血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者の肝移植に関する研究

文献情報

文献番号
201518012A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者の肝移植に関する研究
課題番号
H27-エイズ-指定-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
江口 晋(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 英利(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 遠藤 知之(北海道大学病院)
  • 上平 朝子(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
  • 玄田 拓哉(順天堂大学医学部附属静岡病院)
  • 國土 典宏(東京大学医学部大学院医学系研究科)
  • 嶋村 剛(北海道大学病院)
  • 高槻 光寿(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
  • 塚田 訓久(独立行政法人国立国際医療研究センター)
  • 中尾 一彦(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
  • 四柳 宏(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤を介してのHIV/HCV重複感染が社会問題となっている本邦においては、肝不全に対する治療の選択肢として肝移植治療を安定して供給することは社会からの要請であり、患者救済のため急務である。
本研究の目的は、HIV/HCV重複感染者における肝移植適応基準および移植周術期のプロトコルを確立することである。
研究方法
肝移植適応基準の検証・確立
これまでの研究に基づき重複感染者における脳死登録ポイントのランクアップを行い、早期に登録可能となったが、これはChild-Pugh分類に基づいて緊急度を点数化したものが基準となっている。平成28年度より、より客観性の高いMELD(Model for end-stage liver disease)スコアによる緊急度評価に変更予定であるため、同基準によるランクアップの要否および加点システムの構築を検討する。
HIV/HCV重複感染者における肝移植周術期プロトコルの確立
本研究を開始以後に施行された脳死肝移植1例、生体肝移植2例について、平成23年度「血液製剤によるHIV/HCV重複感染者に対する肝移植のための組織構築」(兼松班)で作成したガイドライン、およびHCVに対する経口剤による最新治療を導入して周術期管理を行い、その結果を検討する。
肝細胞癌調査
HCV感染は肝細胞癌(hepatocellular carcinoma, HCC)の高リスクであり、HCCは肝移植の成績を左右する重要な因子であるため、HCC合併の実態を全国のエイズ診療施設へアンケート調査することとする。
(倫理面への配慮)
研究の遂行にあたり、画像収集や血液などの検体採取に際して、インフォームドコンセントのもと、被験者の不利益にならないように万全の対策を立てる。匿名性を保持し、データ管理に関しても秘匿性を保持する。
結果と考察
重複感染症例における予後予測因子として、文献的にMELDスコアは有用でるという報告があるが(Subramanian et al. Gastroenterology 2010)、ここでは薬物乱用や性交渉を原因とする症例がほとんどであり、幼少時の汚染血液製剤使用による本研究班の対象群とは疾患背景が異なることが問題と思われた。本邦と同様の血友病患者群を対象とした報告では、血友病群は非血友病群に対して脳死登録待機中の死亡率が有意に高く、同一の登録基準では救命が難しい可能性が示唆された(Ragni et al. Haemophilia 2013)。重複感染者の待機死亡例のMELDスコアはそれ以外の症例と比較しておよそ10低い、とする報告もあり(Murillas et al. Liver Transpl 2009)、MELDを基準にする際にも、加点によるランクアップが必要であることが推測された。そこで重複感染者における予後を検討するため、まず現行の本邦での脳死登録基準における登録時のMELDスコアを肝移植適応評価委員会のデータをもとに調査したところ、中央値はそれぞれ緊急度6点(CP-C(重複感染者ではCP-Bに相当))が16点、緊急度8点(CP-CかつMELD25点以上(重複感染者ではCP-Cに相当))が27点であった。さらに、移植待機中にMELDが1上昇するのにおよそ100日(約3か月)かかるため、登録以降半年ごとにMELDスコアを2点加算していく案が提案された。つまりHIV/HCV重複感染症例ではCP-B症例はMELD16点、CP-C症例はMELD27点で登録し、それぞれ半年ごとに2点ずつ加算していくこととした。これを本研究班の案として平成27年第1回肝移植委員会(平成27年9月、熊本)に提出し、可決された。実際に平成28年度からの適応基準変更の際に採用される予定である。
結論
HIV/HCV重複感染者においては肝移植適応の判断および周術期管理のプロトコルについて、免疫抑制療法・HIV治療・HCV治療のそれぞれを特化する必要があるが、脳死登録については緊急度をランクアップし、周術期管理についてはより効果的な最新治療を導入し、良好な結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-12-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201518012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
25,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
-5,000,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,766,232円
人件費・謝金 1,825,429円
旅費 7,442,276円
その他 7,966,685円
間接経費 0円
合計 25,000,622円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
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