地域医療構想・地域医療計画を効果的に実装するためのデータ解析・活用方法の開発

文献情報

文献番号
201520015A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療構想・地域医療計画を効果的に実装するためのデータ解析・活用方法の開発
課題番号
H27-医療-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大坪 徹也(京都大学 医学研究科 )
  • 廣瀬 昌博(島根大学 医学部)
  • 徳永 淳也(九州看護福祉大学 看護福祉学部)
  • 本橋 隆子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
財政難の中、超高齢社会が進展し、保健医療介護制度の改革は喫緊の課題である。地域医療構想・地域医療計画の効果的な具現化・実装に貢献するために、疾病別の機能分化・拠点化と連携強化等を含む具体的な設計方法をデータ解析に基づき研究開発する。即ち、有限資源下に、パフォーマンスの高い(質、効率、アクセス等が良い)医療システムを再構築するための、データ解析・活用方法を開発する。
 また、比較参照により医療計画の内容の向上を促進することを目指し、全国の医療計画の内容を系統立ててデータベースを構築する。
研究方法
 次のデータベースを使用した解析アウトプットを地域医療構想に役立たせる方法ならびに役立つための解析の方法を、実例をもって検討し、データを地域医療構想とその実現に活かすための重要点を整理する。
①レセプト・ナショナルデータベース(NDBデータ)からの抽出データ
②府県下全市町村の国保・後期高齢者医療制度のレセプト数年間の広域悉皆データベース
③約400(詳細情報とリンク)及び約1000病院の経年的なDPCデータのデータベース
④医療機能情報提供制度含む行政統計等を組み合わせる
 一方で、医療計画の内容を系統立てて整理する枠組みを設定し、全国都道府県の医療計画のデータベース化を脳卒中領域で行う。
結果と考察
(地域医療構想・地域医療計画の実装のためのデータ活用方法)
 地域医療構想・地域医療計画の実装や制度作りに資するエビデンスを創出するデータ研究を進めつつ、エビデンスやデータをいかに制度作りに活用していくかの重要領域について、実際の諸研究の成果を基盤に系統立ててまとめ上げるべく検討を進めた。下記の領域が重要領域として同定され、それぞれについて、エビデンスやデータの制度作りへの活用方法について検討した。
(1)投資シフトと価値創造
(2)「医療の質」の可視化とマネジメント
(3)「医療の費用・原価」の可視化とマネジメント
(4)「医療の公正性」の可視化とマネジメント
(5)拠点化・分散化と連携強化
(6)地域全体経営:データベース共有と人材・組織育成
(7)社会的協働(Social Joint Venture)

(地域医療計画データベースの構築と活用方法)
 一方で、本研究では、医療計画内の脳卒中についての記述に関するデータベースを構築し、医療計画作成時の軸となる5点(①脳卒中の現状・脳卒中の医療に関する記述、②脳卒中治療に関して医療機関に求められる機能に関する記述、③現状把握に関する指標、④数値目標、⑤施策)について比較を行った。
 医療計画の記述内容は多様であり、各都道府県の実情により適した記述へ改善するために、記述内容について容易に比較可能なデータベースを構築したことは、今後の比較参照やベストプラクティスの同定・導入を促進する可能性がある。現行の第六次医療計画ではPDCAサイクルの実現が求められているが、現時点で現状把握する指標による結果と数値目標、施策に関連性がみられない場合が多く、また誰がどのように行動して目標を達成していくのか不明な場合がほとんどである。
 よって各地域の実情にあわせた医療計画を作成するために、全国共通部分の枠組みをある程度提供した上で、地域が選択した指標等による現状分析ならびに政策の提案・実行がなされていくべきであり、そのなかで各政策の行動主体を明示する工夫、そして実現へのプロセスをより明示していく工夫が、鍵となるであろう。
結論
(地域医療構想・地域医療計画の実装のためのデータ活用方法)
 財政プレッシャーが高まり医療介護資源も有限な状況下、医療者・介護者、行政、市民、企業などあらゆるステークホルダーが協働して医療システムの大胆な再構築を進めることが、益々重要となってきている。そのためには、データを最大限に活用して医療介護システムを可視化し、その情報をステークホルダー間で共有し、全体最適を目指してより大きな価値を生むべく原資の投資先をシフトし、全てのステークホルダーが主体的に協働していくプラットフォームを築いていく必要がある。
(地域医療計画データベースの構築と活用方法)
 また、全都道府県の医療計画の内容を、比較・参照可能な形でデータベースとして整備したが、同じ項目での他地域との比較や、ベストプラクティスと思われる事例の参照が、一挙に容易となった。より充実した医療計画を策定するに役立つことが期待される。一方で、多くの医療計画に見られる課題として、現状では、PDCAサイクルの実現可能性の向上のために、行動主体や実現プロセスが明示されておらず、それらを明示することが望ましいと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-01-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201520015Z