中東呼吸器症候群(MERS)等の新興再興呼吸器感染症への臨床対応法開発のための研究

文献情報

文献番号
201517022A
報告書区分
総括
研究課題名
中東呼吸器症候群(MERS)等の新興再興呼吸器感染症への臨床対応法開発のための研究
課題番号
H27-新興行政-指定-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
大曲 貴夫(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
研究分担者(所属機関)
  • 賀来 満夫(東北大学・医学系研究科)
  • 林 淑朗(亀田総合病院)
  • 松井 珠乃(国立感染症研究所・感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中東呼吸器症候群(MERS)は新規コロナウィルス感染症であり中東でサウジアラビアを中心に流行が継続し、平成27年には韓国で1例の輸入例を発端としたアウトブレイクが発生している。国内でMERSが発生し拡散すれば、国民の健康の脅威となるのみならず国家危機管理上の問題となる事が予想される。よって本邦におけるMERS対策のために知見を集積し広く共有することが必要である。
研究方法
①ウェブサイト等の媒体や、ワークショップ等による情報提供
②診療支援
③発生国における医療機関での院内感染対策状況の調査
④MERS診療および感染防止対策マニュアル作成
結果と考察
①ウェブサイト等の媒体やワークショップ等による情報提供
・講習会を開催した。アンケートからMERS疑似症の経験がないことが課題として挙がった。
・E-learning教材を作成した。
②診療支援
・MERS疑似症が発生した医療機関Aの要請により専門家2名を派遣した。
③発生国における医療機関での院内感染対策状況の調査
・韓国の医療機関4施設を訪問し現場の担当者から真摯に対応頂き極めて示唆に富む有用な情報が得られた。
・タイの医療機関にてヒアリングと施設内見学を行った。
・米国の3病院を訪問調査した。集中治療・感染防止・医療者のコミュニケーション・廃棄物処理・患者アメニティ向上の観点で非常に工夫がなされていた。
④MERS診療および感染防止対策マニュアル作成
・抗ウイルス治療の指針案を作成した。加えて承認薬の適応外使用・未承認薬の使用の課題を取りまとめた。
・回復者血漿治療の使用体制整備のため、専門家にインタビューを行った。
・MERS等の重症新興呼吸器ウイルス感染症に対応する集中治療体制整備のため韓国の医療機関訪問及び国内の専門家との意見交換を行った。
・感染防止対策の指針の策定準備を行った。
・疫学情報や感染対策上の留意点について医療従事者向け、一般向けに感染対策ビデオを作成した.
・隔離対応の指針を示す家庭用ハンドブックを作成した。
⑤日本における診療体制、公衆衛生対策の整備
・二種指定医療機関に対して実態調査を行い、患者の受け入れ体制が不十分であることが判明した。
・MERS発生時の接触者調査に必要なデータベースの提案を目的に韓国で実施された接触者調査について情報収集を行った。
結論
公衆衛生上の対策
1.発生国の調査からは、政府・地方自治体・地域の公衆衛生部門・医療機関での指揮系統、役割分担の事前策定の重要性を確認した。
2.リスクコミュニケーション体制の検討が必要である。
3.訪日外国人が増加への対応に当たる省庁に感染症危機管理の提案も行う必要がある。
4.アウトブレイク時の公衆衛生対策目的での個人情報利用は有用だが国内で議論を深めておく必要がある。 
5.厚生労働省内にサーベイランスデータベースの専門部署の設立が必要である。短期的には既存のオープンソースの利用、接触者調査担当者への教育、訓練が必要である。
6.日本では公的データベースを利用できない可能性があるため、国内居住者からの自主的な報告と情報提供体制の整備が必要である。

感染防止対策
1.MERSの医療機関への持ちこみを防ぐスクリーニングシステムが必要である。
2.疑似症に対応した医療機関の経験を共有して教材を作成し訓練する必要がある。
3.医療機関にのファシリティマネジメントが必須である。
4.PPEの確実な使用、スタッフの選定等を含むガイドラインが必要である。
5.接触者の自宅隔離時の家族の感染対策について検討が必要である。

MERS診療対策:
6.医療機関への専門家派遣は有用である。
7.抗ウィルス薬治療・疫学調査は事前にプロトコル作成、多施設試験の枠組み作りが必要frある。
8.新興・再興感染症に治療を行う際の研究枠組みや未承認薬使用、既承認薬の適応外使用の体制整備が必要である。
9.感染症指定医療機関内での機能分担が必要である。
10.今後感染症病床には患者の居住性・利便性向上、コミュニケーション手段の改善、感染性廃棄物の十分な処理能力、感染症医・集中治療医など複数診療科との連携を組み込んだ十分なマンパワーの配置が必要である。
11.重症MERS管理には集中治療専門チームによる管理が必要である。
12.各領域の専門医・パラメディカルから構成される支援チームが必要である。

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201517022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,835円
差引額 [(1)-(2)]
-835円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,727,405円
人件費・謝金 1,220,335円
旅費 4,155,436円
その他 2,436,659円
間接経費 3,461,000円
合計 15,000,835円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
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