失語症患者の障害者認定に必要な日常生活制限の実態調査及び実数調査等に関する研究

文献情報

文献番号
201516007A
報告書区分
総括
研究課題名
失語症患者の障害者認定に必要な日常生活制限の実態調査及び実数調査等に関する研究
課題番号
H26-身体・知的-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
飯島 節(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局)
研究分担者(所属機関)
  • 種村 純(川崎医療福祉大学)
  • 藤井 俊勝(東北福祉大学)
  • 中島 八十一(国立障害者リハビリテーションセンター 学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,233,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
失語症は身体障害者手帳の対象障害であり、原因疾患は脳血管障害、外傷性脳損傷など多様である。脳血管障害による失語症者は高齢者が多く、介護保険対象であるため、本邦における実数把握は十分でない。従って福祉サービスに係る社会的経費の算出も容易でない。失語症者総数の推計値を求めることは、社会的経費の算出を容易にする。
一方で、失語症者がもつ日常生活及び社会生活における支援ニーズを評価しようとすると、失語症に加えて、運動機能障害などをも併せもつことから、失語症単独の評価とはなりにくい。また、高次脳機能障害のように精神障害者保健福祉手帳の対象となる障害を併せもつ者もあり、評価が困難な場合がある。
本研究では、失語症者について適切な障害の重症度評価を確立するために、評価方法を選択し、事例を蓄積する。目的は、失語症者数の推計およびその障害程度が現在の障害者手帳制度で正しく評価されているかどうか検証すること、真に必要としている支援の内容を明らかにすることである。
研究方法
調査1.新規発生数調査
新規発生数については、前年度調査に脳卒中救急医療を専門とする2医療機関を追加して調査した。広島県福山市(人口460,882人)の大田記念病院と福井県福井市(人口265,754人)の福井総合病院を対象とした。
前年度と同様に、1年間に脳卒中で入院した症例に占める失語症の有無を調査し、性別、年齢、脳血管障害の分類等の属性に加えて脳卒中患者全数を後方視的に実施する。

調査2.既存症例数調査
コミュニティにどれだけの失語症者が暮らしているかという観点で、フィールドを岡山県真庭市(人口47,912人)と定めた。ここで失語症者が医療・福祉サービスを利用する介護保険施設等の施設・機関を対象に失語症者の数を調査する。
結果と考察
調査1.脳卒中救急患者を受け入れている医療機関の1年間の受け入れ患者数は、死亡例とそれに準じる症例を除くと合計2,112名であった。そのうち概ね2週間後の退院時期に失語症を遺していた患者は360名であった。総数に対する比率は17.0%であった。性別では男性183名、女性177名であった。70歳未満の症例は103名で男性69名、女性34名であった。70歳以上の症例は257名で男性114名、女性143名であった。70歳未満と70歳以上の症例は失語症症例総数のそれぞれ28.6%と71.4%であった。

調査2.真庭市内の介護保険関連施設等を医療機関、介護保険施設、障害福祉サービス施設の3群に分けて、平成27年10月15日から11月30日の間に調査した。3群の合計(平均回答率は51.3%)では、失語症者は58施設に124名を確認した。
 さらに介護保険施設を利用する失語症を有する者の要介護度は、要介護度1:12名、2:21名、3:19名、4:19名、5:16名であった。
 障害福祉サービス施設を利用する失語症者の障害支援区分は、1:0名、2:1名、3:11名、4:8名、5:1名、6:1名であった。
失語症の全国の1年間の脳卒中発生数を約33万人とすると、その17.0%は56,100人となる。脳卒中以外の要因で失語症を遺す者がいることを考慮すると、概数として年間6万人程度が新規発症していると考えられる。経過により症状が消失・軽減することも考えられるものの、貴重な調査結果と考えられる。
 一方、岡山県真庭市の介護保険関連施設等を利用する失語症者は124名であった。前年の調査からは、1,621名の失語症利用者が指摘された。岡山県の人口が1,931,586人であることを考慮すると、真庭市の失語症者数は人口比で算出される数の3倍程度になる。
結論
前年度から継続して合計4医療機関での脳卒中救急年間患者総数2,112名のうち、失語症を遺した患者は360名で、比率は17.0%であった。年齢別に分類すると、70歳未満と70歳以上の症例は失語症症例総数のそれぞれ28.6%と71.4%であった。
 岡山県真庭市の介護保険施設等を対象に、利用者の中から失語症である利用者を調査したところ58施設で124人を確認した。
要介護度や障害支援区分との関連は、次年度の生活実態調査と合わせて考察する。

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201516007Z