要約筆記者による盲ろう者支援の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201516038A
報告書区分
総括
研究課題名
要約筆記者による盲ろう者支援の在り方に関する研究
課題番号
H27-身体・知的-一般-007
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 匡(特定非営利活動法人 全国要約筆記問題研究会 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大河内 直之(東京大学 先端科学技術研究センター 福島智研究室)
  • 三宅 初穂( 特定非営利活動法人 全国要約筆記問題研究会 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 意思疎通の困難な視覚と聴覚の障害を併せ持つ「盲ろう者」といわれる人々がいる。視覚及び聴覚の障害の程度によって①全盲ろう②全盲難聴③弱視ろう④弱視難聴に大別される。③、④の盲ろう者には、文字による支援を必要とするケースもあり、要約筆記が利用されることもある。しかし、聞こえない、聞こえづらいことに「見えづらい」障害が加わった盲ろうの状態では、その障害特性に合わせた支援が必要であり、要約筆記に従事する者は視覚障害に関する専門的な知識は不足している。
 盲ろう者向け通訳・介助員養成は、2013年度にカリキュラムが整備されたが、現状では、通訳・介助員数は地域による偏在や絶対数の不足という実情もある。障害者総合支援法での実施による制度的な課題として、盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業の利用時間の制約もあり、次善の策として要約筆記者派遣を利用するケースも見受けられる。
 このようなことから、盲ろう者のなかで文字による通訳を必要とする人の状況を把握し、登録要約筆記者として習得したスキルを生かせる「盲ろう者向け通訳・介助」の学習課程を構築することは既存の社会資源の活用としても有用である。盲ろう者の個別性を重視し、1人ひとりに適した意思疎通支援を行うための学習体系を研究する。
研究方法
 本研究では、まず、盲ろう者の意思疎通の現状とニーズ把握、それに必要な技術の確認を行った。そして、弱視ろう、弱視難聴者のコミュニケーション支援の多様性の研究と文字による通訳の提供方法を検討し、それから登録要約筆記者の習得している知識や技術を補完する追加養成カリキュラムを検討し策定した。
結果と考察
1 弱視ろう・弱視難聴者への文字情報支援の在り方に関する研究(佐藤匡)
 盲ろう者の意思疎通、特に要約筆記利用の現状とニーズを確認し必要な支援を明らかにするために、アンケート及び聞き取りを行った。
 アンケート集計から、公的制度で28.3%(盲ろう者の3分の1近く)が要約筆記を利用していることが分かった。文字の見え方については、半数以上が文字の大きさやフォント、色などを工夫すれば読めると回答したことから、表出の工夫など要約筆記者への追加養成の必要性が明らかになった。
 聞き取り調査は、10人に対して調査を実施した。
 全国における盲ろう者向け通訳・介助員養成講習会の時間数調査については、本研究の作業委員から情報の提供を受けた。また、全国における文字情報支援に特化した養成講習会の実施状況調査についても、本研究の作業委員を通して情報提供を受けた。
2 盲ろう者、特に視覚障害者におけるコミュニケーション支援の多様性に関する研究(大河内直之)
 本研究では、盲ろう者が普段、文字情報のアクセス並びに文字通訳等に利用する視覚障害者向けの電子支援技術や点字の利用状況を概観したうえで、こうした技術等も活用しながら、盲ろう者が既存の聴覚障害者向けパソコン要約筆記を利用するためには、どのような配慮が必要なのか、またそれぞれの見え方・聞こえ方に配慮した盲ろう者向けパソコン要約筆記に求められる要件とはとのようなものなのかを整理した。同時に、現在盲ろう者に求められている新たな技術を使った文字通訳方法の可能性とその課題についても考察した。
3 盲ろう者に対する文字情報支援への要約筆記者活用の可能性に関する研究(三宅初穂)
 登録要約筆記者が、盲ろう者に対する知識を習得し、介助の知識と技術の学習をとおして、新しい社会資源として活用の道を作ることを考察した。聴覚障害者を対象として発展してきた要約筆記の歴史をたどることで、要約筆記者に求められる専門性は当該者の権利擁護につながることを明らかにした。
 また、平成23年に示された「要約筆記者養成カリキュラム」、同25年に示された「盲ろう者向け通訳・介助員養成カリキュラム」を比較検討し、登録要約筆記者が盲ろう者に文字による支援活動をするための学習内容、必要時間数等を明らかにした。
 84時間以上のカリキュラム修了と登録試験の実施の定着しつつある要約筆記事業における実績を踏まえ、盲ろう者支援の知識、技術を新たに獲得するためのカリキュラムを検討した。
結論
 3件の研究課題から、盲ろう者の多様性と支援におけるきめ細かな個別性が当該者の社会参加や権利擁護を促進することを確認した。そしてそれを踏まえて、要約筆記者養成カリキュラムにおいて蓄積された要約筆記の技術習得過程を、盲ろう者の支援の実際に生かすようカリキュラム案を構成した。
 今後、本研究のカリキュラム案をさらに有効に機能させるには現行制度に反映させる方策が求められる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201516038C

収支報告書

文献番号
201516038Z