HIV感染症の医療体制の整備に関する研究

文献情報

文献番号
201518014A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の医療体制の整備に関する研究
課題番号
H27-エイズ-指定-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター)
  • 山本 政弘(独立行政法人国立病院機構九州医療センター)
  • 岡  慎 一(独立行政法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
  • 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院医学研究科)
  • 田邊 嘉也(新潟大学医歯学総合病院感染管理部)
  • 中谷 安宏(石川県立中央病院 免疫感染症科)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センターエイズ先端医療研究部)
  • 藤井 輝久(広島大学病院 輸血部)
  • 宇佐美 雄司(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 歯科・口腔外科)
  • 池田 和子(独立行政法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
  • 吉野 宗宏(独立行政法人国立病院機構姫路医療センター 薬剤科)
  • 本田 美和子(独立行政法人国立病院機構東京医療センター)
  • 葛田 衣重(千葉大学医学部附属病院)
  • 小島 賢一(荻窪病院 血液科)
  • 内藤 俊夫(順天堂大学医学部総合診療科研究室)
  • 安藤 稔(東京都立駒込病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
97,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現代のHIV感染症診療の主な課題は長期予後改善である。血友病薬害被害者の救済医療には居住地域における医療・療養環境整備が不可欠であり、HIV感染症診療の均てん化の対象をエイズ診療拠点病院から全ての医療・福祉機関にシフトすべきである。そのためには全国の医療・福祉および行政機関が血友病薬害被害者およびHIV陽性者の現況を把握する必要があるが、現在、我が国におけるそれらの客観的指標は乏しい。
そこで、本研究では、地域の実情に応じた医療・福祉体制の整備計画策定を促し、地域の一般の医療・福祉施設でのHIV陽性者への対応能力の向上をはかることで救済医療の拡充とともにHIV感染症診療の一般化を行うことを大目的とする。今年度は、まず、各都道府県の行政機関とエイズ診療拠点病院の連携により被害者を含むHIV陽性者の人数、診療状況、居住地域および生活状態を把握し、課題の抽出を試みる。
研究方法
国立国際医療研究センター病院及び全国8ブロックおよび東京都を中心とする首都圏のエイズ診療ブロック拠点病院等主要医療機関の診療担当者からなる医療ネットワークにより、自治体との連携によるブロック内拠点病院の定期受診者の現況把握、自院における累積死亡症例数の把握、重点対応症例(透析、歯科関連等)の抽出等を行う。
一方、HIV/エイズ診療においてチーム医療を担う医師、看護師、薬剤師、メディカルソーシャルワーカー(MSW)、カウンセラーと重点診療体制整備領域である歯科、透析によって包括医療ネットワークにより、医療ネットワークから抽出された重点対応症例検討を行い職種別に課題抽出を抽出、介入方法を検討する。
結果と考察
2014年10月1日から同年12月31日の間に全国382カ所のエイズ診療拠点病院の受診者数の調査を行い381病院にHIV感染症もしくは後天性免疫不全症候群を確定傷病名としてエイズ診療拠点病院を受診した患者は最大20,837人。2014年1月1日から12月31日の間に死亡が確認された患者数は最大163名。また、主要ブロック拠点病院で把握している死亡者数の累計は624名(定期通院者6021名)。把握されている腎代替療法中の患者数は約80名。
血友病被害者の長期療養に関する課題の検討を行ったところ、血友病被害者の透析症例においては脳出血、心血管病をはじめとする致死的合併症への対応の充実をはかることが重要であること、ポリファーマシーの状況にある事、将来への確たる展望が抱けないと訴える被害者が多いことが明らかとなった。また、歯科ネットワークや看護師とMSWの連携による病院-地域連携の構築の重要性も明らかとなった。また、国立国際医療研究センターではHIV陽性者にも対応可能な医療者の育成への取り組みが開始された。
結論
本研究により、高い捕捉率で種々の疫学・臨床情報が得られる仕組みによるHIV陽性者の通院・治療の現況と死亡例の解析が明らかとなった。全国の拠点病院には約20,000名のHIV陽性者が通院中であること、また、他方、各自治体にはHIV診療の空白二次医療圏が多く存在することが明らかとなった。医療機関が有するHIV陽性者全体の居住地情報を併せて検討すると、当然ながらどの二次医療圏にも一定数のHIV陽性者が居住していることが示され、今後、被害者についても同様の解析を行うとHIV診療の空白二次医療圏に血友病被害者が居住していると予想された。
今後の我が国の長期療養経過まで含めたケアカスケード作成の端緒や改正が予定されている予防指針策定の根拠となる疫学情報を提供できる可能性がある。また、医療側から治療状況の情報を重ねることにより、充実した医療福祉制度のもと良好な治療効果が得られている日本のHIV診療の現況を世界に示すことができる可能性がある。
血友病薬害被害者を含むHIV陽性者の医療・生活の現況をひろく国民に可視化することは、過度に拠点病院に依存した診療体制の是正につながることも期待される。

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201518014Z