新型及び季節性インフルエンザワクチン株の選定に資するサーベイランスの強化とゲノム解析に関する研究

文献情報

文献番号
201517018A
報告書区分
総括
研究課題名
新型及び季節性インフルエンザワクチン株の選定に資するサーベイランスの強化とゲノム解析に関する研究
課題番号
H27-新興行政-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小田切 孝人(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 玲子(新潟大学医歯学総合ウイルス学(国際保健学教室))
  • 渡邉 真治(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 中村 一哉(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 高下 恵美(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 藤崎 誠一郎(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 白倉 雅之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 岸田 典子(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 浅沼 秀樹(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 桑原 朋子(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、国内外から収集した臨床検体および流行株の抗原性解析、遺伝子解析、および今季のワクチン接種前後のペア血清を用いたワクチンの有効性の評価から、来シーズン向けのワクチン株の検索と選定を支援する。また、ワクチン製造に使用可能な発育鶏卵分離株の回収を行なう。一方、最近のA(H3N2)ウイルスの性状変化に対応できる解析法導入し、その適正を評価する。さらに、動物由来のインフルエンザウイルスの鳥型レセプターとヒト型レセプターへの親和性を簡便に短時間で鑑別できる検査系を構築し、新型インフルエンザウイルスの出現時にパンデミックリスク評価に迅速に対応できる準備を進める。
研究方法
1)流行ウイルスの抗原性、遺伝子解析
・フェレット感染血清を用いたHI試験、中和法を行った。分離株について遺伝子配列を決定し、アミノ酸解析、進化系統樹解析を実施した。
2)卵分離株の収集
地衛研から分与された2014/15および2015/16シーズンに採取した臨床検体から卵を用いたウイルス分離・増殖を試みた。
3)ヒト血清抗体の測定によるワクチンの有効性の評価
インフォームドコンセントを得た新潟市内の高齢者施設のスタッフと入所者から2015/16シーズン用ワクチン接種前後のペア血清を採取した。HI試験法にて抗体価測定を行った。
4)レセプター特異性鑑別診断系の構築
α2,3またはα2,6結合した2種類の合成シアロ糖鎖ポリマーを用いたSolid-phase binding assayを行った。
結果と考察
1.WHOおよび国内インフルエンザワクチン株選定への貢献
国内およびアジア地域の流行株の解析情報をWHOのワクチン株選定会議へ提出し、国内流行事情が反映されたワクチン株の選定に参画した。また、国内流行株の解析状況、ワクチン候補株の準備状況、WHOワクチン推奨株の情報など、全ての成績と情報を国内ワクチン株の選定会議に提供した。

2.2015/16シーズンの国内外流行株の抗原性、遺伝子系統樹解析
国内外から収集したA(H1N1)pdm09、A(H3N2)、B型流行株について、HI試験法にて抗原性解析を行い、ワクチン株との抗原性の乖離度を評価した。

3.卵分離株の収集の試み
株サーベイランスで検索した流行株の中から、ワクチン製造用にA(H1N1)pdm09亜型2株、A(H3N2)亜型1株、B/ビクトリア系統から1株の卵分離株を確保した。 

4.ワクチン接種前後のペア血清の抗体価測定によるワクチンの有効性の評価
使用したワクチン株に対する抗体価を測定し、ワクチンの免疫原性をもとに2社の国産ワクチンの有効性を評価した。海外ワクチンに比べて国産ワクチンの免疫原性の低さが際立し、特にB型ワクチンの免疫原性の向上の改善が必須。

5.レセプター特異性鑑別診断系の構築
鳥由来ウイルスの場合は、レセプター特異性を識別する迅速診断系Solid-phase binding assay法を確立し、ウイルスリスク評価ツールを準備した。

国内サーベイランス体制については、地衛研との連携と意思疎通の向上を図ることで、円滑にサーベイランスを運用できている。今後は、海外諸国からの検体収集力の改善が課題となる。これを背景に、ワクチン製造に採用できる卵分離株の回収と日本発の分離株を用いた世界標準ワクチンの供給が可能となる。
 A(H3N2)ウイルスの変化により抗原性解析に中和試験法を採用せざるを得ない事態になっている。流行株の抗原変異を適正に判断するためには、センター間で手法の統一を検討する必要があり、WGの中心メンバーとして参画する。
 本年度から日本も4価のインフルエンザワクチンを採用した。本邦のワクチンの免疫原性を検討した結果、B型ワクチンは効果が期待できないレベルでしか抗体誘導できないことを確認した。国内ワクチンが恒常的に低い免疫原性である場合は、現行のワクチンの力価や剤形について見直しが必要になる。
結論
・国内地衛研および周辺諸国のNICと連携して、インフルエンザ株サーベイランスを実施。
・WHOワクチン選定および国内ワクチン選定へのタイムリーな情報提供、支援。
・ワクチン製造に採用可能な卵分離株の供給体制ができた。
・A(H3N2)ウイルスの抗原性解析のための中和試験法の導入と評価を行った。
・4価インフルエンザワクチンの抗体誘導能を評価した。国産ワクチンはB型ウイルスに対して、低免疫原性であった。
・鳥型およびヒト型レセプター親和性評価系の構築が完了した。

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201517018Z