医療における放射線防護と関連法令整備に関する研究

文献情報

文献番号
201520014A
報告書区分
総括
研究課題名
医療における放射線防護と関連法令整備に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-019
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
細野 眞(近畿大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 一郎(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 高橋 健夫(埼玉医科大学 医学部)
  • 赤羽 正章(NTT東日本関東病院 放射線部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、放射線診療の手法が急速に進歩しつつある現在において、国民の生命と健康向上につなげるため、放射線防護を医療関連の法令や指針のうえでどのように確立するかについて、公衆と医療従事者の防護を中心として取り組んだ。
研究方法
放射線診療において新しい診断・治療の手法が次々に実用化され治療成績が向上している一方で、手法の高度化・複雑化に対応した放射線防護に係る法令や指針の整備は喫緊の課題である。従来からあった手法も、より進んだ応用がなされるようになっており、それに即した法令や指針の整備が求められる場合がある。一方、医療放射線防護の国際的な流れとしてはICRPの諸勧告、IAEAの新しい国際基本安全基準(BSS)などが、重要な提言を行っており、このような国際的な放射線防護の標準化の動向に対応した国内施策へ資する取り組みが求められている。このため本研究では、医療放射線各分野の専門家が緊密に連携して放射線防護に関する共同研究を実施し、国内外の既存の資料を調査分析し、また必要な調査・測定等を実施した。
結果と考察
取り組んだ課題は以下の通りである。1-1 医療放射線防護の国際動向、1-2 放射性医薬品(放射性塩化ラジウム(223RaCl2)注射液)を投与された患者の退出基準について、1-3 ルテチウム-177標識ソマトスタチンアナログ(Lu-177-DOTA-TATE)注射液の適正使用に関する検討、1-4 ヨウ素-131による治療患者に適用した人工透析の安全取扱いに関する検討、2 医療放射線の管理の実態把握と法令整備の課題に関する研究、3 放射線治療領域における放射線防護に関する研究、4-1 放射線診断領域における放射線防護に関する研究、4-2 水晶体線量の評価手法に関する研究。 新しい治療手法への対応については、高精度放射線治療、粒子線治療、画像誘導放射線治療、α線放出核種223Raによる多発骨転移の核医学治療、ルテチウム-177-DOTA-TATE(ルテチウム-177はβ線放出核種)による神経内分泌腫瘍の核医学治療など、先端的な治療手法が現実のものとなり普及しつつあることから、早急な検討が求められている。この潮流を受けて、昨年度と本年度に、高精度放射線治療における放射線診療室でのエックス線装置と放射線治療装置の同室内同時曝射について検討を加えたことは意義が大きいと考えられる。これは近年の放射線治療の急速な高度化によって、放射線診療室内での診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置又は診療用放射線照射装置に対してエックス線装置を用いた位置照合や、照射中の病変の呼吸性移動等を追尾するシステムの併用が必要となり、それに伴って複数装置の関与による同室内同時曝射の必要性が高まっているからである。またα線放出核種223Raについては既に去勢抵抗性前立腺癌骨転移例について国内臨床試験が実施され、平成27年度末に医薬品承認がなされたが、本年度に退出基準について検討を行ったものであり、今後は223Raの退出基準及びそれと一体となっている指針が、223Raを用いる診療において重要な基準を示すことになる。またルテチウム-177-DOTA-TATEについて検討した内容はごく近い将来の国内導入を推進する一助となるはずである。
本研究で新しい治療手法の法令・指針における対応を検討した中で、法令・指針の整備だけではなく、関連学会等が連携して具体的なマニュアルを作成し、教育・訓練を実施することによって、医療放射線の安全確保を図ったうえで新しい治療手法を進めていくというプロセスの必要性・重要性があらためて明らかとなった。
また、放射線防護の国際動向に関しては、水晶体の等価線量限度引き下げの動向を受けて、本研究の放射線診断領域における放射線防護に関する課題において、水晶体等価線量を評価する手法を確立することを検討した。IVRにおける術者の水晶体等価線量は手技のありかた、防護メガネの装着のしかたによって、かなりの幅を生じることが明らかになり、その管理の確立にあたって、きめ細かな個別的な評価法が必要になることが示唆された。
結論
本研究によって得られた成果は、わが国の医療実態に即した放射線防護を推進するために参考となる資料であり、医療放射線の発展と放射線防護の整備に寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2017-01-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201520014B
報告書区分
総合
研究課題名
