地方自治体との連携による新型インフルエンザ等の早期検出およびリスク評価のための診断検査、株サーベイランス体制の強化と技術開発に関する研究

文献情報

文献番号
201517001A
報告書区分
総括
研究課題名
地方自治体との連携による新型インフルエンザ等の早期検出およびリスク評価のための診断検査、株サーベイランス体制の強化と技術開発に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小田切 孝人(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 皆川 洋子(愛知県衛生研究所)
  • 佐藤 裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター )
  • 影山 努(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 今井 正樹(東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,284,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. 地衛研におけるPCR検査の精度管理と向上のため、全国規模での第3回EQAを実施。
2. インフルエンザウイルス株サーベイランス体制(ウイルス分離・培養精度)の強化と改善のための技術支援の実施。
3. 計算科学によるハイリスク変異株の同定と評価法の改良を進める。これにより、危機管理体制を補完する基盤の強化ができる。
研究方法
1. コア地衛研(レファレンスセンター)6機関に加え、助言者(サポート地衛研)5機関 計11機関からなるコア・サポート地衛研組織と連携し、全国74カ所の地方衛生研究所に対して、PCR検査のEQA実施要項、検査方法等に関するアンケートを配布。EQA試験パネルサンプルの配布をし、EQAを実施した。
2. 全国地衛研を対象に、インフルエンザウイルス分離体制、株サーベイランスの現状、要望に関する第2回アンケート調査を実施した。
3. ウイルスHA遺伝子の機能的構造解析基盤の強化と変異予測系の改良を行った。
結果と考察
1. 検査、教育訓練等の手順書などの文書整備を進めるため、書式のひな形を作成し、全国地衛研に参考資料として提示した。
2.  全国73カ所の地方衛生研究所を対象にしてEQAを実施した。過去2年間で経験した問題点や改善要望を反映させて、今年度用には「 第3回全国地衛研外部精度管理(EQA2015)実施結果について」、「精度管理と問題時のトラブルシューティングについて」、「トラブルシューティング時のフローチャート」、「EQA2015の結果およびアンケートの集計」を配布し、それに基づいてEQAを実施した。
3. ウイルス分離培養技術の精度向上を目指して、全国80ヵ所の地衛研を対象に平成26年度の第1回目アンケート調査に引き続き、今年度に第2回目を実施し、77ヵ所(46都道府県、31政令指定都市、中核市・特別区)から回答が得られた。
 分離効率に関しては、75%以上の高い効率で分離している研究機関が68機関の半数 (34機関)を占めた。一方、前回の調査から改善の見られていない地衛研が特定された。これらの機関から研修の要望があった2機関において、それぞれの機関で実地研修を行った。その結果、2機関に共通していたことは、前任者からの引継ぎがうまく行っていなかったこと、また担当者に経験者がいなかったことが挙げられた。
4. MD simulationの実施における環境整備
MD simulationの実施のために対象分子とその変異情報を国立感染症研究所インフルエンザ研究センター第一室から随時入手できる体制を整備した。MDの高速計算を可能とする高性能サーバの確保のために、北海道大学・人獣共通感染症リサーチセンターのバイオインフォマティクス部門と共同研究体制を構築し、当該施設が所有するスーパーコンピュータを使用してMD simulationを実施し、成果を共有することが可能となった。

