成果
へき地等の地域特性や施設の規模にかかわらず、看護師が研鑽するための教育方法、また特定行為研修という新たな制度に基づく、これまでに行われていない看護師を対象とした教育の方法を検討したこと。このことは、スペシャリストである看護師及び管理的立場にある看護師以外の多くのジェネラリストである中堅看護師の看護実践能力の向上及び、看護師と医師との協働・連携等チーム医療の推進に寄与する。
ガイドライン等の開発
「就労継続支援型の看護師の特定行為研修の実施にあたっての手引き」及びその平成27年度改訂版、「特定行為研修におけるICTを活用した教育例集」及びその平成27年度改訂版、「看護師の特定行為研修に係る実習等の指導者研修の開催の手引き」を作成した。これらは厚生労働省ホームページの特定行為に係る看護師の研修制度のページにPDFファイルで掲載されている。
その他行政的観点からの成果
本研究結果であるICT教育・研修の実態と課題、及び看護師が就労する地域や施設の規模による受講機会や研修内容の格差を最小限にするために必要となる方策は、厚生労働省が看護師の特定行為研修の普及方策を検討する際の参考にできる。また、手引き及び教育例集は、就労看護師を対象に特定行為研修を行う指定研修機関又は協力施設を目指す施設が研修体制の整備に取り組むために活用でき、また実際に指定研修機関に活用された。指導者研修の開催の手引きは、全日本病院協会主催の看護師特定行為研修指導者講習会で活用されている。
その他のインパクト
日本ルーラルナーシング学会第10回学術集会や日本ホスピタルアライアンス第3回提示社員総会講演等において、研究結果及び手引き、教育例集を紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
江角伸吾、春山早苗、本田芳香、他
看護職を対象としたICTを用いた教育・研修の実態と課題ー就労地域や施設規模による看護師特定行為研修の受講機会や研修内容の格差を最小限にするための方策の検討ー
日本ルーラルナーシング学会誌 , 12 , 27-35  (2017)

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
2019-05-16

収支報告書

文献番号
201520033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,188,000円
(2)補助金確定額
9,188,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 222,511円
人件費・謝金 1,724,289円
旅費 1,692,620円
その他 3,428,580円
間接経費 2,120,000円
合計 9,188,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
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