医療における放射線防護と関連法令整備に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-019
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
細野 眞(近畿大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 一郎(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 高橋 健夫(埼玉医科大学 医学部)
  • 赤羽 正章(NTT東日本関東病院 放射線部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、医療において放射線を用いる診断・治療が急速に発展し続けている現在において、放射線防護を医療関連の法令や指針のうえでどのように確保して国民医療の向上につなげるかについて、公衆と医療従事者の防護を中心として取り組んだ。
研究方法
現代の放射線診療において新しい診断・治療の手法が次々に実用化に至り国民に提供されて、治療成績の向上に役立っているが、手法の高度化・複雑化に対応した放射線防護に係る法令や指針の整備は喫緊の課題である。また国際動向に目を向けると、医療放射線防護に関して、ICRPの諸勧告やIAEAの新しい国際基本安全基準(BSS)などが重要な提言を行っており、このような国際的な動向に対応した国内施策の立案に資する取り組みが求められている。このため本研究では、専門家が緊密に連携して放射線防護に関する共同研究を実施し、国内外の資料を調査分析し、また必要な調査・測定等を実施し、得られた結果を解析・考察した。
結果と考察
取り組んだ課題は以下の通りである。平成26年度は、 1-1 がんの骨転移及び原発性骨腫瘍等の治療に用いられる放射性ラジウム-223の有効性及び投与された患者の管理区域からの退出などの放射線防護対策について 塩化ラジウム(Ra-223)注射液を用いた内用療法の治験適正使用マニュアル(第2版)(案)、1-2 ルテチウム-177-DOTA-TATE注射液の適正使用に関する検討 ルテチウム-177標識ソマトスタチンアナログ(Lu-177-DOTA-TATE)注射液を用いる内用療法の適正使用マニュアル(案)、1-3 前立腺癌患者に対してヨウ素125密封小線源永久挿入療法の適用後に帰宅した場合の治療患者以外の第三者に対する放射線安全確保に関する検討、1-4 IAEA General Safety Requirements Part3の刊行に伴う医療用放射線の防護に関する対応としての放射性核種の吸入摂取及び経口摂取における実効線量係数の比較検討、1-5 核医学施設における安全キャビネットと排気設備(排気系統)との連結に関する検討、1-6 ヨウ素-131による治療患者に適用した人工透析の安全取扱いに関する検討、2 医療放射線の管理の実態把握と法令整備の課題に関する研究、3 放射線治療領域における放射線防護に関する研究、4 放射線診断領域における放射線防護に関する研究。平成27年度は、1-1 医療放射線防護の国際動向、2 放射性医薬品(放射性塩化ラジウム(223RaCl2)注射液)を投与された患者の退出基準について、1-3 ルテチウム-177標識ソマトスタチンアナログ(Lu-177-DOTA-TATE)注射液の適正使用に関する検討、1-4 ヨウ素-131による治療患者に適用した人工透析の安全取扱いに関する検討、2 医療放射線の管理の実態把握と法令整備の課題に関する研究、3 放射線治療領域における放射線防護に関する研究、4-1 放射線診断領域における放射線防護に関する研究、4-2 水晶体線量の評価手法に関する研究。 本研究は、医療における放射線を用いた新しい診断・治療の手法への対応、国際的な標準化の動向への対応などについて、公衆と医療従事者の放射線防護を法令や指針のうえでどのように確保するかに重点を置いて検討を行った。本研究者らは、本研究に先立つ研究でも医療放射線の安全確保や有効利用、医療放射線関連の法令や指針の整備に関して検討を実施していたが、本研究では従来の取り組みを発展させて、高精度放射線治療における放射線治療室でのエックス線装置と放射線治療装置の同室内同時曝射、α線放出核種ラジウム-223による多発骨転移の内用療法、ルテチウム-177-DOTA-TATE(ルテチウム-177はβ線放出核種)による神経内分泌腫瘍の内用療法、など高度な治療手法における医療放射線防護の法令上の措置や指針を示すことができた。
このように法令や指針を検討してきた中で、新しい放射線診療の手法を実施するにあたっては、法令・指針の整備だけではなく、関連学会等が連携して具体的なマニュアルを作成し、教育・訓練を実施し、それに沿って実施することの必要性・重要性が改めて明らかとなった。
結論
本研究によって得られた成果は、わが国の医療実態の中で高度な放射線診療に対応した放射線防護を推進するために参考となる資料であり、その一部は既に国内の関連法令に取り入れられており、今後も放射線診療の発展と放射線防護の整備に寄与することが期待できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-01-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201520014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究によって得られた成果は、わが国の医療実態の中で高度な放射線診療に対応した放射線防護を推進するために参考となる資料であり、その一部は既に国内の関連法令に取り入れられており、今後も放射線診療の発展と放射線防護の整備に寄与することが期待できると考えられる。
