National Clinical Database(NCD)を用いた医療の質向上に関する研究

文献情報

文献番号
201520012A
報告書区分
総括
研究課題名
National Clinical Database(NCD)を用いた医療の質向上に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-017
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岩中 督(東京大学医学部附属病院 小児外科)
研究分担者(所属機関)
  • 國土 典宏(東京大学医学部附属病院・肝胆膵外科学)
  • 兼松 隆之(長崎市立病院機構・外科)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院 腫瘍外科学)
  • 高本 眞一(三井記念病院 心臓血管外科)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院医学系研究科 保健社会行動学)
  • 木内 貴弘(東京大学医学部附属病院 医療情報学)
  • 宮田 裕章(東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学)
  • 後藤 満一(福島県立医科大学医学部 臓器再生外科学)
  • 本村 昇(東邦大学医療センター佐倉病院 心臓血管外科)
  • 齊藤 延人 (東京大学医学部附属病院 脳神経外科学)
  • 原田 繁(筑波学園病院 整形外科)
  • 大山 力(弘前大学医学部附属病院 泌尿器科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,793,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者の視点に基づいた良質な専門医制度を根拠に基づいて確立するため,多くの臨床学会が連携してNational Clinical Database(NCD)が 2010年4月に設立された.本研究はNCDとの連携の下で,より良い医療を長期的に提供することができる体制を構築するため,臨床現場との連携により体系的なデータ収集と実証的な分析を行なうものである.NCDでは,2016年2月時点で4,500以上の施設が参加し,650万症例以上の症例情報が集積している.
研究方法
2015年度の分析として,2014年1月1日~12月31日に手術を受けた症例について,外科専門医制度に基づき,外科専門医制度上で認められる術式に関する全体の①手術症例数,②外科専門医制度上の7つ各領域(消化器・腹部内臓,乳腺,呼吸器,心臓・大血管,末梢血管,頭頸部・体表・内分泌外科,小児)の手術症例数,③各領域の主な術式の手術件数を分析した.また治療提供体制の現状についても把握し,この後のより良い治療法にむけた課題も同定するため,消化器外科領域における8つの医療水準評価対象術式に対して,全国の治療成績と対比した形でフィードバックするシステムを検討する.また,病理領域については,病理学会にて実施されてきた剖検情報を踏襲し,これまでに蓄積されたデータについてもNCDへ移行する形でシステム開発を検討する.
結果と考察
3,505施設,5,090施設診療科において,外科専門医制度上認められる術式に該当するNCD術式が1つでも選択されていた手術症例数は1,520,467件であった.2014年は2013年と比較して参加施設数・手術件数がともに増加し,より登録率の高いデータベース事業となったことが示された.フィードバック機能は,インフォームドコンセントを取得する際や,医局でのカンファレンスにて活用することが可能である.また,施設診療科の患者背景とパフォーマンスの全国比較では,各施設診療科で登録された患者の術前リスクに関する項目の集計結果を確認することができる他,各項目についてNCDに登録されている全国の施設データと比較することが可能である.また,これらの術前情報に基づき,全登録症例データから推定される予測死亡率や予測合併症発生率を自施設診療科で実際に起こった死亡割合や合併症発症割合と比較することで,自施設診療科のパフォーマンスをベンチマーキング手法で比較することが可能である.消化器外科領域においては,各リスクモデルに関する論文を術式別に国際学術誌に投稿し,peer reviewを受け,採択された術式から臨床現場へのフィードバックを開始している.脳神経外科においては,2016年2月時点で約13万件の症例登録がされており,今後更に症例数が増加することが見込まれる.現在,施設毎に術式単位で症例集計するシステム(定期報告システム)および,PMSと連動したフローダイバーターレジストリ(脳血管ステント)についてのシステム構築が進められている.病理については,2016年2月時点で,90%以上は項目が確定し2015年度内に仕様が最終確定する予定である.NCD移行後の成果物として,「剖検登録データベース」「施設情報登録データベース」「印刷物『剖検輯報』用データダウンロード機能」を予定している.NCDへの移行により,これまで問題点とされていた,ソフトウエア開発やバージョン管理,印刷物に関する編集への不安を解決できるものと期待される.また,報告施設毎の提出に係るばらつき(提出媒体が電子と紙の混在,提出の遅れ,データの品質管理)についても統一される.
結論
本研究により,NCDにおける2014年手術症例について,外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布,手術症例数,7つの領域別の手術症例数および各領域の主な手術に対する手術件数が明らかとなった.脳神経外科領域においては,2015年1月より全国の施設が入力を開始しとなり,2016年2月時点で約13万件の症例登録がされている.病理については2016年秋頃の症例登録を予定しており,2015年度内に入力に関する仕様が確定される.さらに,現在NCDが行っているNCD Feedback機能は,蓄積データから医療の質の向上につながる手法として,NCDに参画している他領域においても,未参画の領域においても,適切に使用すれば活用効果の高いことが期待される.しかしながら,現在これらのFeedback機能が臨床現場にとって,活用されている頻度や活用方法が明らかとなっていない.今後は現在未開発の他領域への展開を図るとともに,Feedback機能の活用を促し,適切に医療の質向上へ繋げる取り組みが重要である.

