国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークの強化に関する研究

文献情報

文献番号
201517005A
報告書区分
総括
研究課題名
国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークの強化に関する研究
課題番号
H25-新興-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 甲斐 明美(東京都健康安全研究センター)
  • 野崎智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 加藤 はる(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 駒瀬 勝啓(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 御手洗 聡(公益財団法人 結核予防会 結核研究所 抗酸菌部)
  • 森川 茂(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 藤本 嗣人(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
13,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 新型インフルエンザなど国民生活に脅威となる感染症のリスクは常に存在し、実際にアウトブレイクが発生している。しかし、現行では国全体として危機的感染症に対処する機関は存在しない。感染症の危機管理のためには、統一的に病原体を特定し、その病原体のサーベイランスにより感染拡大を把握するような、法的に整備されたシステムが必須である。危機発生時に直ちに対応できる病原体診断を全国規模で実施できる体制が必要であり、その基盤となる全国ラボネットワークを構築・維持することは危機管理上必須である。
 本研究班では、国立の感染研と各地方自治体の地方衛生研究所が相互に補完協力することを前提として、危機的な感染症の発生に対処する体制を構築維持する。ウイルス・細菌・真菌・寄生虫などあらゆる病原体を想定し危機的感染症に備える研究を実施する。
 本研究の成果は、全国の行政機関における病原診断能力の向上と維持につながり、わが国における精度の高い感染症発生動向として報告され、施策に直接反映される。また、インフルエンザ等のパンデミックにおいて流行状況を把握する必要が生じた場合、本研究成果の活用により、全国での病原体検査実施が迅速かつ円滑に行われ、また流行状況の正確な把握が可能になり、パンデミック対策等の危機管理に資する。
研究方法
 地方衛生研究所と感染研が共同で実施すべきレファレンス活動として、国立感染症研究所の病原体担当職員と、地方衛生協議会全国協議会の感染症対策部会の委員が研究を実施した。検査体制について担当者レベルで協議し、季節性インフルエンザSOPとポリオ/エンテロウイルス検査SOP に含む項目の検討を行った。
 真菌検査について、コクシジオイデス属真菌等のBSL3に分類される真菌の検査を実施する上での実践的なマニュアルを作成した。作成したマニュアルに基づき検査を行い、内容について検証を行い、必要に応じて改訂を重ねた。
 各病原体レファレンスセンター活動としては、1)大腸菌・レジオネラ・レンサ球菌、2)カンピロバクター、3)寄生虫、4)ジフテリア・ボツリヌス、5)フラビウイルス・トガウイルス、6)リケッチア、7)エンテロウイルス、8)麻疹・風疹、9)百日咳、10)抗酸菌、11)動物由来感染症、12)HIV関連感染症、13)アデノウイルス、を設定した。それぞれの病原体について、全国で分離された株の型別、薬剤耐性株の出現状況調査、講習会・技術研修会の実施、検査法の検討を行った。また、レファレンス活動に必要となる病原体・細菌毒素などの診断法・疫学解析法の確立および評価を行った。
結果と考察
 各レファレンスセンターで取り扱う病原体について、遺伝子検出系・血清診断・型別法の開発・改良・地衛研への配布を行い、各レファレンスセンターを中心とした地衛研の検査体制の強化に貢献した。病原体検査法のマニュアル改訂・研修会・講習会を行うことによって、検査技術の維持・向上に貢献した。いくつかの病原体について疫学調査を行い、全国発生動向・集団発生事例の監視を可能にした。
 検査マニュアルSOP化の一環として、真菌症検査の中でも通常の施設では困難なBSL3に分類される真菌を取り扱うためのマニュアルの作成および検証を行った。BSL3の病原体検査における安全性の確保および品質・精度の向上のためにも病原体取扱マニュアルの作成は基本である。他の飛散しやすく検査室汚染に繋がりやすい病原体でも作成され、病原体検査の安全性確保のための基盤となることが期待される。
 季節性インフルエンザとポリオウイルス検査の各種技術管理文書の内容を検討し、各地衛研の検査体制の違いを認識する機会となった。今後、他疾患の検査体制についても施設横断的に情報共有することは必要と考えられる。
結論
 全国統一的な検査体制維持構築のために、病原体検出マニュアルのアップデート・整備を継続、地衛研での感染症検査体制を維持するための技術管理文書を作成、各病原体の遺伝子検出系・血清診断・型別法の開発・改良・疫学調査・標準品の作成供給、検査技術の継承のため講習を実施した。
 全国の公的な病原体検査ラボネットワークの機能向上、各ブロックのレファレンスセンターを中心とした地衛研の検査体制を維持するために専門性を考慮した人員配置と組織構築に取り組むことにより、臨床現場や危機的感染症に即した迅速対応と情報発信が可能となり、患者のみならず国民の福祉に資する。