・地衛研における検査担当者の世代交代があっても息長く検査の精度を維持するためには、今回の法改正が強力な後ろ盾となる。今後、EQA企画機関と実施機関双方の負担軽減策を検討すべきかも知れない。
・EQAの実施記録や次世代の後継者に技術を継承するためには、記録文書の整備と保管、引継ぎ体制の整備も継続的に進める必要があり、本研究班から提示した書式のひな形を有効活用して、全国一律に整備を進める必要がある。
・株サーベイランスについては、定期的に感染研と情報交換をしてウイルスの性状変化に適正に対処できる技術の維持が必要である。
・遺伝子配列情報からMD simulationを実施し、ウイルス変化予測およびリスク評価を実施してきたが、より取扱量と分析結果を得るまでの時間短縮のためにスーパーコンピュータを駆使した環境整備に着手したが、WHOもこの手法を導入するため、本研究からの成果は、WHOおよび国内のワクチン株選定法の改良に貢献できる。
結論
コア・サポート地衛研-感染研共同研究体制第2期の最終年度を迎えて、今後の存続が期待されている。その可否は厚生労働行政に直結する研究への予算配分次第である。
・全国地衛研を対象としたEQAが3度実施され、PCR検査技術の大幅な改善と均てん化が達成された。
・EQAの定着に伴ってそれらに必要な文書整備がすすめられた。
・ウイルス分離・培養環境整備と問題解決のための第2回アンケート調査を実施した。要望に応じて、実地研修を実施し、改善への策を講じた。
・MD simulationの実施の高速化への環境整備として、北大との共同研究体制を構築し、WHOワクチン株選定会議への貢献を視野に準備を進めた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201517001B
報告書区分
総合
研究課題名
地方自治体との連携による新型インフルエンザ等の早期検出およびリスク評価のための診断検査、株サーベイランス体制の強化と技術開発に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小田切 孝人(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 皆川 洋子(愛知県衛生研究所 )
  • 佐藤 裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
  • 影山 努(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 今井 正樹(東京大学医科学研究所 感染・免疫部門ウイルス感染分野)
  • 齋藤 玲子(新潟大学医歯学総合 国際保健学教室)
  • 高下 恵美(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 藤田 信之(独立行政法人製品評価技術基盤機構 ゲノム情報解析学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. 地衛研におけるPCR検査の精度管理と向上のため、H25-27 年度に全国規模で3回EQAを実施。
2. インフルエンザウイルス株サーベイランス体制(ウイルス分離・培養精度)の強化と改善のためH26-27年度に実態調査と技術支援の実施。
3. 計算科学によるハイリスク変異株の同定と評価法の強化と改良を進める。遺伝子情報からのリスク評価への対応をする。
研究方法
1. PCR検査のEQA実施要項、検査方法等に関するアンケートを配布。3年にわたり改訂したEQA試験パネルサンプルの配布と試験の実施。
2. インフルエンザウイルス分離体制、株サーベイランスの現状、要望に関するアンケート調査を2年間にわたり全国地衛研を対象に実施した。
3. ウイルスHA遺伝子の機能的構造解析基盤の強化と変異予測系の改良を行った。
4. 薬剤感受性試験の実施と大量遺伝子解析系の構築を行った。
結果と考察
1. 全国73カ所の地方衛生研究所を対象にして3回EQAを実施した。また、改正感染症法に対応するために、検査、教育訓練等の手順書などの文書整備を進めた。
2. ウイルス分離培養技術の精度向上を目指して、全国80ヵ所の地衛研を対象に平成26-27年度の2回実態調査を実施。ウイルス分離技術の指導が必要な地衛研を特定して、それぞれの機関で実地研修を行った。
3. MD simulationの実施のために対象分子とその変異情報を国立感染症研究所インフルエンザ研究センター第一室から随時入手できる体制を整備した。MDの高速計算を可能とする高性能サーバの確保のために、北海道大学・人獣共通感染症リサーチセンターのバイオインフォマティクス部門と共同研究体制を構築し、当該施設が所有するスーパーコンピュータを使用してMD simulationを実施し、成果を共有することが可能となった。
4. 平成26年度に札幌市周辺で薬剤耐性株の地域流行を捉え、遺伝子構造解析から流行拡大のリスクを評価し、地域限局的に終息することを予測した。実際に全国流行は無かった。

・改正感染症法の平成28年度施行を目指して、PCR検査EQAを全国規模で3回実施した。これにより、全国的なインフルエンザPCR検査の「質」の向上が確保された。インフルエンザウイルス検査のEQAは地衛研組織に定着すると思われるが、担当者の世代交代においても息長くこの体制を維持するためには、今回の法改正が強力な後ろ盾となる。また、EQAの実施記録や次世代の後継者に技術を継承するためには、記録文書の整備と保管、引継ぎ体制の整備も継続的に進める必要があり、本研究班から提示した書式のひな形を有効活用して、全国一律に整備を進めてもらいたい。
・株サーベイランスの根幹は原因ウイルスの分離回収を効率よく実施できる環境整備と担当者の質の向上、教育訓練が不可欠である。PCR検査精度の整備には遅れたが、これも2回にわたるアンケート調査で実態把握と教育訓練の必要な機関を特定し、現地対応で解決へ向けた方策を講じた。今後は、定期的に感染研と情報交換をしてウイルスの性状変化に適正に対処できる技術の維持に努めたい。
・疫学情報とリンクさせた遺伝子配列情報からMD simulationを実施し、ウイルス変化予測およびリスク評価を実施してきたが、より取扱量と分析結果を得るまでの時間短縮のためにスーパーコンピュータを駆使した環境整備に着手した。WHOはワクチン株選定にこのシュミレーション法を本格的に導入することを決め、H28年度から動き出す。本研究からの成果は、それを先取りしており、WHOおよび国内のワクチン株選定法の改良に貢献していきたい。

結論
コア・サポート地衛研-感染研共同研究体制第2期の最終年度を迎えて、今後の存続が期待されている。その可否は厚生労働行政に直結する研究への予算配分次第である。
・全国地衛研を対象としたEQAが3度実施され、PCR検査技術の大幅な改善と均てん化が達成された。
・EQAの定着に伴ってそれらに必要な文書整備がすすめられた。
・ウイルス分離・培養環境整備と問題解決のための第2回アンケート調査を実施した。要望に応じて、実地研修を実施し、改善への策を講じた。
・MD simulationの実施の高速化への環境整備として、北大との共同研究体制を構築し、WHOワクチン株選定会議への貢献を視野に準備を進めた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201517001C

収支報告書

文献番号
201517001Z