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-12-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201520012B
報告書区分
総合
研究課題名
National Clinical Database(NCD)を用いた医療の質向上に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-017
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岩中 督(東京大学医学部附属病院 小児外科)
研究分担者(所属機関)
  • 國土 典宏(東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科学)
  • 兼松 隆之(長崎市立病院機構 外科)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院 腫瘍外科学)
  • 高本 眞一(三井記念病院 心臓血管外科)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院医学系研究科 保健社会行動学)
  • 木内 貴弘(東京大学医学部附属病院 医療情報学)
  • 宮田 裕章(東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学)
  • 後藤 満一(福島県立医科大学医学部 臓器再生外科学)
  • 本村 昇(東邦大学医療センター佐倉病院 心臓血管外科)
  • 齊藤 延人 (東京大学医学部附属病院 脳神経外科学)
  • 原田 繁(筑波学園病院 整形外科)
  • 大山 力(弘前大学医学部附属病院 泌尿器科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者の視点に基づいた良質な専門医制度を根拠に基づいて確立するため,多くの臨床学会が連携してNational Clinical Database(NCD)が 2010年4月に設立された.本研究はNCDとの連携の下で,より良い医療を長期的に提供することができる体制を構築するため,臨床現場との連携により体系的なデータ収集と実証的な分析を行なうものである.NCDでは,2016年2月時点で4,500以上の施設が参加し,650万症例以上の症例情報が集積している.
研究方法
2014・15年度の分析として,2013年1月~2014年12月に手術を受けた症例について,外科専門医制度に基づき,外科専門医制度上で認められる術式に関する全体の①手術症例数,②外科専門医制度上の7つ各領域(消化器・腹部内臓,乳腺,呼吸器,心臓・大血管,末梢血管,頭頸部・体表・内分泌外科,小児)の手術症例数,③各領域の主な術式の手術件数を分析した.消化器外科領域では,全国の治療成績と対比した形でフィードバックするシステムを検討する.新規参画となる脳神経外科において医療の質の評価枠組みの構築を検討し,病理領域については,従来の蓄積データについてもNCDへ移行する形でシステム開発を検討する.更に,NCD参加施設に対してアンケート調査を実施した.
結果と考察
外科専門医制度上認められる術式に該当するNCD術式が1つでも選択されていた手術症例数は2013年1,301,372件,2014年1,520,467件であった.年々,参加施設数・手術件数が増加し,より登録率の高いデータベース事業であることが示された.フィードバック機能における施設診療科の患者背景とパフォーマンスの全国比較では,各施設診療科で登録された患者の術前リスクに関する項目の集計結果を確認することができる他,各項目についてNCDに登録されている全国の施設データと比較することが可能であり,これらの術前情報に基づき,全登録症例データから推定される予測死亡率や予測合併症発生率を自施設診療科で実際に起こった死亡割合や合併症発症割合と比較することで,自施設診療科のパフォーマンスをベンチマーキング手法で比較することが可能である.新規参画となる脳神経外科では,入力システムの構築,関係者周知,入力に向けた準備,総合的なシステムバリデーションを完了した後2015年より全国の施設において入力が開始となり,2016年2月時点で約13万件の症例登録がされている.現在,施設毎に術式単位で症例集計するシステムおよび,PMSと連動したフローダイバーターレジストリについてのシステム構築が進められている.病理については,2016年2月時点で,90%以上は項目が確定し2015年度内に仕様が最終確定予定である.NCD移行後の成果物として,「剖検登録データベース」「施設情報登録データベース」「印刷物『剖検輯報』用データダウンロード機能」を予定している.NCDへの移行により,これまで問題点とされていた,ソフトウエア開発やバージョン管理,印刷物に関する編集への不安を解決できるものと期待される.診療科アンケートに関しては,医師事務作業補助者など事務専門職の関与が増加し,可能な限り速やかに入力するよう心掛けているという回答が増加していた.また,入力手順では,電子カルテ等をNCDに修正し,入力を行っている診療科が増加しており,電子カルテや院内情報を活用する事務専門職による入力体制へ変化している可能性が考えられた.
結論
本研究により,NCDにおける外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布,手術症例数,7つの領域別の手術症例数および各領域の主な手術に対する手術件数が明らかとなった.脳神経外科領域においては,2015年1月より全国の施設が入力を開始しとなり,2016年2月時点で約13万件の症例登録がされている.病理については2016年秋頃の症例登録を予定しており,2015年度内に入力に関する仕様が確定される.さらに,現在NCDが行っているNCD Feedback機能は,蓄積データから医療の質の向上につながる手法として,NCDに参画している他領域においても,未参画の領域においても,適切に使用すれば活用効果の高いことが期待される.しかしながら,現在これらのFeedback機能が臨床現場にとって,活用されている頻度や活用方法が明らかとなっていない.今後は現在未開発の他領域への展開を図るとともに,Feedback機能の活用を促し,適切に医療の質向上へ繋げる取り組みが重要である.また,NCD入力では,事務専門職の関与が増加しており入力体制の変化が示唆される.

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-12-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201520012C

収支報告書

文献番号
201520012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,930,000円
(2)補助金確定額
4,930,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 3,190,897円
旅費 0円
その他 675,000円
間接経費 1,137,000円
合計 5,002,897円

備考

備考
研究報告印刷冊子の作成代金が予定金額より超えてしまったため、補てんとして自己資金72,897円を支出しています。

公開日・更新日

公開日
2017-03-14
更新日
-