文献情報
文献番号
201516023A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患の医療計画と効果的な医療連携体制構築の推進に関する研究
課題番号
H25-精神-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 弘人(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
- 萱間 真美(聖路加国際大学 看護学部)
- 平川 博之(ひらかわクリニック)
- 松原 六郎(公益財団法人松原病院)
- 山之内 芳雄(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療計画の精神疾患対策部分の進行管理のために国が示している指標の政策効果の有無や妥当性、医療機関内や医療機関間、地域の連携などの推進に医療計画が寄与しているか否かを総合的に検証し、問題点があれば改善していく必要がある。さらに医療提供体制の確保のみならず、精神科領域の法制度の運用の問題点の同定も不可欠である。本研究の研究目的はここにある。
研究方法
精神保健福祉資料、患者調査、都道府県医療計画をもとに精神科医療の効率性を見た。地域連携パスについては、全国のパスの実例をもとに、その内容や運用実態を分析・整理した。精神科訪問看護は、精神科訪問看護ステーションに対するアンケート結果と医療機関からの訪問看護実施状況等の既存データをもとに分析した。精神科病院と一般病院との医療機関間連携の実態は、愛知県における救急精神身体合併症モデル事業の実施状況を分析した。また、精神科病床に入院する認知症患者の動向に関しては、患者調査において、目的外集計の申請を行い、全対象の病院入院票個票の一部データの提供を受けて分析した。精神科診療所が抱えている問題は、「精神科診療所通院患者の社会参加状況に関する調査」と「東京都精神科救急医療情報センターにおける『23条流れ』のケース調査」を実施した。
(倫理面への配慮)
研究分担者が、研究内容に応じて必要であれば、それぞれ倫理審査を受けている。
(倫理面への配慮)
研究分担者が、研究内容に応じて必要であれば、それぞれ倫理審査を受けている。
結果と考察
平成16年から平成24年にかけて精神科医療に従事する看護師数は、大きく増加していた。医師数についても同様に、この期間増加していた。一方、在院患者数ならびに病床数は減少していた。
精神科医療の効率性の変化を見たところ、高齢化により絶対数が経年的に増加している「認知症」については、医師と看護師に8年間で生産性(効率)の向上が認められた。精神科医療全体では、この8年間で、各職種の生産性(業務効率)は低下していた。
次に、身体疾患を合併する精神疾患の地域連携パスの開発状況を明らかにすることを目的に、全国での活動を集約した。その結果、脳卒中、心筋梗塞および糖尿病において、地域連携パスの開発・運用が進められていた。メンタルヘルス領域は、脳卒中地域連携パスに組み込まれている事例があった。心筋梗塞と糖尿病においては、認知症やうつ(うつ状態とうつ病)の評価を組み込む取り組みが始まっていた。患者・家族に情報を集約する地域連携パスは、地域で生活する精神障害者の治療ケアを統合するツールの1つとなる可能性があることが分かった。
さらに、精神科訪問看護の実施率の変化、および事業所の状況、対象者の実態について調査した。その結果、平成27年9月の1カ月間に精神科訪問看護を実施した事業所の割合は、昨年の54.6%から59.8%に増加し、調査開始以降、最も高い実施率を示していた。地域医療計画に訪問看護ステーションによる精神科訪問看護の実施率が数値目標化されることが望まれる。
また、認知症を含む精神症状を有する者が、救急医療を受診した際の精神科医療アクセスについて、愛知県の身体合併症救急モデル事業の内容を調べた。その結果、同モデル事業において実績の多いペアに見られた特性として、受け入れ精神科医療機関側に一定の傾向が見られた。精神科病床に入院する認知症患者は増加の一途をたどっているが、入院率にすると平成17年をピークにわずかに減少傾向にあることがわかった。
精神科診療所通院患者の社会参加と23条流れという精神科診療所が抱えている問題であるが、前者については、「半年以上外来通院以外何も社会参加していない65歳未満の患者(外来ニート)」が16.6%存在していた。これは、平成19年度日本精神神経科診療所協会『明日のクリニックを考える研究会』が行った調査と同様の結果(15.8%)であった。後者の調査結果であるが、情報センターでは、警察官が23条通報を挙げても却下されたケースや通報を挙げることを検討したが断念したケースについての相談が入っていた。23条流れの相談は、平成21年度に比べ、平成26年度は倍増し、半年で119件あった。23条流れケースの通院先は、平成21年度は病院36%、診療所32%であったのが、平成26年度は病院21%、診療所42%と変化していた。精神科診療所は、23条流れのような困難ケースを病院よりも多く診るようになっていることがわかった。
精神科医療の効率性の変化を見たところ、高齢化により絶対数が経年的に増加している「認知症」については、医師と看護師に8年間で生産性(効率)の向上が認められた。精神科医療全体では、この8年間で、各職種の生産性(業務効率)は低下していた。
次に、身体疾患を合併する精神疾患の地域連携パスの開発状況を明らかにすることを目的に、全国での活動を集約した。その結果、脳卒中、心筋梗塞および糖尿病において、地域連携パスの開発・運用が進められていた。メンタルヘルス領域は、脳卒中地域連携パスに組み込まれている事例があった。心筋梗塞と糖尿病においては、認知症やうつ(うつ状態とうつ病)の評価を組み込む取り組みが始まっていた。患者・家族に情報を集約する地域連携パスは、地域で生活する精神障害者の治療ケアを統合するツールの1つとなる可能性があることが分かった。
さらに、精神科訪問看護の実施率の変化、および事業所の状況、対象者の実態について調査した。その結果、平成27年9月の1カ月間に精神科訪問看護を実施した事業所の割合は、昨年の54.6%から59.8%に増加し、調査開始以降、最も高い実施率を示していた。地域医療計画に訪問看護ステーションによる精神科訪問看護の実施率が数値目標化されることが望まれる。
また、認知症を含む精神症状を有する者が、救急医療を受診した際の精神科医療アクセスについて、愛知県の身体合併症救急モデル事業の内容を調べた。その結果、同モデル事業において実績の多いペアに見られた特性として、受け入れ精神科医療機関側に一定の傾向が見られた。精神科病床に入院する認知症患者は増加の一途をたどっているが、入院率にすると平成17年をピークにわずかに減少傾向にあることがわかった。
精神科診療所通院患者の社会参加と23条流れという精神科診療所が抱えている問題であるが、前者については、「半年以上外来通院以外何も社会参加していない65歳未満の患者(外来ニート)」が16.6%存在していた。これは、平成19年度日本精神神経科診療所協会『明日のクリニックを考える研究会』が行った調査と同様の結果(15.8%)であった。後者の調査結果であるが、情報センターでは、警察官が23条通報を挙げても却下されたケースや通報を挙げることを検討したが断念したケースについての相談が入っていた。23条流れの相談は、平成21年度に比べ、平成26年度は倍増し、半年で119件あった。23条流れケースの通院先は、平成21年度は病院36%、診療所32%であったのが、平成26年度は病院21%、診療所42%と変化していた。精神科診療所は、23条流れのような困難ケースを病院よりも多く診るようになっていることがわかった。
結論
本研究成果は、精神科医療はもとより、その隣接領域を含めた地域の体系的な医療水準の向上や患者の利便性、人権保護の一層の向上に寄与するものと考える。そして、患者の視点に立った医療供給が期待でき、行政サービスの質の向上や効率性アップが図られ、その成果は住民や国民の福祉の向上となって現れるものと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2016-08-08
更新日
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