子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究

文献情報

文献番号
201517019A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究
課題番号
H27-新興行政-指定-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
池田 修一(国立大学法人信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科)
  • 神田 隆(山口大学大学院医学系研究科)
  • 楠 進(近畿大学医学部神経内科)
  • 桑原 聡(千葉大学大学院医学研究科)
  • 塩沢 丹里(国立大学法人信州大学 学術研究院医学系 )
  • 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 西川 典子(愛媛大学大学院医学系研究科)
  • 平井 利明(東京慈恵会医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.子宮頸がんワクチン(HPV)の副反応の実態を神経内科的観点から解明する。
2.同ワクチンの副反応が疑われる脳症状の病態解析。
3.同ワクチンの副反応に対する有効な治療法の確立。
研究方法
HPVワクチン副反応に関しては、診察希望のある患者を診察して、個々の症状の頻度と発生機序を検討した。特に脳症状がある患者では高次脳機能検査(WAIS-III、TMT試験)、脳SPECTを行い、発生機序を検討した。同時に薬物療法、血液浄化療法に代表される免疫調整療法の治療効果を検討する。倫理面への配慮は、本研究グループの構成員は研究を開始するに当って、所属施設の倫理委員会の承認を受ける。また対象となる患者に対しては、本研究の主旨を十分に説明して、同意が得られた患者のみに検査と治療を行う。
結果と考察
結果
1. HPVワクチン副反応の疑いで研究班の施設を受診した患者数は全体で192名であった。
2. 2013年6月~2015年11月に同症状で信州大学を受診した患者は106名であり、その中でHPVワクチン接種とは関連がない症状であると判断した患者は14名であった。
3. 高次脳機能障害が疑われた17名の症状は、記憶力低下35%、集中力低下25%、過睡眠20%であった。この中で脳SPECTの異常が60%、高次脳機能検査のTMT試験の遅延が60%、WAIS-IIIの処理速度低下が24%にみられた。
4. HLA geno-typingでは21名中18名がDPB1 05:01 alleleを有していた。
5. 脳症に対する治療では副腎皮質ステロイドは20名中8名に限定的効果があった。一方、免疫吸着は17名中15名で著効が得られた。

考察
HPVワクチン副反応の発現機序として、当初は起立性調節障害、複合性局所疼痛症候群 (CRPS) などの末梢性交感神経障害が主体であると考えていた。しかし最近は脳症状の重要性がクローズアップされて来ている。本ワクチンの副反応は従来考えられていた以上に広汎な神経系の障害を生じている可能性がある。
結論
HPVワクチンの多様な副反応を解明するためにHLA geno-typingを開始し、またモデルマウスを作成中である。

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201517019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HPVワクチン接種後の副反応出現には何らかの遺伝的要因の関与が疑われる。その候補の一つとしてHLA遺伝子の多型性が報告された。今後、被検者の数を増やしてこの点を検討する予定である。
臨床的観点からの成果
HPVワクチン接種後高次脳機能障害が疑われた17名の患者の主症状は記憶力低下35%、集中力低下25%、過睡眠20%であった。この中で脳SPECTの異常が60%、高次脳機能検査であるTMT試験の遅延が60%、WAIS-IIIの処理速度低下が24%にみられた。
ガイドライン等の開発
日本医師会/日本医学会が作成した「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」の編集委員の一員として主任研究者の池田が参加した。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
信濃毎日新聞社主催の健康啓発セミナー“子宮頸がんワクチンを考える”(平成27年度4月26日、長野)において「副反応の相談窓口から」の講演を行った。またTBSのNEWS23で平成28年3月16日に本班の研究成果が放映された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
無し
詳細情報
分類:

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Abe R, Kinoshita T, Ikeda S, et al.
Monoarthropathy or polyarthritis in Adolescent Japanese girls who received Immunization with the Human papillomavirus.
Case Reports In Clinical Medicine , 5 , 109-114  (2016)
10.4236/crcm.2016.53020
原著論文2
Kinoshita T, Ikeda S.
Human papillomavirus (HPV) vaccination: Just the facts.
Intern Med , 54 (14) , 1831-1831  (2015)
10.2169/internalmedicine.54.4805.
原著論文3
Kinoshita T, Ikeda S.
Peripheral sympathetic nerve dysfunction in adolescent japanese girls following immunization with the human papillomavirus vaccine.
Intern Med , 54 (15) , 1955-1955  (2015)
10.2169/internalmedicine.54.4644.
原著論文4
Iwaki H, Nishikawa N, Nagai M, et al.
Pharmacokinetics of levodopa/benserazide versus levodopa/carbidopa in healthy subjects and patients with Parkinson’s disease.
Neurology and Clinical Neuroscience , 3 , 68-73  (2015)
10.1111/ncn3.152
原著論文5
池田修一
子宮頸がんワクチンの副反応と神経障害
BRAIN & NERVE , 67 (7) , 835-843  (2015)

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201517019Z