文献情報
文献番号
201518011A
報告書区分
総括
研究課題名
非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究
課題番号
H27-エイズ-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
木村 哲(公益財団法人エイズ予防財団)
研究分担者(所属機関)
- 柿沼 章子(社会福祉法人はばたき福祉事業団)
- 田中 純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 疫学・疾病制御学)
- 照屋 勝治(国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
- 江口 晋(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 移植・消化器外科)
- 遠藤 知之(北海道大学病院 血液内科)
- 三田 英治(国立病院機構大阪医療センター 統括診療部)
- 四柳 宏(東京大学医学部附属病院 感染症内科)
- 藤谷 順子(国立国際医療研究センター病院 リハビリテーション科)
- 大金 美和(国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
- 中根 秀之(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座精神障害リハビリテーション学分野)
- 潟永 博之(国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
43,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HIV感染血友病等患者はHIV感染自体あるいは抗HIV薬の副作用による糖代謝や脂質異常に加え、合併するHCV感染症の進行、高齢化と関節症悪化による日常活動能の低下、精神的な問題等々を抱えている。この研究は患者参加型で患者の日常生活状況とニーズを明らかにし、患者にとって最良の長期療養体制を見出すことを目的とした。
研究方法
研究は下記の1から5のサブテーマに分け、同時並行で行った。
1. 全国のHIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査と支援に関する研究
2. 合併C型慢性肝炎に関する研究
3. 血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究
4. HIV感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアに関する研究
5. HIV感染血友病等患者に必要な医療連携に関する研究
1. 全国のHIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査と支援に関する研究
2. 合併C型慢性肝炎に関する研究
3. 血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究
4. HIV感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアに関する研究
5. HIV感染血友病等患者に必要な医療連携に関する研究
結果と考察
サブテーマごとに記載する。
1.全国のHIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査と支援に関する研究:
聞き取り調査において、生活実態把握と相談機能をあわせた支援を行い、支援資源不足による生活脆弱性リスク、資源の活用・開発のコンダクター不足などの問題点があることを明らかにした。訪問看護ステーションとの協働による「訪問健康相談」を12か所で実施し、健康問題の自覚の向上、相談に対する信頼感、生活閉鎖感の緩和、信頼できる支援伴走者がいることへの安心感などから高い利用満足度を得た。抗HIV療法開始前後の生存曲線を比較し、生存期間の平均値はそれぞれ38.5年、49.0年で、約11年延長していることを見出した。
2.合併C型慢性肝炎に関する研究:
昨年度作成したHIV/HCV重複感染血友病等患者に対する非侵襲的な肝線維化指標(APRI、FIB4)のカットオフ値の評価を行い、その有用性・妥当性を確認した。共同研究で直接作用型経口抗HCV薬(DAA)による重複感染治療試験を行った。現時点で33名に対し、Genotype 1ではSofosbuvir+Ledipasvirを、Genotype 2ではSofosbuvir+Ribavirinをそれぞれ12W投与した。何れも抗ウイルス効果は良好で特記すべき副反応は認めていない。SVR12が揃った段階で、全国に情報提供して行く。血友病患者では、一般のHCV感染と異なり、Genotype 3型感染者が20%と高いが、海外で承認されている治療法が日本では承認されていない。臨床研究としてHCV Genotype 3型重複感染血友病患者に対し、Sofosbuvir + Ribavirinの24W投与、及びSofosbuvir + Daclatasvir 12W投与を開始した。患者の途中経過は良好である。
3.血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究:
