社会福祉施設・事業所等における農作業の取組実態全国調査

文献情報

文献番号
201516047A
報告書区分
総括
研究課題名
社会福祉施設・事業所等における農作業の取組実態全国調査
課題番号
H27-身体・知的-指定-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
石田 憲治(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 農村基盤研究領域)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障がい者の生活支援や就労支援の視点から、全国の社会福祉施設・事業所における農作業の導入や実践の実態を明らかにするとともに、農業と福祉の連携推進や福祉事業所が農業に参入する際に支障となる要因や解決課題を明らかにする。農業と福祉の連携には、地域における共生社会の基盤醸成という役割も期待される。近年では、障がい者の健康面からも農作業の利点が再認識され、障害者総合支援法のもとでの施設外就労制度を活用した農家の畑や農園等での福祉事業所利用者による農作業の取組も進みつつある。しかし、全国的規模による実態は定量的かつ体系的に十分把握されておらず、農作業への潜在的需要も含めて、福祉事業所の農作業取組実態と直面する課題解明に取り組んだ。
研究方法
質問紙調査と福祉事業所への聞き取り調査を行った。質問紙調査では、農作業の実施状況別(実施中/休止中/取組なし)に区分した設問を配置するとともに、農作業の取組を開始した後に中断した事業所や農作業に取り組んでいない事業所を想定した設問も含めることとし、全国約3,000の調査対象事業所を農作業の取組実績の有無に関係なく無作為抽出した。聞き取り調査については、調査票からは得られない現地での農作業取組実態、畑や施設の状況、地域住民、行政や関係団体等との関係性を施設長や支援員らから聞き取り調査した。
結果と考察
質問紙調査に回答が得られた1,531事業所(有効回収率47.8%)の約55%が週に1~2回以上の頻度で農家等から借地した畑などで農作業に取り組んでいること、取組目的は主に利用者の工賃確保と生きがいの2つで、指導人材や資金不足、時間的制約が主な支障要因であることを明らかにした。調査対象とした福祉事業所の運営法人種別は、約7割が社会福祉法人で最多を占め、次いで特定非営利活動法人が約2割であった。農作業を中断した福祉事業所では、利用者の高齢化による体力の低下が主な理由である。農作業の取組を継続してきた福祉事業所には、事業所の規模や立地環境などの特徴に適合した取組と運営方法を試行錯誤しながら確立してきた共通点がみられた。現地調査での聞き取り結果や調査票の自由記述欄には、農作業を通した地域社会との関係構築や耕作放棄地等の管理を通した社会貢献に類する言及も多く、農業生産活動の成果に囚われない新しい農作業の価値に福祉事業所が着目し始めており、地域や行政施策による支援の社会的重要性が考察された。
結論
無作為抽出による全国の福祉事業所を対象とした農作業の取組に関する調査から、半数以上の事業所が利用者の自立を目指した生活支援や就労支援の一環として農作業に取り組んでおり、未経験の事業所にも農作業の取組に潜在的な需要があることが示唆された。規模や立地環境など個々の事業所の特徴に適合した農作業の取組や運営方法を確立することや、農作業の取組による地域社会との関係構築、遊休農地の管理による社会貢献など、農業と福祉の連携推進を図る上での新しい農作業の価値づくりが福祉事業所にも期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201516047C

収支報告書

文献番号
201516047Z