文献情報
文献番号
201520023A
報告書区分
総括
研究課題名
内服薬処方せんの記載方法標準化の普及状況に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H27-医療-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 文人(国際医療福祉大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 飯田 修平(公益財団法人東京都医療保健協会 練馬総合病院)
- 後 信(九州大学病院医療安全管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,525,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書」(平成22年1月)が出されてから5年経過したことから、報告書に記載された内服薬処方せんの記載方法の標準化の普及状況について医療機関やシステムベンダーにアンケート調査を行うとともに、報告書記載事項及び報告書当時と現状とで環境に変化が生じたことからこれらについても調査するとともに、標準化の阻害要因を明らかにし、標準化の更なる推進に向けて提言を行うことを目的とする。
研究方法
医療機関、システムベンダーに対するアンケート調査等を行うとともに、検討会報告書記載の長期的方策である1回量による入力方法を採用した医療機関に対する調査、学会等における報告書の認識度調査、標準用法マスタの開発状況調査、検討会報告書以降に変更された診療報酬体系における処方せん記載に関する事項の調査、日本医療機能評価機構に報告された医療事故情報収集等事業や薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業で収集された情報の中で、処方せん記載方法に関する事例の解析、その他最近販売開始された医薬品の添付文書記載方法等に関する調査を行った。
結果と考察
報告書の存在を知っている施設は92%であったが、知らないとの回答を寄せた施設も7%強存在したことは、今回の調査対象が医育機関、臨床研修実施医療機関等であることを考慮すると問題ではないかと思われる。
分量の記載については、現在は移行期に該当することから、1回量と1日量を併記することとなっているが、両者の併記は現行の保険局の通知で求められているものである。両者の併記が現行のルールであることついては医療機関において81%が認識をしており、かつベンダーも9割近くが認識をしているが、1日量のみを記載している施設が80%強あり、ベンダーにおいても遵守しているのは25%に過ぎなかった。この点は改善が必要であり、今後診療報酬上の評価(減点)等も検討すべきと思われる。
検討会報告書以後、我が国では後発医薬品使用促進策が取られ、一般名処方を原則とするように保険のルールが変更された。一般名処方に対しては診療報酬上の評価が行われていることから、一般名処方が拡大傾向にあるが、これに伴い医療機能評価機構に報告される薬局ヒヤリ・ハット事例報告で、一般名の類似によるエラーが増加していることが示された。一方、最近5年間に新たに販売された医薬品の添付文書は国際治験が行われていることが相俟って、約9割が1回量表記と解釈できるものであった。
検討会報告書に記載された短期的方策、長期的方策については、システムベンダーの対応の歩みはのろいものの、着実に前進しつつある。また、標準用法マスタも標準用法用語集(第2版)が作成され、医療情報学会によりマスタ化され学会標準として示されている。同マスタはまもなく厚生労働省標準となるよう手続きがとられることになっている。電子処方せんが本年4月より違法ではなくなったことと併せて考えれば、標準用法マスタが厚生労働省標準に認定された場合には、ベンダーや医療機関に対して対応をとることを強力に推し進めることが重要である。
分量の記載については、現在は移行期に該当することから、1回量と1日量を併記することとなっているが、両者の併記は現行の保険局の通知で求められているものである。両者の併記が現行のルールであることついては医療機関において81%が認識をしており、かつベンダーも9割近くが認識をしているが、1日量のみを記載している施設が80%強あり、ベンダーにおいても遵守しているのは25%に過ぎなかった。この点は改善が必要であり、今後診療報酬上の評価(減点)等も検討すべきと思われる。
検討会報告書以後、我が国では後発医薬品使用促進策が取られ、一般名処方を原則とするように保険のルールが変更された。一般名処方に対しては診療報酬上の評価が行われていることから、一般名処方が拡大傾向にあるが、これに伴い医療機能評価機構に報告される薬局ヒヤリ・ハット事例報告で、一般名の類似によるエラーが増加していることが示された。一方、最近5年間に新たに販売された医薬品の添付文書は国際治験が行われていることが相俟って、約9割が1回量表記と解釈できるものであった。
検討会報告書に記載された短期的方策、長期的方策については、システムベンダーの対応の歩みはのろいものの、着実に前進しつつある。また、標準用法マスタも標準用法用語集(第2版)が作成され、医療情報学会によりマスタ化され学会標準として示されている。同マスタはまもなく厚生労働省標準となるよう手続きがとられることになっている。電子処方せんが本年4月より違法ではなくなったことと併せて考えれば、標準用法マスタが厚生労働省標準に認定された場合には、ベンダーや医療機関に対して対応をとることを強力に推し進めることが重要である。
結論
検討会報告書から5年以上が経過したことにより、検討会やその報告書が出されたことを知らない医療関係者が存在していることから、厚生労働省が率先して、継続的な周知活動を行うことが必要と思われる。
移行期の処方せん記載方法である1回量と1日量の併記は、現行の保険制度で求められているルールである。このルールの存在を医療機関もシステムベンダーも認識しているが、遵守率が14%という状況は極めて遺憾である。この点に関するシステム開発もほぼ済んでおり、標準パッケージ化も進展していることから、診療報酬上で守らない場合の対応を考慮することも一案と思われる。それにより、急激に両者の併記が進展することが想定され、そのような状況において、処方せんの記載方法によるエラーがどのように減少するかの全国規模の調査を行うことが重要である。
また、標準用法マスタがほぼ完成したことから、標準用法マスタの装備を強く求めるべきである。同マスタは、施設間で情報交換を行う場合には必ず標準用法マスタを使用することの義務づけを行うべきであり、このことに対して診療報酬上の評価がなされることが普及進展に重要な要素となると思われる。
本研究において、検討会報告書に示された内容について時間は要しているものの、確実に前進していることが確認された。また、本年4月に電子処方せんが違法ではなくなったことも、今後報告書記載内容を実現するための大きな転機となると思われる。
このように処方せん記載を取り巻く環境が大きく変化しつつあることから、報告書に示された短期的方策について期限を定めて実施を求めることが重要と思われる。
移行期の処方せん記載方法である1回量と1日量の併記は、現行の保険制度で求められているルールである。このルールの存在を医療機関もシステムベンダーも認識しているが、遵守率が14%という状況は極めて遺憾である。この点に関するシステム開発もほぼ済んでおり、標準パッケージ化も進展していることから、診療報酬上で守らない場合の対応を考慮することも一案と思われる。それにより、急激に両者の併記が進展することが想定され、そのような状況において、処方せんの記載方法によるエラーがどのように減少するかの全国規模の調査を行うことが重要である。
また、標準用法マスタがほぼ完成したことから、標準用法マスタの装備を強く求めるべきである。同マスタは、施設間で情報交換を行う場合には必ず標準用法マスタを使用することの義務づけを行うべきであり、このことに対して診療報酬上の評価がなされることが普及進展に重要な要素となると思われる。
本研究において、検討会報告書に示された内容について時間は要しているものの、確実に前進していることが確認された。また、本年4月に電子処方せんが違法ではなくなったことも、今後報告書記載内容を実現するための大きな転機となると思われる。
このように処方せん記載を取り巻く環境が大きく変化しつつあることから、報告書に示された短期的方策について期限を定めて実施を求めることが重要と思われる。
公開日・更新日
公開日
2016-07-12
更新日
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