全国規模インターフェロン・データベースの二次利用による今後の肝炎対策のあり方に資する研究

文献情報

文献番号
201519008A
報告書区分
総括
研究課題名
全国規模インターフェロン・データベースの二次利用による今後の肝炎対策のあり方に資する研究
課題番号
H27-肝政-指定-007
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
正木 尚彦(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉英徳(首都大学東京 システムデザイン学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究代表者らは、平成20年4月から全国で展開されているB型・C型肝疾患のインターフェロン(IFN)治療に対する医療費助成事業と協働し、IFN治療を受けているB型・C型肝疾患患者の年齢、性別、肝病変進行度、ウイルス型、ウイルス量、副作用の出現状況、および最終的治療効果等に関する臨床情報の収集を平成21年度から開始した(厚生労働科学研究 H21-肝炎-一般-012)。特に、平成24年度からは患者の受療状況・治療完遂率・治療効果等における地域差の存在に着目し、解析を進めてきた(厚生労働科学研究 H24-肝炎-一般-001)。特に、ペグインターフェロン・リバビリン2剤併用療法を受けたC型肝疾患患者(平成25年5月時点;約13,000例)に関する解析の結果、患者の受療状況、投与完遂率、ウイルス学的治療効果に関して、地域差の存在することが判明した(BMC Public Health 2015)。投与完遂率・著効率の劣っている地域は一次産業主体の人口過疎地域であり、医療資源への診療アクセス面に影響を及ぼしている可能性が想定された。その後も順調にデータが蓄積されたことから、平成27年8月時点で同様の解析を行うこととした。同時に、各自治体におけるC型肝炎インターフェロン治療達成度に関する検証、ならびに喫緊の課題である「社会に潜在するB型・C型肝炎ウイルスキャリア(未受検者)」の掘り起こしに資するツール開発を行った。
研究方法
38自治体からIFN治療効果判定報告書を収集し、全国を10地域に分けて比較した。平成20~25年度に各自治体でIFN医療費助成受給者証の交付を受けた肝炎患者の属性データ(B型かC型か、性別、年齢)を収集し、平成24年度の人口統計を基に人口10万人あたりのC型肝炎IFN医療費助成受給者数を算出した。尚、自治体ベースのHCV抗体陽性率のデータは存在しないため、これに相関することが報告されている肝がん年齢調整死亡率(平成22~26年の5年平均、全年齢)を国立がん研究センターがん情報センターホームページから入手し、その代用とした。現行の「肝炎ウイルス検査マップ」のユーザビリティを向上させるため、渡邉分担研究者の保有するノウハウを全面的に活用した。
結果と考察
1)ペグインターフェロン・リバビリン2剤併用療法について(17,237例):投与中止に関与する因子として、高齢(65歳以上)、遺伝子型1型、治療前AST低値、FIB-4 index高値、治療開始年(2008年以降)に加えて、地域差(九州を対照としたオッズ比:北海道<東北<四国<中国<近畿<1.0)が選択された。さらに、非著効に関与する因子として、女性、高齢(65歳以上)、再治療、遺伝子型1型、高ウイルス量(5.0 LogIU/mL以上)、治療前ALT低値、治療前PLT低値、FIB-4 index高値に加えて、地域差(四国<北海道<東北<関東<東海<近畿<1.0)が選択された。
2)3剤併用療法について(2,014例):投与中止に関与する因子として、女性、高齢(65歳以上)、治療前PLT低値に加えて、地域差(九州を対照としたオッズ比:東北<四国<東海<北海道<中国<関東<1.0)が選択された。非著効に関与する因子として、女性、再治療、高ウイルス量、治療前PLT低値、投与中止が選択されたが、地域は単変量、多変量共に有意な因子として抽出されなかった。その理由として、3剤併用療法では肝臓学会専門医の関与が必須要件とされたことが寄与した可能性がある。
3)自治体におけるC型肝炎インターフェロン治療達成度について:27自治体での検討では、C型肝炎IFN医療費助成受給者数は自治体間で80~350(人/人口10万人)と4倍強の差があること、肝がん年齢調整死亡率(HCV抗体陽性率に比例)は8~16(人/人口10万人)と2倍の差を認めた。2つのパラメーターの分布から、「治療導入が標準的に行われている」、「治療導入がやや不十分」、「治療導入が標準以上」の3群に自治体を分類することが可能であった。
4)肝炎マップ試作版の開発:JavaScriptデジタルアースライブラリを利用し、JSONの記述を簡素化することによりウェブブラウザの負荷を軽減した。さらに、ズームイン度合いに応じたマーカ切換によって、各医療機関の位置を識別しやすくした。加えて、詳細情報のバルーン内表示とGoogle®ストリートビューの組み込みによって、医療機関の位置と詳細情報・周辺状況の同時閲覧が可能となった。
結論
肝疾患診療レベルのさらなる均てん化を目指すには医療資源への診療アクセスの改善に加えて、治療担当医の専門的能力を高める必要がある。そのためには病診連携、病病連携のさらなる充実とともに、住民、医療従事者への啓発活動の推進が重要である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201519008C

収支報告書

文献番号
201519008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,243,768円
人件費・謝金 2,716,189円
旅費 969,034円
その他 2,967,277円
間接経費 1,103,732円
合計 10,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-01-17
更新日
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