観察法制度分析を用いた観察法医療の円滑な運用に係る体制整備・周辺制度の整備に係る研究

文献情報

文献番号
201516032A
報告書区分
総括
研究課題名
観察法制度分析を用いた観察法医療の円滑な運用に係る体制整備・周辺制度の整備に係る研究
課題番号
H27-精神-指定-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 幸之(国立大学法人 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 精神行動医科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 千代(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部)
  • 安藤 久美子(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所司法精神医学研究部)
  • 五十嵐 禎人(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 八木 深(独立行政法人国立病院機構花巻病院)
  • 三澤 孝夫(国際医療福祉大学医療福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、施行10年となった医療観察法制度と精神医療全般を含む広い範囲のデータを収集、分析し、国際的視点や医療経済学的視点などから多角的な課題整理を行い、政策提言、医療現場への還元を行う。入院モニタリング研究(A分担:藤井)、通院モニタリング研究(B分担:安藤)、国際比較・医療経済的分析研究(C分担:五十嵐)、判定医等の養成手法開発研究(D分担:八木)、医療従事者の養成手法開発研究(E分担:三澤)の5分担研究による。
研究方法
(A分担)全国30の指定入院医療機関(計約800病床)から各種シートのデータを収集、分析を行うとともに、海外の制度の視察と文献レビューにより、国際的な視点からの考察を加える。
(B分担)全国522の指定通院医療機関に「基本データ確認シート」を送付して処遇状況の調査、分析を行う。また、現在よりも効率的に質の高いデータを悉皆で収集する調査方法の開発も行う。
(C分担)日英の司法精神医療の専門家に構造化面接を行い二国間の異同を明らかにする。その結果について全国の司法精神医療従事者のweb会議を行い、日本の現状にそった支援モデルを作成する。
(D分担)司法精神医療従事者を対象とする研修で意見調査を実施し、企画委員会に還元し、質の改善をはかり、ケースブック作成などを通じて、効果的に医療観察法の現場に還元する方法も開発する。
(E分担)英国の司法精神医療の研修方法を参考として、地域支援に必要な知識、技術を明らかにする。これに基づいて実務者研修について具体的な提言を行い、演習用模擬事例、テキストを開発していく。
(倫理面への配慮)
本研究班の研究では、個人を特定することができる情報はすべて削除して利用する。研究遂行にあたっては、疫学研究指針を遵守し、各研究者が所属する機関の倫理委員会の承認を得て実施している。
結果と考察
(A分担)医療観察法制度開始から現在までの間、入院対象者の基本属性はほぼ一定で推移していた。推定在院期間は制度開始から徐々に延長し、2011年は平均839日であった。遠隔地での入院処遇を開始する対象者の割合は徐々に減少している。5年以上の超長期在院者のステージの推移の検討から、47名の超長期在院者のうち社会復帰期が1年以上に及ぶ例が17例であった。英国の司法精神医療では、社会復帰期に相当する患者はセキュリティレベルの低い施設に移ること等を参考に、社会復帰期の処遇のあり方、地域医療と福祉資源の整備を検討する必要があると考えられた。
(B分担)本年度は、全国指定通院医療機関434施設の協力を得て、1696例のデータを収集した。その結果、71%が入院処遇を終了後に通院医療に移行しており、当初審判後に直接通院処遇となっていたのは29%であった。対象行為は多い順に傷害35%、殺人29%、放火27%であった。主診断はF2圏が78%、F3圏が9%であった。通院中の問題行動としては「服薬の不遵守」が最多で、「日常生活におけるルールの違反」「非身体的暴力」などが多く報告されていたが、半数以上(52%)には何の問題行動も認められず社会復帰に向け順調な経過を送っていることが明らかとなった。調査対象者のうち、すでに6割以上が処遇を終了していたが、その9割は一般精神医療につながっていることも示された
(C分担)日英とも、大学教授1名、大学院生1名、司法精神病棟医師1名を聞き取り対象とした。社会復帰支援の要点、困難点、社会復帰モデル、司法精神医療専門医療機関の是非、医療者への治安の責任の是非、専門家に必要な知識と技能などに、二国間差や個人差が確認された。さらに全国全15施設が参加するweb会議を行い、上記知見に基づいて、日本で必要なモデルの検討、提案を行った。
(D分担)判定医等養成研修会において、参加者に意見聴取を実施した。有用度・理解度は高く、事例提示やグループワークなど、実践的な参加型プログラムの評価が高かった。
(E分担)英国の司法精神医療従事者への研修会の情報、国内の各地域での取り組みなどを調査した。これに基づいて退院調整や社会復帰援助の研修項目を特定し、これに基づいて研修を行った。
結論
本研究では、入・通院モニタリングを通じて、医療観察法の現状を大規模データから把握し、入院の長期化要因、予測入院期間、通院中の問題行動、精神保健福祉法入院の併用パターンなどを明らかにしており、今後もデータの蓄積と分析により学術的、政策的に重要な結果を示していく(A、B分担)。また、日英の司法精神医療の専門家への聞き取り調査、及び同結果を踏まえた全国規模のweb会議の結果に基づき、触法精神障害者の地域移行支援モデルを構築した(C分担)。そうして得られた知見を、現場の医療者にフィードバックし、医療の水準の向上に寄与することができている(D、E分担)。

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201516032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,994,000円
(2)補助金確定額
6,994,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,936,532円
人件費・謝金 446,887円
旅費 736,347円
その他 2,260,285円
間接経費 1,614,000円
合計 6,994,051円

備考

備考
預金通帳の利子「51円」

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-