精神疾患患者の整形外科領域を中心とする合併症に関する研究

文献情報

文献番号
201516031A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患患者の整形外科領域を中心とする合併症に関する研究
課題番号
H26-精神-指定-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
高岸 憲二(国立大学法人群馬大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 伯(国立大学法人群馬大学大学院医学系研究科)
  • 仙波 浩幸(豊橋創造大学 保健医療学部)
  • 江口 研(医療法人仁誠会 大湫病院)
  • 鈴木 正孝(あいせい紀年病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化した精神科病院に入院患者には、精神状態の改善を中心とした治療だけでなく、身体合併症およびADLの管理によるQOLの維持は、今後の地域移行を推進するにあたり重大な課題である。本研究では精神科病院入院中の統合失調症患者の転倒、大腿骨頸部骨折の発生実態を調査し、骨粗鬆症などの診断、治療、事故後の整形外科との連携、転倒予防に向けた取り組みなどについて検討する。更に、身体精神合併症患者に対する理学療法ガイドラインの作成も目的とする。
研究方法
1)公益社団法人日本精神科病院協会に登録している全国の会員病院に対してアンケート調査を実施した。平成25年度の統合失調症入院患者の転倒事故の実態、他科受診を必要とした事例、骨折事故の発生数などについて分析検討した。2)群馬県のサンピエール病院精神科長期入院患者において、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の実態調査・骨塩定量・既存脊椎圧迫骨折の評価・骨折リスクの評価を行い、精神疾患患者のロコモ度、骨粗鬆症の実態およびリスクを評価した。3)リハビリテーション関連では、全国の医療機関において、身体的リハビリテーション目的のために入院し、データ解析直後までに退院した患者をデータ解析対象とした。精神症状は、カルテより精神症状の有無、精神機能の全体的評定尺度(GAF)、カルテより精神症状の有無などを調査した。身体障害は、関節可動域測定、徒手筋力検査法(MMT)などの項目および日常生活動作として機能的自立度評価表(FIM)を用いた。
結果と考察
平成26年12月、1141病院に対してアンケートを実施し、566病院(49.6%)からの回答を得た。①97%を超す精神科病院で、統合失調症の転倒による骨折等の受傷事例が発生②受傷時年齢は60~70歳で最も多く、続いて70~80歳③他院への転院が必要な事例では、大腿骨頚部骨折が最多④転院して手術を受けても、リハビリが不十分で戻ってくる事例が最多等であり、精神科長期入院患者の高齢者に高頻度に大腿骨頸部骨折が生じ、手術後歩行機能が十分に再獲得されていない現況が明らかになった。次に精神疾患長期入院患者のロコモの実態調査では、169名分のデータの中間解析を実施した.平均年齢63.1歳,男性70名,女性99名の患者群である.診断病名は,統合失調症115名,統合失調感情障害7名,双極性障害9名,うつ病15名,妄想性障害2名,その他19名である。これらの患者群に対して、ロコモ25を用いてロコモ度の実態調査を行った。自己記入後,OTにより調査項目の記入の確認を行った.患者記入に基づきロコモ判定を実施すると,71名(42.0%)がロコモと判定されるが、OTの修正評価に基づき判定すると77名(45.6%)がロコモと判定された。この差異について、患者本人の過大評価が27名(16.0%),過小評価が5名(3.0%)存在していた。本調査より精神科長期在院患者には,ロコモと診断される患者が多く存在することおよびロコモ25を精神科患者に用いる際には,身体能力を正確に評価できる介助者(OTや理学療法士が望ましい)の介助の元で実施すべきであると考えられる。骨粗鬆症評価については,全体で86名(50.9%)の患者が骨粗鬆症と診断された。
平成27年4月からは対象患者のうち,骨粗鬆症の診断が得られた患者を対象に現在までにアルファカルシドール群8名,デノスマブ群16名に対して治療を開始し,投与後の骨密度,骨代謝マーカーの変化について投与後3ヶ月,6ヶ月で測定し,投与開始前との変化について統計解析を行った。アルファカルシドール群では投与開始後6ヶ月で投与開始前と比較して有意な骨密度,YAM値の改善を認めるも,デノスマブ群との比較においては投与前,投与後3ヶ月,6ヶ月いずれのtime pointにおいても有意差は認めなかった。
リハビリテーションに関しては、現在データの取得中である。 
結論
精神科長期在院患者および精神科外来通院患者169名に対して,ロコモ25を用いたロコモティブシンドロームのチェックおよび腰椎および大腿骨頚部骨密度による骨粗鬆症検査,胸腰椎単純レントゲンによる既存椎体骨折調査を実施した.169名の中間解析の結果,精神科患者においては,ロコモティブシンドロームと診断された者が患者評価で42.1%,作業療法士の修正評価に基づき判定すると45.6%であった.骨密度検査により骨粗鬆症と診断された者が50.9%であった.既存椎体骨折を胸椎または腰椎に有する者は41.1%であった.
薬剤による治療介入の結果,投与後6ヶ月までのデータでは,アルファカルシドール,デノスマブいずれの投与においても骨密度,YAM値に2群間での有意差はなかった

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2018-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201516031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,410,000円
(2)補助金確定額
7,410,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,339,930円
人件費・謝金 440,000円
旅費 2,678,003円
その他 1,242,067円
間接経費 1,710,000円
合計 7,410,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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