肝硬変患者への早期・積極的介入を目指した診療連携の強化・活性化に関する研究

文献情報

文献番号
201519009A
報告書区分
総括
研究課題名
肝硬変患者への早期・積極的介入を目指した診療連携の強化・活性化に関する研究
課題番号
H27-肝政-指定-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 隆弘(山口大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 坂井田 功(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 高見 太郎(山口大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝硬変に対する治療法は進歩しており、今後の肝硬変対策の推進において、専門医療機関への早期からの受診・紹介等の診療連携を促進することが重要であり、その促進因子や取り組みを明らかにすることが必要である。
研究方法
山口大学病院および県内の肝疾患専門医療機関から多数の肝硬変症例について、年齢、肝硬変の成因や重症度、受診経緯などの患者背景および介入開始後の新規イベント(肝発がん、静脈瘤破裂、肝不全症状による入院、全死亡)発生状況、Child-Pughスコアの推移などの臨床データを後ろ向きに収集し、Kaplan-Meier推定法等の統計学的手法により、(1)肝硬変症に対する専門医療機関の早期介入の促進因子と介入後の効果検討、(2)肝硬変に対する新規治療を希望する患者背景の検討、(3)当院で実施中の肝硬変に対する新規治療法である「C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変症に対する自己骨髄細胞投与療法(ABMi療法)」(先進医療B)の安全性・有効性の検討を行った。
結果と考察
(1)専門医療機関の早期介入例においては有意にEvent free survivalが長く、Child-Pughスコアは有意に低値であり、その変遷からも病態が長期間維持されることが示された。また晩期介入例においては、Child-Pughスコアは高値を示し、介入開始後は一時的に有意な低下を認め、約3年間は改善が維持されるものの以後再び上昇に転じる傾向が示され、その効果は限定的であった。早期介入の契機としては抗ウイルス治療のほか、PSE(部分的脾動脈塞栓術)やB-RTO(バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓)などの専門的治療、先進医療・臨床研究など肝硬変に対する新たな治療を目的とした紹介・受診が多く、これらが早期介入や診療連携の促進に寄与することが示された。
(2)当院で実施中の先進医療や臨床研究を希望して紹介となった患者338例の検討で、近年はChild-Pugh分類Aの症例割合が減少し、分類BやCのより重症の症例が増える傾向にあった。C型肝炎を中心とした肝炎の治療法の変遷に伴い、肝硬変に対する新規治療はより重度の肝硬変患者において求められていることが示された。
(3)当院で実施中の肝硬変症に対する新規治療法(ABMi療法)について、これまでに3例の症例登録を行い、現時点で治療に伴う重篤な有害事象の発現を認めていない。また、研究体制の整備も併せて行い、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」へ移行するため、大阪大学第一特定認定再生医療等委員会における審査を経て厚生労働大臣に再生医療提供計画を提出し、平成27年11月17日付で承認を得た(PB6150002)。これに引き続き、先進医療Bの変更申請を行い、平成28年3月末時点で審査中である。このように肝硬変に対する新規治療法の開発に資するため、切れ目なく臨床研究を推進しているところである。
結論
肝硬変患者に対する早期からの専門医療機関の介入により、予後の改善が期待される。早期介入のための診療連携の活性化にあたり、肝硬変に対する新規治療法の存在はその促進因子のひとつとなる。

公開日・更新日

公開日
2017-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201519009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
集積した臨床情報をもとに、肝硬変の成因割合の経時変化や成因別の無発癌期間、生命予後などの疫学データが示された。また肝硬変患者に対する早期からの専門医療機関介入による予後改善効果とともに、進行期の介入においても一定の病態改善効果が示され、専門医療機関受診の重要性が示された。さらに、新規治療法の開発が診療連携を促進する因子であることが示され、新規治療法の普及による受診勧奨・患者紹介等の連携の推進、またその研究開発の促進の根拠が示された。
臨床的観点からの成果
肝硬変の疫学情報をもとに、肝発癌以外の病態にも注意した診療の重要性が示された。また本研究の中で、当科で実施中の肝硬変症に対する新規治療法の臨床研究について再生医療に関する法制度に対応した手続きと有効性・安全性の評価を進めることができた。これらの成果をもとに、治療効率の向上を図る新たな臨床研究を考案し、実施に向け特定認定再生医療等委員会の審査等の手続きを行い、厚生労働大臣の承認を取得、研究を開始した。
ガイドライン等の開発
現時点で該当なし
その他行政的観点からの成果
肝硬変患者に対する専門医の早期からの介入による予後改善および進行期においても一定の病態改善が示されたことで、当該成果を活用した広報と啓発により肝硬変患者の肝疾患専門医療機関への受診勧奨と診療連携の促進が図られることが期待される。
その他のインパクト
日本消化器病学会誌2017年1月号「肝硬変治療の現状と今後の展望」の中で、本研究の結果について言及した。また、2017年6月の日本肝臓学会総会で本研究の結果について発表した内容が民間企業の学会記録集のパンフレットに掲載され、専門医療機関の早期介入について啓発がなされた。本研究を基礎とした肝硬変の疫学調査データは2019年3月発刊の「肝硬変の成因別実態2018」にも掲載され、地区座長より優秀演題に選定された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
久永拓郎、山﨑隆弘、坂井田功、他
肝硬変患者に対する肝疾患専門医療機関の早期介入の有効性
山口医学 , 66 (3) , 163-168  (2017)

公開日・更新日

公開日
2017-01-17
更新日
2019-09-27

収支報告書

文献番号
201519009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,482,062円
人件費・謝金 74,780円
旅費 131,580円
その他 6,311,578円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-01-17
更新日
-