臨床的観点からの成果
医療イノベーション推進に沿った高度な放射線治療や放射性薬剤によるイメージング・治療を臨床応用することを見通した法令や指針の整備を行った。特に放射線治療における画像ガイドや呼吸同期等の併用、新しい治療用放射性薬剤による治療(RI内用療法)に寄与することができた。国際動向への対応として水晶体等価線量の管理について検討を加えた。これらの検討は臨床において新しい放射線手法の利用を推進するに資するものとなった。
ガイドライン等の開発
本研究に先立つ研究「医療放射線の安全確保に関する研究」(H19-医療-一般-003)が、関連学会・団体による「最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定」(平成27年6月7日関連団体共同)につながった。
その他行政的観点からの成果
「エックス線診療室の漏えい線量の算定評価法の技術進歩に伴う対応」医療法施行規則の一部の改正(平成26年3月31日医政発0331第16号)、放射線治療室でのエックス線装置の同時曝射(平成27年9月30日医政発0930第6号)、排水濃度算定方法の追加(平成28年3月31日医政発0331第11号)、放射性医薬品を投与された患者の退出について(平成10年6月30日付医薬安発第70号)別添「放射性医薬品を投与された患者の退出に関する指針」(平成28年5月11日医政地発0511第1号)。
その他のインパクト
本研究に先立つ研究「医療放射線の安全確保に関する研究」(H19-医療-一般-003)が、関連学会・団体による診断参考レベルの設定に結実し、読売新聞(2015年4月、6月、7月)、朝日新聞(2015年4月)に報道された。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
28件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
5件
その他成果(普及・啓発活動)
8件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
細野 眞
医療被ばく管理と放射線防護の現状と将来展望
INNERVISION , 31 (12) , 2-4  (2016)
原著論文2
細野 眞
核医学検査の診断参考レベル(DRL)に対する活動と課題
INNERVISION , 31 (12) , 12-14  (2016)
原著論文3
Watanabe H, Noto K, Shohji T, et al.
A new shielding calculation method for X-ray computed tomography regarding scattered radiation
Radiological Physics and Technology , 10 (2) , 213-226  (2017)
10.1007/s12194-016-0387-9
原著論文4
Hosono M, Ikebuchi H, Nakamura Y, et al.
Manual on the proper use of lutetium-177-labeled somatostatin analogue (Lu-177-DOTA-TATE) injectable in radionuclide therapy (2nd ed.)
Ann Nucl Med , 32 (3) , 217-235  (2018)
10.1007/s12149-018-1230-7
原著論文5
Hayashi S, Takenaka M, Hosono M et al.
Radiation exposure during image-guided endoscopic procedures: The next quality indicator for endoscopic retrograde cholangiopancreatography
World J Clin Cases , 6 (16) , 1087-2093  (2018)
原著論文6
Hosono M
Perspectives for Concepts of Individualized Radionuclide Therapy, Molecular Radiotherapy, and Theranostic Approaches
Nuclear Medicine and Molecular Imaging , in press  (2019)
原著論文7
Hosono M, Ikebuchi H, Nakamura Y et al.
Introduction of the targeted alpha therapy (with Radium-223) into clinical practice in Japan: learnings and implementation
Annals of Nuclear Medicine , 33 , 211-221  (2019)

公開日・更新日

公開日
2016-11-17
更新日
2020-05-26

収支報告書

文献番号
201520014Z