小児救急・集中治療提供体制構築及びアクセスに関する研究

文献情報

文献番号
201520018A
報告書区分
総括
研究課題名
小児救急・集中治療提供体制構築及びアクセスに関する研究
課題番号
H27-医療-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
市川 光太郎(北九州市立八幡病院 小児救急センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松裏 裕行(東邦大学医療センター 大森病院)
  • 吉澤 穣治(慈恵会医科大学)
  • 船曳 哲典(藤沢市民病院 こども診療センター)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部 救急医学講座)
  • 清水 直樹(東京都立小児総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,375,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(目的)小児救急医療の病院前救護(家庭看護)~集中治療までの、あるいは内因性救急疾患のみならず外因性救急疾患までの総合小児救急医療体制の構築とアクセスにおける地域間格差の解消
(必要性)
 マンパワーが限られた小児救急医療提供において、地域間格差は顕著であり、かつ、小児救急医療における受療行動は保護者の心配・不安に基づいていることから、総合的な対応は不可欠であり、地域差を解消することが必要である.
研究方法
1) 救命集中治療施設のブロック地区調査を行い、地域差の把握を行い、不足地区における代替策等を提案するとともに品質評価のための症例登録制度の検討等これまでの研究の不足分を今後2年間で行う。
2) 既存の救命救急センターにおける重篤小児治療の実態調査を行い、救急医と小児科医が協働できる重篤小児診療指針並びに小児集中治療室への高度な搬送方法(ECMO搬送含)の検討等諸課題を抽出して1)の補填へつなげる
3) 初期二次救急医療体制における実態と課題問題点を抽出し,少ないマンパワーにおける効率的かつ地域差の少ない提供体制へ構築への提言を行う
4) #8000電子マニュアルの作成を行い、使いやすさ、アプローチアップを図り、より広く普及させ、急な傷病時の対応への安心感の向上に努める。
5) 子ども救急オンラインを動画化して、広く公共の場で閲覧可能として、小児救急医療への不安軽減を行うとともに家庭看護力の醸成・継承につなげ、安心した子育て環境を構築する
結果と考察
家庭看護(こども救急オンラインサイト/#8000)・初期二次救急・救命救急・集中治療の分野の5つの分担研究を行った。子どもの救急オンラインサイトの紹介動画制作を行い、広報カードのダウンロード機能を作成した。#8000の周知度向上のために人気キャラクターの活用、マニュアルソフトウエアの普及啓発を行った。対応者の質の向上目的に「相談対応者の広場」HPを開設した。初期・二次救急医療では全国924施設への過去10年間の外来・入院患者数の推移調査を行った。子ども人口は10年間で8.4%減少し、全体で外来患者数は23.6%、入院患者数は15.9%減少していた。特に過疎地では外来・入院ともに40%減少し、一般病院では外来・入院が10%・20%減少していた。既存の救命センターでの小児診療調査では2007年日本救急医学会調査に比して、超急性期対応が増えていた。都市部救命センターほど重篤・外傷診療が多く、地方救命センターほど転院が多い結果であった。
小児救命センター調査では「初療」または「集中治療」に長けている施設に分かれていた。規定評価はこの2群に分けて行うべきであり、この2群間施設の連携強化や施設間研修を行い、全国症例登録制度の構築で質の品質強化を行うべきと考えられた。以上が今年度の研究結果であるが、実際に、家庭看護力の醸成(オンラインや#8000)を医療側が指導するとともに、さらなる少子化時代に向けて、
医療資源の有効利用を主眼に置いた社会制度的側面と医療従事者側側面の連携強化が必要である。
結論
より良い子ども達の養育環境・地域の構築には急な傷病に対する備えを含め、その際のアクセスの均一化、実際の傷病の診断治療から重篤小児症例への正確な対応体制の構築が不可欠である。可能なら、その体制が全国一律に近い状態にあることが望まれる。これらの体制構築を行うため研究事業を行った。
 こどもQQオンラインサイト・#8000は家庭看護力の醸成に直結した事業であり、この周知利用により、急な傷病不安の軽減が図られるとともに救急受診アクセスの均一化につながると予想される。実際の救急診療の現場である初期二次救急医療施設は少子化の影響も受け、都市部・地方での格差が強くなり、地方での入院治療継続の危惧さえ生じていることから、集約化・重点化のみならず地域包括医療の観点からもいわゆる分散化を図る必要がある。救命救急センターでの重篤小児の超急性期医療は進みつつあるが、地域格差を認めるため、特に後送施設との連携強化が地方ほど拡充する必要がある。小児救命救急センターにおいても施設機能の特性が目立つため、その特性に応じた地域基幹施設との連携強化が今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201520018Z