病床機能の分化・連携や病床の効率的利用等のために必要となる実施可能な施策に関する研究

文献情報

文献番号
201520016A
報告書区分
総括
研究課題名
病床機能の分化・連携や病床の効率的利用等のために必要となる実施可能な施策に関する研究
課題番号
H27-医療-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 晋哉(産業医科大学公衆衛生学教室)
  • 藤森 研司(東北大学 大学院 医学系研究科 公共健康医学講座)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 石川 ベンジャミン光一(国立がん研究センター 社会と健康研究センター 臨床経済研究室)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学)
  • 瀬戸 僚馬(東京医療保健大学 医療保健学部医療情報学科)
  • 小林 美亜(千葉大学医学部附属病院 病院長企画室地域医療連携部)
  • 副島 秀久(恩賜財団社会福祉法人済生会 済生会熊本病院)
  • 町田 二郎(恩賜財団社会福祉法人済生会 済生会熊本病院)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 健康政策医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年度より都道府県は地域医療構想を策定し病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等に取り組まなければならない。諸外国における知見や国内の先進的事例等を整理しつつ、病床の機能分化・連携の推進等を推進するそれぞれの施策について効果の定量化、プロセスの分析・整理等を行い、都道府県や医療機関等における病床機能の分化・連携や病床の効率的利用等の推進に資することを目的とする。
研究方法
本研究班は5つの分担班で研究を進め、全体会議2回と各分担班コアメンバー会議を3回開催し進捗状況の管理、調整を行いながら進めた。
1.定量分析班 平均在院日数短縮や異なる病床区分への円滑な移動、重症度別の病棟管理等のあり方についてNDB/DPCデータ等を用いて定量分析を行った。
2.事例統括班 病院団体を通じて調査を依頼し、病床機能分化や地域医療・介護連携についての優れた事例を収集し整理した。
3.地域事例班 熊本県の脳梗塞連携パスや大腿骨近位部骨折連携パスの解析を通じて、急性期―回復期病床の連携についてプロセスの分析と課題の整理を行った。
4.実地検証班 奈良県の病床機能報告データを用いて、病床機能区分より各病院の施設機能や施設基準、設備から急性期の医療機関の評価を行った。
5.議論支援班 海外の先行事例の調査を行い分担班の議論調整と支援を行った。
結果と考察
1.定量分析班 DPCデータと病床機能報告を活用し疾患別の診療行為の分析を行った。病院機能の性質が病棟の性質に大きな影響を与えており、同じ医療機能を選択しても実施している医療内容に大きなばらつきがあることがわかった。病院機能の指標と病棟機能の指標の組み合わせでの基準を用いてさらなる検討を進めていく必要があることが確認された。
2.事例統括班 7病院団体の会員医療機関より優良事例を収集し整理を行った。病院と病院、病院と診療所との連携事例について全国より優良事例を収集することができた。本事例集は、保健医療計画の立案および推進、今後の病床機能区分の選択や検討についての参考となるため全国に向けて情報発信を行うことが重要である。
3.地域事例班 1)地域連携を基本とした疾患における熊本県の急性期、亜急性期医療需要予測:患者調査や将来人口推計を元に熊本県の主要疾患1日発生数、疾患別の増減を推計し、その結果を元に急性期の追加必要病床数について推計した。本来あるべき医療プロセスと、それに基づいたより妥当な医療需要予測は十分に実施されておらず、クリニカルパス等、医療プロセスとアウトカム指標を明確にしたツールを用いて医療資源介入の成果を検証することが望まれる。
2)脳卒中地域連携クリニカルパス分析から見る急性期、亜急性期医療プロセスの課題:熊本県の脳卒中連携パス適用患者のデータを元に急性期および亜急性期医療のプロセスの課題について分析を行った。地域連携を通じて完結する疾患については、地域一貫した方針と責任体制に基づいたケアプロセスの構築、患者アウトカムを投入すべき医療資源の指標の一つとした医療プロセスを構築することが重要である。
3)病床の機能分化と連携の推進に向けた取り組み:千葉保健医療圏における医療機能や連携の推進に係る取り組みについて検討を行った。
4.実地検証班 1)地域医療構想の実現に資する各種ツールの実地検証:地域医療構想のツールに加えて独自の分析ツールを用い、病院プロット地図作成、医療機関における診療内容(患者重複度)、地域間流出入、県境を越えた疾患別のアクセス状況、傷病別の必要病床数推計といった5つの実地検証を行った。地域間の流出入を相殺し、都道府県をまたいだ医療資源の分布を見える化することで傷病治療の拠点を明確にできる。
2)地域医療構想の推進に資する急性期指標の開発:平成26年度奈良県病床機能報告データを用い急性期指標の作成を行った結果、急性期医療を重点的に実施している病院が大きなスコアを獲得することができていた。地域医療構想は都道府県単位で施策を検討するため、急性期指標は都道府県単位で算出することが望ましい。本指標は「急性期医療を主体とする病院であれば満たすであろう」項目を多数選定して作成されており多重共線性の問題については今後の重要な検討課題である。
5.議論支援班 海外の先行事例の調査を行い分担班の議論調整および支援を行った。
結論
本研究の成果はわが国の病床機能の分化・連携や病床の効率的な利用に資するものと考えられ、各都道府県が地域医療構想を策定・更新する際の重要な指針となることが期待される。また各都道府県が活用している医療介護総合確保基金の有効な使途への反映、さらには国の第七次保健医療計画(平成30年~)へと知見が反映されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2016-11-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-11-08
更新日
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収支報告書

文献番号
201520016Z