予防接種の費用対効果の評価に関する研究

文献情報

文献番号
201517012A
報告書区分
総括
研究課題名
予防接種の費用対効果の評価に関する研究
課題番号
H27-新興行政-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
池田 俊也(国際医療福祉大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 中(東京大学大学院 薬学系研究科)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,674,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 費用対効果の評価は様々な前提条件に基づいた長期的推計を行う必要があり、前提条件を変えると結果に影響を与える。従って、複数のワクチンについて評価結果を比較し政策立案等の意思決定に利用する場合には、研究手法の標準化を図る必要がある。費用対効果評価をワクチン政策に利用している国々では費用対効果評価に関する研究ガイドラインが策定されている。我が国では平成22年度厚生労働科学研究(廣田班)において費用対効果評価の標準的指針が提案されたが、その後、本研究領域の研究の進展が著しいことから、政策利用にあたっては新たな研究ガイドラインの作成が必要とされている。
 厚生労働省により平成26年3月に発表された予防接種基本計画では、予防接種に関する施策の基本的な報告として、各種ワクチンの安全性・有効性及び「費用対効果」について、法的位置付けも含めて、評価及び検討を行うこととしており、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、個別ワクチンの費用対効果に関する分析結果を意思決定の際の重要なエビデンスの一つとして活用することが求められている。本研究において研究ガイドラインを作成し、それに基づいて各種ワクチンの費用対効果を実際に分析することにより、新規ワクチンの定期接種化の可否や優先順位における議論に資することができ、わが国におけるワクチン行政に多大な貢献を行うことができると考える。
 そこで今年度研究では、ワクチンの経済評価手法の標準化を意図した研究ガイドラインの策定に向けて、ワクチンの経済評価手法の標準化に必要な方法論の整理と分析事例の先行研究のレビューを行うこととした。
研究方法
(1) 肺炎球菌ワクチンの分析事例を収集し、分析手法のばらつきについて検討を行った。
(2) ワクチンの費用対効果評価における生産性損失の組み入れ法、割引率の考え方、アウトカム指標について、関連文献を収集し、論点整理を行った。
(倫理面への配慮)公開資料のレビューであり、倫理的な問題はない。
結果と考察
結果
(1) 肺炎球菌ワクチンの分析事例のレビュー
 生産性損失の考慮の有無および算定方法、割引率の値、アウトカム指標については分析手法が様々であり、結果の相互比較は困難であることが明らかとなった。
(2) 生産性損失の組み入れ法、割引率の考え方、アウトカム指標に関する論点整理
 生産性損失については、ガイドラインに記載されている内容と、実際の運用状況にはやや乖離があること、推計方法が非常に多岐にわたっていることが明らかになった。
 割引率については、費用と効果を同率で指数型関数を用いて割り引くという基本的な方法以外にも、様々なものが提案されているが、現在のところ実際に意思決定のための分析に用いられている例は少なく、今後の検討が必要なものが多いことが明らかとなった。
 アウトカム指標については、ワクチンの費用対効果評価を医療資源の配分上の意思決定に活用する場合、疾患や技術が異なっても共通して用いることができるアウトカム指標であるQALYやDALYの使用が望ましいが、子供を対象にQOL値を測定する場合、対象者の理解力においてハードルがあること、年齢によるリスクの捉え方の違いなどに関する基礎的な研究が必要であること、代理人による評価は対象者の評価と乖離する可能性があることなどの問題点が明らかとなった。
考察
 これまで報告されているワクチンの経済評価研究では分析手法が様々であり、結果の相互比較は困難な状況にあることから、生産性損失の組み入れ法、割引率の考え方、アウトカム指標に関する今回の論点整理を踏まえ、我が国の状況にあった研究ガイドラインの策定を進める必要があると考えられた。
結論
 ワクチンの経済評価手法の標準化を意図した研究ガイドラインの策定に向けて、ワクチンの経済評価手法の標準化に必要な方法論に関する論点整理を行った結果、これまで報告されているワクチンの経済評価研究では分析手法が様々であり、結果の相互比較は困難な状況であった。生産性損失の組み入れ法、割引率の考え方、アウトカム指標に関する今回の論点整理を踏まえ、我が国の状況にあった研究ガイドラインの策定を進める必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201517012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,775,000円
(2)補助金確定額
4,775,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 698,805円
人件費・謝金 0円
旅費 1,196,963円
その他 1,780,823円
間接経費 1,101,000円
合計 4,777,591円

備考

備考
研究実施上必要な消耗品が不足したため、自己負担2591円により消耗品を購入した。

公開日・更新日

公開日
2017-05-19
更新日
-