文献情報
文献番号
201516040A
報告書区分
総括
研究課題名
訪問による自立訓練(生活訓練)を活用した地域移行及び地域生活支援の在り方に関する研究
課題番号
H27-身体・知的-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 香(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
- 吉田 光爾(日本社会事業大学 社会福祉学部)
- 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会復帰研究部)
- 辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
- 伊藤順一郎(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会復帰研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は障害福祉領域において実践されている多様な訪問(アウトリーチ)サービスによって、利用者の生活自立度等がどう変化したのかを調査することにより、効果的な支援プログラムの構築に寄与することを目的とした。
研究方法
本研究を実施するにあたり、対象を精神障害、知的障害、発達障害、高次脳機能障害としたが、精神障害以外の障害領域では、実態として訪問サービスを自立訓練という事業の枠組みで実施している実績が少なく、本調査の対象も自立訓練(生活訓練)及び何らかの訪問(アウトリーチ)サービスを提供している事業所及びそのサービスを利用した人とした。
調査においては、前述した障害者を対象として訪問(アウトリーチ)によるサービス等を実施してきた実績のある事業所に協力を依頼した。数量な調査としては、協力事業所において、2013年1月~12月に何らかの訪問(アウトリーチ)サービスを実施していた利用者約104名を対象とし、記録等からサービス終了時あるいはサービスが継続している場合は現在のアウトカムを測定し、利用者の変化の分析を行った。本研究は単年度の研究であり、調査期間の限界から後ろ向き追跡調査とせざるを得なかった。さらに、各障害領域で実施されている訪問(アウトリーチ)サービスの内容や方法、効果を明らかにするために、それぞれの事業所の中で取り組まれた事例に関する調査を実施した。
調査においては、前述した障害者を対象として訪問(アウトリーチ)によるサービス等を実施してきた実績のある事業所に協力を依頼した。数量な調査としては、協力事業所において、2013年1月~12月に何らかの訪問(アウトリーチ)サービスを実施していた利用者約104名を対象とし、記録等からサービス終了時あるいはサービスが継続している場合は現在のアウトカムを測定し、利用者の変化の分析を行った。本研究は単年度の研究であり、調査期間の限界から後ろ向き追跡調査とせざるを得なかった。さらに、各障害領域で実施されている訪問(アウトリーチ)サービスの内容や方法、効果を明らかにするために、それぞれの事業所の中で取り組まれた事例に関する調査を実施した。
結果と考察
訪問(アウトリーチ)サービスとサービス利用およびアウトカムとの関連に関しては、サービス開始時と比較し、追跡時には居宅介護のサービス利用者数が有意に増加していた。追跡時に居宅介護を利用していた29名のうち、22名が研究期間内に生活訓練を利用していたが、そのうち9名は追跡時に利用しておらず、居宅介護だけを利用していた。観察的なアウトカムについては、「相談機関とのつながり」や「服薬状況」で有意な改善がみられた。LASMIについても、全ての下位尺度で有意な改善がみられた。また、生活支援の必要度に関するアウトカム調査の結果としては、対象とした39項目の生活支援の領域のうち32項目で開始時に比べ、追跡時で支援の必要性が有意に低下していた。
訪問支援のプロセスに関しては、サービス利用期間中の対象者に対するコンタクト情報を収集し、そのサービス内容との関連を調査した。支援期間・コンタクト回数合計・コンタクト時間合計(分)では、知的障害の支援期間・回数・時間合計が少なくなっていた。支援課題としては知的障害では「生活基盤(28.9%)」、「社会技能・社会資源利用(28.9%)」が多いのに対し、精神障害・発達障害・高次脳機能障害では「日常生活(精神38.3%、発達31.6%、高次脳機能39.9%)」が多くなっていた。支援における関わりの類型では、いずれの障害でも間接的支援が多く、直接的支援は少なくなっていた。支援者と本人の課題設定については39の支援領域中、一致が事例の50%を超えるのは「屋外移動」と「交通機関の利用」の2項目であり、残りの項目では不一致の割合が高くなっていた。また、障害支援区分や本人の活動範囲をはじめ、障害の重篤度と訪問サービスの量の間には正の相関がみられた。
調査結果から、対象とした訪問(アウトリーチ)サービスにおいて提供されているサービス内容が多彩であることが明らかとなった。サービス提供の方法は、他方で代行や具体的援助ではない間接的な支援を特徴とするという意味でホームヘルプなどの他のサービスとは異なることも示唆された。しかし、支援者が把握し、支援課題と認識していることと、利用者の課題設定の間に不一致が見られ、このことは支援の広がりへの可能性と同時に、パターナリズムにつながる可能性があることを示している。訪問(アウトリーチ)サービスにおいて支援者が得る情報は通所で得られる情報をはるかに超えており、その情報を整理し、ニーズを明らかにしていくアセスメント力、把握した課題を具体的な支援へと展開させていくスキルの高さが必要だと考えられる。また、事業者が支援できるケースの限界は対象とする利用者の重篤度によって変動する可能性があることも示された。
訪問支援のプロセスに関しては、サービス利用期間中の対象者に対するコンタクト情報を収集し、そのサービス内容との関連を調査した。支援期間・コンタクト回数合計・コンタクト時間合計(分)では、知的障害の支援期間・回数・時間合計が少なくなっていた。支援課題としては知的障害では「生活基盤(28.9%)」、「社会技能・社会資源利用(28.9%)」が多いのに対し、精神障害・発達障害・高次脳機能障害では「日常生活(精神38.3%、発達31.6%、高次脳機能39.9%)」が多くなっていた。支援における関わりの類型では、いずれの障害でも間接的支援が多く、直接的支援は少なくなっていた。支援者と本人の課題設定については39の支援領域中、一致が事例の50%を超えるのは「屋外移動」と「交通機関の利用」の2項目であり、残りの項目では不一致の割合が高くなっていた。また、障害支援区分や本人の活動範囲をはじめ、障害の重篤度と訪問サービスの量の間には正の相関がみられた。
調査結果から、対象とした訪問(アウトリーチ)サービスにおいて提供されているサービス内容が多彩であることが明らかとなった。サービス提供の方法は、他方で代行や具体的援助ではない間接的な支援を特徴とするという意味でホームヘルプなどの他のサービスとは異なることも示唆された。しかし、支援者が把握し、支援課題と認識していることと、利用者の課題設定の間に不一致が見られ、このことは支援の広がりへの可能性と同時に、パターナリズムにつながる可能性があることを示している。訪問(アウトリーチ)サービスにおいて支援者が得る情報は通所で得られる情報をはるかに超えており、その情報を整理し、ニーズを明らかにしていくアセスメント力、把握した課題を具体的な支援へと展開させていくスキルの高さが必要だと考えられる。また、事業者が支援できるケースの限界は対象とする利用者の重篤度によって変動する可能性があることも示された。
結論
訪問(アウトリーチ)サービスにおける事例調査の結果、現状として多様な対象に対して、多様なサービスが展開されていることが明らかとなった。その範囲は地域生活を送る上で必要となる多くの課題を含んでおり、利用者本人のスキルアップやスキル獲得がめざされている点から、代行ではなく、間接的な手法を中心に実施されていた。障害を抱えた人たちが社会生活を営んでいく上で、サービスの利用前後でその必要度が低下し、社会生活能力の評価も向上していること、また事例調査における記述からも、訪問(アウトリーチ)サービスが有効である可能性が強く示唆されたといえる。
公開日・更新日
公開日
2017-05-23
更新日
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