市町村における在宅医療・介護の連携の促進とその客観的評価に関する研究

文献情報

文献番号
201520032A
報告書区分
総括
研究課題名
市町村における在宅医療・介護の連携の促進とその客観的評価に関する研究
課題番号
H26-医療-指定-025
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
大島 伸一(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥羽 研二(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター )
  • 大島 浩子(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター )
  • 三浦 久幸(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター )
  • 辻 哲夫(東京大学 高齢社会総合研究機構)
  • 飯島 勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,885,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅医療・介護連携の推進に資するために、1.在宅医療・介護連携に関する客観的評価指標の検討、2.在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会の普及事業の実施とその評価を行うこと
研究方法
1-1.在宅医療・介護連携の推移の実態を明らかにするため、在宅医療・介護連携推進を担う事業体102ヶ所を対象に、自記式質問紙調査を継続実施
1-2.在宅医療・介護の連携の客観的評価指標としての訪問診療回数を把握するため、全国在宅療養支援診療所連絡会HPに掲載の788ヶ所を対象に、自記式質問紙調査を実施
2.在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会』に関するツールの普及を図るとともに、12地域20プログラムの研修受講者を対象に、研修受講事前・直後・1年後の研修プログラムに関する質問紙調査を実施
結果と考察
1-1.在宅医療に関する機関数、在宅療養患者数、在宅看取り数等の推移に有意な変化は認められなかった。約8割が市町村・医師会・介護連携型の多職種連携会議や研修、地域住民啓発活動を年間4-5回程度実施したと回答する一方、地域資源活用、24時間在宅医療介護連携体制の構築、各地域の医師への後方支援活動、地域包括支援センターの介護支援専門員支援活動は約1~3割と低く、年間0~1回程度であった。在宅看取り数と24時間対応回数各々に正の相関がみられた。24時間365日在宅医療介護連携体制の対応などの地域ケアシステムの構築は十分ではないことが示唆された。
1-2.318(回収率40%)から回答を得た。設置主体は医療法人が72%、新規開業が78%、開業年数は13(7-21)年、2000-2009年の開業が42%と最も多く、機能強化型診療所が56%であった。訪問診療の内容は、全身状態の評価、病状・今後の方針等の説明、医療処置・医療処置の指導、看護職との連携、緊急時対応の指導、家族・介護者との面談が約90%、家族・介護者への介護指導・助言、療養・養生方法の指導、意思決定支援、薬剤師との連携、介護支援専門員との連携が約80%、行政との連携は約50%であった。訪問診療を受ける在宅療養患者は非がん患者であり、年間看取り数は自宅11名、老人ホーム4名と月1人程度である。訪問診療の医療・ケアの内容から、多職種との連携を図っていることが推測される。介護職との連携は約70%であり、医師と介護職との連携は他の職種より少ない傾向が明らかになった。訪問診療について、患者1人当たり月平均2回であり、「医学的に月2回以上が妥当」と回答した割合は53%であった。訪問診療回数は、在宅医療の質の評価指標になり得ると考える。
2.全国23地域において在宅医療多職種連携研修会の実施が確認された。アンケートの結果、研修直後では、プログラムへの評価は良好、在宅医療に対する意識、研修内容に関する知識は改善し、1年後には、多職種が出席する会議等への参加、受講医師の診療報酬算定回数が増加した。プログラムに関するフォーラムを開催し、30余の都道府県より60名の参加があった。人口規模に合わせた研修展開と市町村支援について検討し、都道府県主催の市町村担当者向け勉強会の開催にもつながった。受講者の反応、知識、行動において改善が認められ、本研修プログラムの有用性を示唆できる結果を得ることが出来た。今後に向けて、地域の他の取組みや事業の影響、地域特性も考慮した、より詳細な検証も必要である。都道府県担当者の議論の場を設けることで、本研修プログラムの地域特性に合わせた多様性のある展開方法を模索できた。これにより市町村への戦略的普及が期待できる。
結論
1-1.高齢者や家族・介護者が24時間365日安心して最期まで生活できるための地域資源の活用や地域ケアシステムは構築途中と考える。
1-2.医学的見地から「訪問診療回数が月2回以上」は概ね妥当であろう。訪問診療を受ける患者像として、(1)月1回:患者の状態安定、訪問看護等との24時間体制で対応可能、(2)月2回以上:患者の状態が急変・不安定、癌末期、家族・介護者の不安などを有する、可能性が示唆された。在宅療養患者とその家族・介護者の状況、診療所や訪問看護との関係性などの多様な要因を知るうえで、客観性を担保した訪問診療回数は在宅医療介護連携推進の客観的評価指標になり得ると考えるが、在宅医療介護連携を客観的に評価し得るものになるかどうかは今後の課題である。
2.多職種連携研修は全国で活用されつつあり、地域の在宅医療と多職種連携の推進に一定の効果を得た。更なる普及と地域特性に合わせた効果的・継続的な展開と効果の検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201520032B