仙台および東京で研修会および関節検診会を開催した。血友病患者の関節拘縮状況、筋力低下度等の知見が蓄積された。血友病患者は若くても筋力低下・関節可動域制限などの障害を有し、歩行速度が遅く、速足でも歩行速度の増加が少ないことが明らかとなった。これらの運動能力の低下・障害は年齢と共に増悪していた。
4.HIV感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアに関する研究:
地域福祉スタッフによるHIV感染血友病等患者の受け入れを促進するために、受け入れ要件を検討した。患者・家族側からの要件には、早期からの診療・ケア方針の情報共有、療養に関する要望の情報共有があげられた。サービス提供者側の受け入れ要件では、専門医療機関のバックアップ体制の保障が必須であった。HIV感染血友病等患者は、仕事や人間関係に関する差別体験を有し、身体的健康問題について不公平な扱いを実感していた。
5.HIV感染血友病等患者に必要な医療連携に関する研究:
昨年度作成した「診療チェックシート」及びその「解説書」の普及に努めた。ACCではHCV-RNA陽性者が39名で、37名にDAA療法を予定し、2016年1月末時点で、Genotype 1型~4型の患者の約3分の1対してDAAが開始されている。Genotype 3型の患者に対しては、臨床試験としてSofosbuvirとDaclatasvirの併用を導入した。
1.全国のHIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査と支援に関する研究:
聞き取り調査において、生活実態把握と相談機能をあわせた支援を行い、支援資源不足による生活脆弱性リスク、資源の活用・開発のコンダクター不足などの問題点があることを明らかにした。訪問看護ステーションとの協働による「訪問健康相談」を12か所で実施し、健康問題の自覚の向上、相談に対する信頼感、生活閉鎖感の緩和、信頼できる支援伴走者がいることへの安心感などから高い利用満足度を得た。抗HIV療法開始前後の生存曲線を比較し、生存期間の平均値はそれぞれ38.5年、49.0年で、約11年延長していることを見出した。
2.合併C型慢性肝炎に関する研究:
昨年度作成したHIV/HCV重複感染血友病等患者に対する非侵襲的な肝線維化指標(APRI、FIB4)のカットオフ値の評価を行い、その有用性・妥当性を確認した。共同研究で直接作用型経口抗HCV薬(DAA)による重複感染治療試験を行った。現時点で33名に対し、Genotype 1ではSofosbuvir+Ledipasvirを、Genotype 2ではSofosbuvir+Ribavirinをそれぞれ12W投与した。何れも抗ウイルス効果は良好で特記すべき副反応は認めていない。SVR12が揃った段階で、全国に情報提供して行く。血友病患者では、一般のHCV感染と異なり、Genotype 3型感染者が20%と高いが、海外で承認されている治療法が日本では承認されていない。臨床研究としてHCV Genotype 3型重複感染血友病患者に対し、Sofosbuvir + Ribavirinの24W投与、及びSofosbuvir + Daclatasvir 12W投与を開始した。患者の途中経過は良好である。
3.血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究:
仙台および東京で研修会および関節検診会を開催した。血友病患者の関節拘縮状況、筋力低下度等の知見が蓄積された。血友病患者は若くても筋力低下・関節可動域制限などの障害を有し、歩行速度が遅く、速足でも歩行速度の増加が少ないことが明らかとなった。これらの運動能力の低下・障害は年齢と共に増悪していた。
4.HIV感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアに関する研究:
地域福祉スタッフによるHIV感染血友病等患者の受け入れを促進するために、受け入れ要件を検討した。患者・家族側からの要件には、早期からの診療・ケア方針の情報共有、療養に関する要望の情報共有があげられた。サービス提供者側の受け入れ要件では、専門医療機関のバックアップ体制の保障が必須であった。HIV感染血友病等患者は、仕事や人間関係に関する差別体験を有し、身体的健康問題について不公平な扱いを実感していた。
5.HIV感染血友病等患者に必要な医療連携に関する研究:
昨年度作成した「診療チェックシート」及びその「解説書」の普及に努めた。ACCではHCV-RNA陽性者が39名で、37名にDAA療法を予定し、2016年1月末時点で、Genotype 1型~4型の患者の約3分の1対してDAAが開始されている。Genotype 3型の患者に対しては、臨床試験としてSofosbuvirとDaclatasvirの併用を導入した。
結論
今後、患者及びその親の高齢化がさらに進むことから、訪問健康相談、訪問看護等の視点を深めて行くべきと考えられた。肝線維化の非侵襲的マーカーのカットオフ値が確定できた。HIV/HCV重複感染者に対し、DAAを使用し、良好な効果が得られつつある。ただし、HCV genotype 3型の治療法が国内では承認されておらず、臨床試験として治療中であるが、早急にDrug Lagを解消する必要がある。リハビリ医や精神科医を含めた多診療科間の連携に加え、医療・福祉・地域包括ケアの連携をさらに強化し、長期療養を支援して行くべきである。
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
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