文献情報
文献番号
201519004A
報告書区分
総括
研究課題名
職域におけるウイルス性肝炎患者に対する望ましい配慮及び地域を包括した就労支援の在り方に関する研究
課題番号
H26-肝政-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 哲(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 堀江 正知(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 坂本 穣(山梨大学医学部附属病院 肝疾患センター)
- 柿崎 暁(群馬大学医学部附属病院、第一内科、肝疾患相談センター)
- 池田 房雄(岡山大学病院消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
15,390,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、肝炎患者労働者が就労と治療について相談できる窓口をこれまでの事業所内だけでなく、事業所外にも拡大するため、産業医からの配慮事例に加え、肝疾患相談センター、各機関の肝疾患コーディネーターから就労支援の相談事例を収集、整理する。これらの事例を共有することが就労支援の機会増加につながり、職域における肝炎患者に対する望ましい配慮と就労支援の在り方の提言に結びつく。さらに、IFNを使用しない経口抗ウイルス治療薬が昨年末からあいついで承認され、職域での肝炎検査の受検と、検査陽性者を治療に結びつけることがより重要となっている。平成27年度は下記の課題について検討を行った。
(1)労働者、事業者、かかりつけ医、専門医間の連携用連絡ノートと肝疾患コーディネーターが就労環境を評価するためのアセスメントシートの運用
(2)肝疾患相談センター、肝疾患コーディネーターでの就労に関する相談の実態と事例収集
(3)病病、病診連携における就労と治療の両立支援体制の構築
(4)産業医が関与した慢性肝障害の事例を収集のうえ経過を追跡して、就業支援の有効性を分析。
(5)肝疾患相談センター、産業保健推進センター、労働基準協会、保健所等の地域の機関が連携した肝炎ウイルス検査の勧奨と就労支援への啓発活動
(6)職域の定期健診と同時の肝炎検査と産業医を中心とした検査陽性者のフォローアップモデルの確立。
(1)労働者、事業者、かかりつけ医、専門医間の連携用連絡ノートと肝疾患コーディネーターが就労環境を評価するためのアセスメントシートの運用
(2)肝疾患相談センター、肝疾患コーディネーターでの就労に関する相談の実態と事例収集
(3)病病、病診連携における就労と治療の両立支援体制の構築
(4)産業医が関与した慢性肝障害の事例を収集のうえ経過を追跡して、就業支援の有効性を分析。
(5)肝疾患相談センター、産業保健推進センター、労働基準協会、保健所等の地域の機関が連携した肝炎ウイルス検査の勧奨と就労支援への啓発活動
(6)職域の定期健診と同時の肝炎検査と産業医を中心とした検査陽性者のフォローアップモデルの確立。
研究方法
平成25年から「肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業」が開始されている。これまでの研究班の成果をモデル事業に反映して頂くため、平成27年にモデル事業に参加している肝疾患相談センターとの間で連絡会を開催。山梨県、群馬県ではこれまで多くの肝疾患コーディネータを養成している。肝疾患コーディネータを通じて就労支援の相談事例を収集。地域における中小事業者での肝炎対策を進めるために、肝疾患相談センター、産業保健総合支援センター、労働基準協会、保健所、商工会議所等の複数の関連機関を包括したモデル構築実現のため、2次医療圏(神奈川県湘南西部)を対象として、地域・職域連携推進事業の枠組みの中で肝炎対策と肝炎患者労働者に対する治療と就労の両立支援を目的として、関連機関の連携に向けた調整と、事業者、経営者への啓発。また、IFN夜間休日診療施設マップを改良し、経口抗ウイルス治療に対応可能な施設を登録することで一層の病診連携を進める。一方、事業者、産業医に対する支援として慢性肝疾患の労働者へ行う就労配慮に関する事例登録システムの開発と、産業医による肝炎労働者の就業配慮及び保健指導のための支援ツールの開発を進めた。さらに職域への出張肝臓病教室の経験から職域向けの教育教材を作成。
結果と考察
肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業では、相談体制が充分でないところで連絡ノート等の支援ツールが有効である事例があった。社会労務士による相談に加えて、労働局、自治体、協会けんぽとの連携している施設が増えているが、各施設のがん相談支援センターでのがん患者への就労支援との連携が課題である。肝疾患コーディネータは就労支援相談に取り組む意欲があるものの、相談可能となるための研修を要する。また、経口抗ウイルス治療薬が導入されても、休日や平日夕方に対応可能な施設の通院を要望する事例があり、専門医、肝疾患相談センターがかかりつけ医と積極的に連携することが重要である。経口抗ウイルス治療薬の導入により肝炎ウイルス検査受検による早期発見と陽性者の受診、治療の意義が重要となっている。モデル事業所で実施した会社の定期健康診断と同時の無料肝炎検査によりキャリアの発見、治療に結びついたことから、職域において定期健康診断が肝炎検査を受検し易い環境であることは確実である。自治体の無料検査を職域に拡大するには、自治体や医師会との調整等で困難を認めることが多く今後の課題である。
中小企業の事業者への講演から、健康経営の観点で治療と就労の両立支援は受け入れ易いが、保健所、各自治体が委託する医療機関での無料検査、市町村で実施している肝炎検診(健康増進事業)について十分情報が伝わっておらず、市町村実施のがん検診と合わせて肝炎検診も地域・職域連携推進事業の枠組みに取り入れてもらうことが重要と考えられた。厚生労働省が実施している委託事業「治療と職業生活の両立等の支援対策事業」の成果についても現場で取り入れる際に参考にする予定。
中小企業の事業者への講演から、健康経営の観点で治療と就労の両立支援は受け入れ易いが、保健所、各自治体が委託する医療機関での無料検査、市町村で実施している肝炎検診(健康増進事業)について十分情報が伝わっておらず、市町村実施のがん検診と合わせて肝炎検診も地域・職域連携推進事業の枠組みに取り入れてもらうことが重要と考えられた。厚生労働省が実施している委託事業「治療と職業生活の両立等の支援対策事業」の成果についても現場で取り入れる際に参考にする予定。
結論
経口抗ウイルス治療薬が導入されても休日や平日夕方に対応可能な施設紹介の要望があることから、治療継続のため、専門医、肝疾患相談センターが積極的な連携は今後も重要と考えられた。職域において定期健康診断が肝炎検査を受検し易い環境であることは確実であるので、肝炎に対する職域向けの教材により職域での一層の啓発をモデル事業の中で展開する。
公開日・更新日
公開日
2017-01-17
更新日
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