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201517005B
報告書区分
総合
研究課題名
国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークの強化に関する研究
課題番号
H25-新興-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 甲斐 明美(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 野崎智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 加藤 はる(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス 第二部)
  • 駒瀬 勝啓(国立感染症研究所 ウイルス 第三部)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 御手洗 聡(公益財団法人結核予防会 結核研究所 抗酸菌部)
  • 森川 茂(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 藤本 嗣人(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 新型インフルエンザなど、国民生活に脅威となる新たな感染症が常に発生している。しかし、現行では国全体として危機的感染症に対処する機関はない。感染症の危機管理のためには、統一的に病原体を特定し、その病原体のサーベイランスにより感染拡大を把握するような、法的に整備されたシステムが必須である。危機発生時に直ちに対応できる病原体診断を全国規模で実施できる体制が必要であり、その基盤となる全国ラボネットワークを構築・維持することは危機管理上必須である。
 本研究班では、国立の感染研と各地方自治体の地方衛生研究所が相互に補完協力することを前提として、危機的な感染症の発生に対処する体制を構築維持する。ウイルス・細菌・真菌・寄生虫などあらゆる病原体を想定し危機的感染症に備える研究を実施する。
 本研究の成果は、全国の行政機関における病原診断能力の向上と維持につながり、わが国における精度の高い感染症発生動向として報告され、施策に直接反映される。また、インフルエンザ等のパンデミックにおいて流行状況を把握する必要が生じた場合、本研究成果の活用により、全国での病原体検査実施が迅速かつ円滑に行われ、また流行状況の正確な把握が可能になり、パンデミック対策等の危機管理に資する。
研究方法
 地方衛生研究所と感染研が共同で実施すべきレファレンス活動として、国立感染症研究所長をはじめとする感染研のスタッフと、地方衛生協議会全国協議会会長、および、感染症対策部会の委員が協議を行った。
 真菌検査について、病原体検査標準作業手順書(SOP)およびコクシジオイデス属真菌等のBSL3に分類される真菌の検査を実施する上での実践的なマニュアルを作成した。実際に検査を行い、内容について検証を行い、必要に応じて改訂を重ねた。
 各病原体レファレンスセンター活動としては、1)大腸菌・レジオネラ・レンサ球菌、2)カンピロバクター、3)寄生虫、4)ジフテリア・ボツリヌス、5)フラビウイルス・トガウイルス、6)リケッチア、7)腸管ウイルス感染症(下痢症ウイルス)、8)腸管ウイルス感染症(エンテロウイルス)、9)麻疹・風疹、10)百日咳、11)抗酸菌、12)動物由来感染症、13)HIV関連感染症、14)アデノウイルス、を設定した。それぞれの病原体について、全国で分離された株の型別、薬剤耐性株の出現状況調査、講習会・技術研修会の実施、検査法の検討を行った。また、レファレンス活動に該当する病原体・細菌毒素などの診断法・疫学解析法の確立および評価を行った。
結果と考察
 感染研と地衛研の間で常時連携して特定の疾病に対応する機能的な枠組みとしてレファレンスセンターをおくこととし、レファレンスセンターの概要について明文化したことにより、わが国の病原体検査が円滑に実施できることが期待される。実際に運用し修正が必要な事項等が明らかになれば、協議の上変更が可能と考える。また、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症及び薬剤耐性アシネトバクター感染症が全数把握疾患となり、薬剤耐性細菌レファレンスセンター(仮称)の設置に向けて準備を行った。
 各レファレンスセンターで取り扱う病原体について、遺伝子検出系・血清診断・型別法の開発・改良・地衛研への配布を行い、各レファレンスセンターを中心とした地衛研の検査体制の強化に貢献した。病原体検査法のマニュアル改訂・研修会・講習会を行うことによって、検査技術の維持・向上に貢献した。いくつかの病原体について疫学調査を行い、全国発生動向・集団発生事例の監視を可能にした。
感染研で運用改訂された真菌検査SOPが他の病原体で作成され検査の精度管理基盤となることを期待する。BSL3真菌を取り扱うためのマニュアルは、他の飛散しやすく検査室汚染に繋がりやすい病原体でも作成され、病原体検査の安全性確保のための基盤となることが期待される。 
結論
 全国統一的な検査体制維持構築のために、病原体検出マニュアルのアップデート・整備を継続、地衛研での感染症検査体制を維持するための技術管理文書を作成、各病原体の遺伝子検出系・血清診断・型別法の開発・改良・疫学調査・標準品の作成供給、検査技術の継承のため講習を実施した。
 全国の公的な病原体検査ラボネットワークの機能向上、各ブロックのレファレンスセンターを中心とした地衛研の検査体制を維持するために専門性を考慮した人員配置と組織構築に取り組むことにより、わが国で発生する危機的感染症に即した迅速対応と情報発信が可能となり、患者のみならず広く国民の福祉に資する。