報告書区分
総合
研究課題名
市町村における在宅医療・介護の連携の促進とその客観的評価に関する研究
課題番号
H26-医療-指定-025
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
大島 伸一(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥羽 研二(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター )
  • 大島 浩子(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター )
  • 三浦 久幸(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター )
  • 辻 哲夫(東京大学 高齢社会総合研究機構)
  • 飯島 勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅医療・介護連携推進に資するために、1.『在宅医療・介護連携のための市町村ハンドブック』の有用性の検討、2.『在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会』の普及とその評価、3.在宅医療・介護連携を客観的に評価する指標を検討すること
研究方法
1.地域包括ケアシステムに関わる自治体職員、専門職等を対象に、『ハンドブック』の配布と解説を行い、教育効果として理解度、応用可能性に関する質問紙調査を実施
2.『多職種連携研修会』に関するツールの普及を図るとともに、研修受講者を対象に、事前・直後・1年後の研修プログラムに関する質問紙調査を実施
3-1.在宅医療・介護連携推進に関する客観的指標を用いた質問紙調査を実施
(1)市町村等中心の230の事業所を対象に、在宅医療介護連携推進事業終了1年後の追跡調査(H26年度)
(2)医療機関等中心の105事業所を対象に、在宅医療連携拠点事業終了2年後の追跡調査(H26年度)
(3)在宅医療・介護連携推進を担う事業体102ヶ所を対象に継続調査(平成27年度)
3-2. 在宅医療・介護の連携の客観的評価指標としての訪問診療回数を把握するため、在宅療養支援診療所788ヶ所を対象に、質問紙調査を実施
結果と考察
1.217名を分析対象とした職種別の検討から、平均値は、医師と保健師が高く、行政事務官は全体をわずかに上回る程度で、介護支援専門員は低かった。正答・誤答の割合は、医療職がともに多く、事務系は未記入が多かった。また、連携準備法の理解と資源の把握方法の理解度が低く、医師の医療・介護連携の準備手順の誤答が多かった。
2.全国23地域において『多職種連携研修会』の普及が確認された。アンケートの結果、直後ではプログラムへの評価は良好、在宅医療に対する意識、研修内容に関する知識は改善し、1年後には多職種が出席する会議等への参加、受講医師の診療報酬算定回数が増加した。プログラムに関するフォーラムを開催し、人口規模に合わせた研修展開と市町村支援について検討した。本研修プログラムの有用性を示唆できる結果を得ることが出来た。
3-1.(1)在宅医療介護連携推進のタスクのうち、24時間体制構築への取り組みは3割と他のタスクより低く、前年度より低かった。客観的指標のうち、年間訪問診療患者数、在院日数、短期入所介護利用者数、在宅医療介護連携グループ数に増加が認められたが、年間在宅看取り数は前年度と同程度に推移していた。かかりつけ医の在宅医療への参入に関して新しい知見が得られた。
(2)診療所の在院日数、訪問リハビリテーション数、訪問看護指導算定件数、在宅療養を目的とした病院への年間緊急搬送数、教育・研修システム化数、在宅医療推進リーダー数は増加し、24時間体制、在宅医療に新たに参入するかかりつけ医の数は減少した。
(3)在宅医療に関する機関数、在宅療養患者数、在宅看取り数等の推移に有意な変化はなかった。約8割が市町村・医師会・介護連携型の多職種連携会議や研修、地域住民啓発活動を年間4-5回程度実施したと回答する一方、地域資源活用、24時間在宅医療介護連携体制の構築、各地域の医師への後方支援活動、地域包括支援センターの介護支援専門員支援活動は約1~3割と低く、年間0~1回程度であった。在宅看取り数と24時間対応回数各々に正の相関がみられた。
3-2. 318(回収率40%)から回答を得た。訪問診療の医療・ケアの内容から、多職種との連携を図っていることが推測される。介護職との連携は約70%であり、医師と介護職との連携は他の職種より少ない傾向が明らかになった。訪問診療について、患者1人当たり月平均2回であり、「医学的に月2回以上が妥当」と回答した割合は53%であった。
結論
1.ハンドブックを用い研修会を行うことで、医療職を中心に理解が進むことは明らかとなったが、今後は介護職をより重視したハンドブックの内容の充実が求められた。
2.多職種連携研修は全国で活用されつつあり、地域の在宅医療と多職種連携の推進に一定の効果を得た。更なる普及と地域特性に合わせた効果的・継続的な展開と効果の検証が必要である。
3-1.在宅医療介護連携活動の推移から、主体別に有し得る機能が示唆された(H26年度)。高齢者や家族・介護者が24時間365日安心して最期まで生活できるための地域資源の活用や地域ケアシステムは構築途中と考える。
3-2. 医学的見地から「訪問診療回数が月2回以上」は概ね妥当であろう。在宅療養患者とその家族・介護者の状況、診療所や訪問看護との関係性などの多様な要因を知るうえで、客観性を担保した訪問診療回数は在宅医療介護連携推進の客観的評価指標になり得ると考えるが、在宅医療介護連携を客観的に評価し得るものになるかどうかは今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201520032C

収支報告書

文献番号
201520032Z