歯科診療所における恒常的な医療安全管理の基盤構築に関する研究

文献情報

文献番号
201520011A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科診療所における恒常的な医療安全管理の基盤構築に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-016
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
森崎 市治郎(大阪大学 歯学研究科(大学院))
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 智行(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,029,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,歯科診療所におけるインシデント等の実態調査を継続的に実施し,要因分析・検討を行なうことで患者中心の医療安全構築のための情報共有のあり方を検討する.公益社団法人日本歯科医師会や日本歯科衛生士会等とも連携し,訪問歯科診療等も含めた歯科診療所におけるインシデント等の収集・分析・提供のためのシステムをインターネット等を活用して構築するとともに,我が国のいかなる規模・形態の歯科診療所においても院内感染対策等も含めた恒常的な安全管理を実践出来る基盤構築を,地域歯科医療の実態に即し目指すものである.我が国の歯科医療の中心を担う6万8千超の無床歯科診療所は小規模・個人立であり,医療法施行規則に定める医療事故情報収集事業においても歯科診療所におけるインシデント等の情報は収集されにくい環境にある.森崎,宮本らが行なった平成21年度厚生労働科学研究では,歯科に特化した収集様式を開発し多施設の協力のもと総計27,857件の報告を得た.口腔機能の低下した高齢者等に対する安全管理の重要性が高まっているにもかかわらず歯科分野では情報収集過程における課題があり,国レベルにおいても実態把握が困難な状況にある.本研究の特徴は,公益社団法人日本歯科医師会等と連携し,訪問歯科診療を含む様々な歯科診療行為におけるインシデント等の収集・分析・提供のためのモデルシステムを構築し,歯科医療における自律的な事故防止体制強化のための検討を行う.
研究方法
本年度研究では,昨年度の研究結果を踏まえて①全国的規模での実態調査ならびにデータ解析,②本システムの評価,医療安全に関連したアンケート調査,③歯科診療所に特化した医療安全関連情報収集・共有システム(仮版)の運用および改良,④歯科診療所における恒常的な安全管理の基盤構築,を行なう.公益社団法人日本歯科医師会ならびに一般社団法人医療安全全国共同行動診療所部会(歯科)等の関係者の協力を得て,研究を遂行する.
結果と考察
システム開発を継続しつつ,平成27年9月に全国47都道府県歯科医師会の代表者を招集し,担当者への説明を行なった.同年10月より地域協力歯科診療所への資料配送等を行い,ネットワーク構築を推進した.本システムに関して,計43件の照会があり,必要に応じて研究班員が直接出向いてヒヤリング等を行ない,評価は概ね良好であった.同年11月~12月において実態調査を施行した.ネットワーク構築が確認出来た歯科診療所は46都道府県,342歯科診療所であり,計1304件の報告があった.受付・応対・接遇に関する事例が352例と最も多く,次いで口腔内への落下,誤飲・誤嚥が123例であった.一方,訪問歯科診療に関する事例は21件であり,口腔内への落下,誤飲・誤嚥が4例と最も多く,次いで検査・エックス線写真であった.昨年度の成果物である歯科診療所に特化した模擬事例については,歯学部の学生教育にも活用され,大変有用であった.一般社団法人医療安全全国共同行動診療所部会(歯科)にて,昨年度の結果等も踏まえて要因等の分析を行い,公益社団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業における関連情報についても参考にし,口腔内への落下,誤飲・誤嚥に関する歯科診療所における医療の質・安全関連情報(案)を作成した.研究成果の一部について,第10回医療の質・安全学会学術集会(幕張)等にて発表した.
結論
我々が開発した歯科診療所におけるインシデント等の収集・分析・提供のためのシステムは,インターネットを介した簡便なシステムであり,全国規模でネットワーク構築を可能とし,情報送信ならびに情報提供において連結不可能な匿名性を担保した状態で行うことが可能であり,本研究班作成の模擬事例等も含めて,本研究の成果が即,大いに活用できると考えられる.しかしながら,1.訪問歯科診療等においては更なる調査研究が必要であること,2.恒常的な歯科診療所における医療安全管理の推進には小規模な無床診療所に特化した検討が必要であり,現時点で十分な組織的対応がなされているとは言い難いこと,3.以上より早急に本システムを国レベルで継続して運用する必要があること,等が示唆された.