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201517005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地方衛生研究所と感染研が共同で特定の疾病に対応する機能的な枠組みとしてレファレンスセンターを置くこととし、その概要について明文化した。レファレンス活動に該当する病原体・細菌毒素などの診断法・疫学解析法の確立および評価を行った。遺伝子検出系・血清診断・型別法の開発・改良と地衛研への配布を行い、各レファレンスセンターを中心とした地衛研の検査体制の強化に貢献した。以上より、わが国の病原体検査が円滑に実施できることが期待される。
臨床的観点からの成果
レファレンスセンターの対象として設定した各病原体について、全国で分離された株の型別、薬剤耐性株の出現状況調査、講習会・技術研修会の実施、検査法の検討を行い、検査技術の維持・向上に貢献した。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症及び薬剤耐性アシネトバクター感染症が全数把握疾患となり、薬剤耐性細菌レファレンスセンター(仮称)の設置に向けて準備を行った。
ガイドライン等の開発
以下の病原体検出マニュアルの作成・更新を行った。コクシジオイデス症、レジオネラ症、A群溶血レンサ球菌、エキノコックス症及び消化管寄生蠕虫症、チクングニア熱、日本脳炎、デング熱、ジカウイルス感染症、ロタウイルス、麻疹、アデノウイルス。
その他行政的観点からの成果
1.IHR(国際保健規則)に準じた病原体検査の外部精度管理に関する事業実施の基盤となった。
2.季節性インフルエンザとポリオウイルス検査を例に地衛研における検査に関する各種管理文書を作成した(検査施設における病原体等検査の業務管理要領(健感発1117 第2号 平成27年11月17日)の標準作業書ひな形(別添 1-1,1-2,1-3,別添 2-1,2-2,別添 3,別添 4,別添 5-1,5-2,5-3,別添 6)。これらは法律改正に伴う地方自治体の文書管理に有益であったと考える。
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
27件
原著論文(英文等)
52件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
70件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
12件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
病原体検出マニュアル http://www.nih.go.jp/niid/ja/reference.html

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
2021-06-01

収支報告書

文献番号
201517005Z