ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究

文献情報

文献番号
201517015A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究
課題番号
H26-新興行政-指定-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(医療法人相生会 臨床疫学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 若葉(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 大藤 さとこ(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 鈴木 幹三(名古屋市立大学看護学部)
  • 原 めぐみ(佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野)
  • 岡田賢司(福岡歯科大学総合医学講座小児科学分野)
  • 森 満(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 星 淑玲(筑波大学医学医療系)
  • 加瀬 哲男(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 中野 貴司(川崎医科大学小児科学)
  • 井手 三郎(聖マリア学院大学)
  • 出口 昌昭(市立岸和田市民病院)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 小笹 晃太郎(公益財団法人放射線影響研究所疫学部)
  • 浦江 明憲((株)メディサイエンスプラニング)
  • 吉田 英樹(大阪市保健所 兼 西成区役所)
  • 入江 伸(医療法人相生会)
  • 都留 智巳(医療法人相生会ピーエスクリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
30,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
【厚労省指導による研究】
1.インフルワクの有効性モニタリング゙を確立し、有効性を要約提示。
2.妊婦におけるインフル健康影響を調査し、定期接種化要否の判断根拠を提示。
【プロジェクト研究】
3.インフルワクの有効性、免疫原性をリスク集団別に提示。
4.DPTワク(百日咳)、および肺炎球菌ワク・インフルワク(高齢者肺炎)の有効性を提示。
5.新規ワクチンの有効性や免疫原性などを提示。
6.医療経済の立場から、費用効果的選択肢(助成額など)を提示。
7.微生物学的基盤に立ち、病原体特性を考慮した堅固な結果を得る。
研究方法
疫学、小児科、臨床薬理学、微生物学等の専門家が「結果と考察」に示す9分科会で共同研究を実施。
結果と考察
主要な結果。
1.定点モニタリング゙分科会
6歳未満児では、PCR陽性インフルに対するワクチン接種の調整ORは0.62(95%CI:0.39-0.98)。有効率は38%、1回・2回接種では31%と41%(2014/15シーズン)。
2.妊婦健康影響調査分科会
入院率(/10,000 woman-months)は非妊娠・流行期1.08、妊娠・流行期2.54。調整率比は4.30。
3.インフルエンザ゙分科会
①健常成人(25-65歳)で接種前HI価<1:40の者はH1:37%、H3:62%、B:14%、うち約半数は接種後HI価≧1:40を獲得。迅速診断A陽性に対するantibody efficacyは70%、ワクチン有効率は42%(2014/15)。
②糖尿病患者(中央値65.5歳)では免疫原性良好(接種後HI価≧1:40の者はH1:76%、H3:76%、B:71%)。BMIが低いと免疫原性低下の可能性(2014/15)。
③高齢者(平均76.7歳)に2シーズン連続2回接種した場合、H3とBに対するHI価はシーズン終了後まで良好に維持(2012/13/14)。
④小学生では、迅速診断A陽性に対するワクチン接種の調整ORは0.56(0.42-0.76)(2014/15)。
4.百日咳分科会
現行DTaPワクチンの有効性に関する多施設共同症例対照研究、および妊婦のワクチン接種に対する意識調査を新規に実施。
5.高齢者肺炎分科会
肺炎に対する調整ORは、肺炎球菌ワク0.76(0.44-1.32)、インフルワク0.79(0.50-1.25)。肺炎球菌性肺炎に限ると、各々0.23(0.08-0.66)、0.65(0.31-1.36)(2009~14)。
6.新規ワクチン分科会
①「ポリオワクの互換性試験」対象児で抗体持続を検討。Salk株TypeⅠに対するsP(NA≧1:8)は、A群(OPV⇒DPT-IPV⇒DPT-IPV⇒DPT-IPV)で1年後:86%、2年後:83%に低下。
②乳幼児で、迅速診断陽性ロタ胃腸炎に対するロタワクの調整ORは0.19(0.14-0.27)。
③海外渡航者(平均36.1歳)におけるsPは、ポリオ(TypeⅠ、Ⅱ、Ⅲ):88%、100%、76%、百日咳(抗PT、抗FHA):61%、76%、ジフテリア:97%、破傷風:94%。DTaP-sIPV接種後には破傷風97%を除き、総て100%。
7.費用対効果分科会
高齢者に対する肺炎球菌ワク接種において、「現行PPSV23接種ストラテジー」と比較した「PPSV23・PCV13選択可能接種ストラテジー」の1QALY獲得あたり増分費用は約37.9万円。定期接種助成対象ワクチンとしてPCV13の導入は費用対効果に優れる傾向。
8.微生物検索・病原診断分科会
インフルワクによる流行株に対する抗体誘導を調査。流行野生株A/Osaka/18/15(H3)に対し、GMT:16(接種前)⇒30(接種後)、sP:26⇒48%; A/Osaka/16/15(H3)に対してはGMT:18⇒27、sP:26⇒52%(2014/15)。
9.広報啓発分科会
米国ACIP勧告2015年版(MMWR 2015;64(30):818)を翻訳出版(「インフルエンザの予防と対策、2015年度版」(財)日本公衆衛生協会)
結論
主要な結論。
1.インフルワクの有効性モニタリング゙(<6歳)で、PCR陽性例に対する有効率は38%。
2.妊婦ではインフル流行期の入院率は非流行期の4.3倍。入院率自体は欧米より低い。
3.糖尿病患者におけるインフルワクの免疫原性は良好、各株に対するsPは70%超。
4.Sabin株のポリオワク4回接種では、Salk株に対する抗体持続が悪い可能性。
5.成人へのDTaP-sIPV接種で、各ワクチン株に対する抗体を誘導するブースターは良好。

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201517015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
36,864,000円
(2)補助金確定額
36,864,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,952,931円
人件費・謝金 6,755,950円
旅費 7,002,208円
その他 6,021,725円
間接経費 6,144,000円
合計 36,876,814円

備考

備考
交付額との差額については、各配分機関での研究経費の利息及び自己資金で執行しております。

公開日・更新日

公開日
2017-04-18
更新日
-