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201520011B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科診療所における恒常的な医療安全管理の基盤構築に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-016
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
森崎 市治郎(大阪大学 歯学研究科(大学院))
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 智行(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,歯科診療所におけるインシデント等の実態調査を継続的に実施し,要因分析・検討を行なうことで患者中心の医療安全構築のための情報共有のあり方を検討する.公益社団法人日本歯科医師会や日本歯科衛生士会等とも連携し,訪問歯科診療等も含めた歯科診療所におけるインシデント等の収集・分析・提供のためのシステムをインターネット等を活用して構築するとともに,我が国のいかなる規模・形態の歯科診療所においても院内感染対策等も含めた恒常的な安全管理を実践出来る基盤構築を,地域歯科医療の実態に即し目指すものである.我が国の歯科医療の中心を担う6万8千超の無床歯科診療所は小規模・個人立であり,医療法施行規則に定める医療事故情報収集事業においても歯科診療所におけるインシデント等の情報は収集されにくい環境にある.口腔機能の低下した高齢者等に対する安全管理の重要性が高まっているにもかかわらず歯科分野では情報収集過程における課題があり,国レベルにおいても実態把握が困難な状況にある.本研究の特徴は,公益社団法人日本歯科医師会等と連携し,訪問歯科診療を含む様々な歯科診療行為におけるインシデント等の収集・分析・提供のためのモデルシステムを構築し,歯科医療における自律的な事故防止体制強化のための検討を行う.
研究方法
平成26年度では,①歯科診療所におけるインシデント等医療安全関連情報収集システムの改良,②全国的規模でのモデル組織構築ならびにサンプル調査(第一次),③モデル組織における要因分析,医療安全管体制等に関する基礎調査ならびにヒヤリング実施,④全国的規模でのモデル組織におけるサンプル調査(第二次),⑤歯科診療所に特化した医療安全関連情報収集・共有システム(仮版)の作成,等について,平成27年度では,昨年度の研究を踏まえて①全国的規模での実態調査ならびにデータ解析,②本システムの評価,医療安全に関連したアンケート調査,③歯科診療所に特化した医療安全関連情報収集・共有システム(仮版)の運用および改良,④歯科診療所における恒常的な安全管理の基盤構築,を行なう.公益社団法人日本歯科医師会等の関係者の協力を得て,研究を遂行する.
結果と考察
無床歯科診療所の特性を踏まえ,訪問歯科診療等においても対応できるシステム構築を行なった.無床歯科診療所に特化した12の模擬事例並びに本システムに関する説明用DVD等を作成した.公益社団法人日本歯科医師会等の関係者の参画を得て,平成26年度においては,10都道府県×10歯科診療所のモデル歯科診療所ネットワーク構築を推進した.平成26年11月~12月の1ヶ月間,実態調査を施行した.85施設より,訪問歯科診療を含む302件のインシデント事例報告を得た.システム開発を継続しつつ,平成27年度は,全国47都道府県全ての地域担当者に説明を行い,大規模なネットワーク構築を推進した.本システムに関して,計43件の照会があり,必要に応じて研究班員が直接出向いてヒヤリング等を行ない,評価は概ね良好であった.平成27年11月~12月において実態調査を施行し,ネットワーク構築が確認出来た歯科診療所は46都道府県,342歯科診療所,計1304件の事例報告があった.受付・応対・接遇に関する事例が352例と最も多く,次いで口腔内への落下,誤飲・誤嚥が123例であった.一方,訪問歯科診療に関する事例は21件であり,口腔内への落下,誤飲・誤嚥が4例と最も多く,次いで検査・エックス線写真であった.模擬事例については,歯学部の学生教育にも活用され,大変有用であった.一般社団法人医療安全全国共同行動診療所部会(歯科)にて,昨年度の結果等も踏まえて要因等の分析を行い,公益社団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業における関連情報についても参考にし,口腔内への落下,誤飲・誤嚥に関する歯科診療所における医療の質・安全関連情報(案)を作成した.研究成果の一部について,医療の質・安全学会学術集会(幕張)等にて発表した.
結論
我々が開発した歯科診療所におけるインシデント等の収集・分析・提供のためのシステムは,インターネットを介した簡便なシステムであり,全国規模でネットワーク構築を可能とし,情報送信ならびに情報提供において連結不可能な匿名性を担保した状態で行うことが可能であり,本研究班作成の模擬事例等も含めて,本研究の成果が即,大いに活用できると考えられる.しかしながら,1.訪問歯科診療等においては更なる調査研究が必要であること,2.恒常的な歯科診療所における医療安全管理の推進には小規模な無床診療所に特化した検討が必要であり,現時点で十分な組織的対応がなされているとは言い難いこと,3.以上より早急に本システムを国レベルで継続して運用する必要があること,等が示唆された.

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201520011C

収支報告書

文献番号
201520011Z