腎機能障害者の生活活動性を維持するための安全で効果的な腹膜透析法の普及のための対策

文献情報

文献番号
201516046A
報告書区分
総括
研究課題名
腎機能障害者の生活活動性を維持するための安全で効果的な腹膜透析法の普及のための対策
課題番号
H27-身体・知的-指定-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
猪阪 善隆(大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 新田 孝作 (東京女子医科大学 第四内科学分野)
  • 中元 秀友(埼玉医科大学 総合診療内科)
  • 伊藤 恭彦(名古屋大学大学院医学系研究科 腎不全総合治療学寄附講座)
  • 中山昌明(福島県立医科大学 腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科学講座)
  • 杉山 斉(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 慢性腎臓病対策 腎不全治療学)
  • 鶴屋 和彦(九州大学大学院 包括的腎不全治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性透析患者のうち腹膜透析(PD)患者は2.9%に過ぎない。そこで本研究では、腎機能障害者の生活活動性を維持するための安全で効果的な腹膜透析法の普及のための対策を講じる。まず、腎代替療法としてPD療法を選択上で障壁となる問題点を明らかにするためのアンケート調査を行ったうえで、高齢者の在宅医療を推進するための患者教育補助ツールを開発するとともに、高齢者対策のサポートシステム、地域連携モデルを確立する。また施設間で連携してPD・血液透析(HD)併用療法を行う管理連携パスの使用の有効性も検証する。さらに、日本透析医学会統計調査委員会によるPDレジストリや大学病院などを中心としたPDレジストリにより、PD患者の実態把握や予後に関与する因子のエビデンスを確立する。
研究方法
①PD療法を選択するうえでの障壁なる問題点の明確化
慢性透析患者のうちPD患者は2.9%に過ぎない。そこで、全国の保存期腎不全医療や透析医療に関わるスタッフや透析施設へのPD療法に関するアンケート調査を行い、腎代替療法としてPD療法を選択上で障壁となる問題点を明らかにするための調査を行い、PD療法を選択するうえでの障壁となる問題点を明確化する。
②PD療法推進のための方策の構築および高齢者支援対策
透析施設等へのアンケート調査をもとにPD療法推進のための方策を探る。高齢透析患者の在宅医療をより推進するためのPD療法指導関連ツールの作成し、全国多施設で共有できるようなツールを構築する。
③PD・HD併用療法における連携パスの効果の検討
PD・HD併用療法管理連携パスを作成使用し、連携パス使用による透析の管理状況及び合併症等を患者毎の連携パス使用事例を集計、分析、評価する。
④PD患者レジストリからの予後決定因子の探索
日本透析医学会統計調査委員会のPDレジストリより、PD 患者の長期予後、特に継続率、生存率、さらに合併症発症率等を検討する。また、大学病院を中心としてPD患者レジストリをもとに、PD患者の予後決定因子を検討する。
結果と考察
①PD療法を選択するうえでの障壁なる問題点の明確化
全国の保存期腎不全医療や透析医療に関わるスタッフへのPD療法に関するアンケート調査により、PDを推進する上での障壁として、医療スタッフ(医師、看護師など)が不足していること、PD診療を行う時間的余裕がないことが圧倒的多数を占めた。さらに、ヘルパー等の医療支援スタッフによるバック交換の認可がPD普及につながるという意見も多くみられた。
②PD療法推進のための方策の構築および高齢者支援対策
高齢者のPD療法導入にあたりより安全にかつ能率的に行える患者教育用補助ツール、パンフレットを作成することにより、高齢者でもバック交換操作が容易となった。
多職種を含めたPD 支援チーム体制の構築を推進することによって、独居老人を含めた高齢者の在宅におけるPD治療が可能となることを確認した。また、PD導入時より訪問看護を導入することで、PD導入後1年間の出口部感染発症率が改善し、感染の程度も軽症化の傾向であった。
③PD・HD併用療法における連携パスの効果の検討
PD・HD併用療法を行っているPD患者を対象としたPD・HD併用療法管理連携パスを作成使用し、その効果を検証するための臨床研究を行い、パスの効用が有効であることが確認できた。
④PD患者レジストリからの予後決定因子の探索
大学病院を中心とした多施設前向きコホート研究を用いて予後の検討を行った。60ヶ月間の生存率は81.0%、PD継続率は49.4%であり、良好な値であった。65歳以上の死亡患者の死因は虚血性心疾患と悪性腫瘍が多い一方で、PD関連合併症は差がなく、離脱の原因についても、PD管理上問題となりやすい溢水・透析不全・EPSおよびその疑い・他のPD関連合併症いずれも高齢者と若年者で明らかな傾向を認めなかった。しかし、PD離脱の原因において、PD関連再発性腹膜炎および社会的理由においては明らかに65歳以上で頻度が高く、65歳以上のPD患者における手技の補助や見守り、社会的サポートの必要性が示唆された。
結論
PD導入の障壁となる問題点を明らかとし、高齢者の在宅医療推進のため、患者教育用補助ツールや支援システムを構築した。PD・HD併用療法管理連携パスの有用性が明らかとなった。PD患者レジストリを用いて予後を検討し、高齢PD患者へのサポート体制の必要性を明らかとした。

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201516046C

収支報告書

文献番号
201516046Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,992,000円
(2)補助金確定額
4,992,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,150,743円
人件費・謝金 0円
旅費 111,140円
その他 578,117円
間接経費 1,152,000円
合計 4,992,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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