文献情報
文献番号
201516003A
報告書区分
総括
研究課題名
難病のある人の福祉サービス活用による就労支援についての研究
課題番号
H25-身体・知的-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院 臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
- 中島 八十一(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
- 糸山 泰人(学校法人国際医療福祉大学 神経内科学)
- 野田 龍也(奈良県立医科大学 公衆衛生学・疫学)
- 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、難病当事者、就労系福祉サービス機関、就労支援機関等を対象として、難病のある人の就労系福祉サービスの利用実態および就労支援ニーズの調査、支援事例の収集を行うことにより、医療を受けながら、福祉サービスを活用して、福祉就労を含む就業生活を送るために必要な支援手法を提言することを目的とする。
研究方法
難病のある人の就労に関するヒアリング調査:就労系福祉サービスを利用している(いた)当事者および難病のある人を支援した実績のある就労系福祉サービス事業所に対して、半構造化面接法を用いてヒアリング調査による事例収集をおこなった。質問は、職場の配慮に関する項目、福祉的就労についてどうとらえているか(当事者)、難病のある利用者についてどのようにとらえているか(事業所)など。
就労支援ニーズ調査の研究デザイン:昨年度、全国の地域難病連に配布した調査票3,000通の統計分析について、とくに就労の意志があるが就労に至っていない難病患者群について、補充的な分析を行った。調査票は本人のプロフィール、現在のサービス利用状況と意向、障害者手帳の有無、就労および経済状況など34問。就労したいが難しい人、就活中の人の1)多い疾患、2)就労系福祉サービスの認知度、3)障害者手帳取得、についてさらに分析を行った。
「就労系福祉サービス事業所における難病のある人への支援ハンドブック」作成および「難病のある人の福祉サービス活用による就労支援シンポジウム」開催:就労系福祉サービス事業所に対する利用実態調査、難病当事者に対する就労支援ニーズ調査、およびヒアリング調査の知見をもとに、就労系福祉サービス事業所対象の支援ハンドブックを作成。また地域において福祉サービスを活用した就労支援について普及するシンポジウムを地方都市(札幌)にて開催。
就労支援ニーズ調査の研究デザイン:昨年度、全国の地域難病連に配布した調査票3,000通の統計分析について、とくに就労の意志があるが就労に至っていない難病患者群について、補充的な分析を行った。調査票は本人のプロフィール、現在のサービス利用状況と意向、障害者手帳の有無、就労および経済状況など34問。就労したいが難しい人、就活中の人の1)多い疾患、2)就労系福祉サービスの認知度、3)障害者手帳取得、についてさらに分析を行った。
「就労系福祉サービス事業所における難病のある人への支援ハンドブック」作成および「難病のある人の福祉サービス活用による就労支援シンポジウム」開催:就労系福祉サービス事業所に対する利用実態調査、難病当事者に対する就労支援ニーズ調査、およびヒアリング調査の知見をもとに、就労系福祉サービス事業所対象の支援ハンドブックを作成。また地域において福祉サービスを活用した就労支援について普及するシンポジウムを地方都市(札幌)にて開催。
結果と考察
難病のある人の就労に関するヒアリング調査:
就労支援ニーズについて当事者ヒアリング調査: 26例を収集。10代~60代、男性13名、女性13名。疾患群は、神経・筋10名、免疫(膠原病)6名、消化器3名、内分泌1名、皮膚・結合組織1名、呼吸器1名、上記の複合1名、現在の就業状況は、正規6名、パート2名、無職5名、A型事業所1名、B型事業所8名、就労移行1名。紹介元は、主にハローワーク、福祉事務所、特別支援学校。
支援事例について就労系福祉サービス事業所ヒアリング調査:12事業所、15事例を収集。就労移行2、A型事業所1、B型事業所9。20代~60代、男性10名、女性5名。疾患群は、神経・筋4名、免疫(膠原病)3名、消化器2名、内分泌1名、呼吸器1名、腎・泌尿器2名、骨・関節1名、現在の就業状況は、復職1名、就労移行1名、B型事業所12名、自宅療養1名であった。紹介元は、主にハローワーク、福祉事務所、当事者会。
就労支援ニーズ調査の研究デザイン:
標準化を行ったデータを対象に疾患別に確認したところ、どの疾患もまんべんなく就労に困難がある。就労の意志があるが就労に至っていない群で、就労系福祉サービスを知っていたのは25.7%にとどまり、制度を知った場所は当事者団体、難病相談支援センターであり、医療機関は著しく低かった。制度を知らない場合、「知りたい」という回答は61.4%で、「不要(14.3%)」より「わからない(22.0%)」の方が多かった。就労したいが難しい人で障害者手帳未取得の理由は、「必要ない(38.8%)」「取得したいができない(31.4%)」「手帳制度を知らなかった・すすめられなかった(22.3%)」。
「就労系福祉サービス事業所における難病のある人への支援ハンドブック」作成および「難病のある人の福祉サービス活用による就労支援シンポジウム」開催:
支援ハンドブックは第1章に平成25,26年度実施した事業所および難病当事者の大規模調査の結果をもとに「難病のある人について知っておきたいこと」とし、第2章に平成27年実施したヒアリング調査で収集した事例を参考に「事例から見た支援のポイント」とし、第3章として資料をおく構成とした。印刷物およびWebでのダウンロードを作成(当報告書33ページ)。就労支援シンポジウムは平成28年3月21日札幌にて開催。福祉的就労、労働・障害者雇用、医療ソーシャルワークとしての就労支援について総論的発表に加え、札幌で地域支援に当たるハローワーク、就労継続A型事業所の支援者および当事者から発表。参加者110人。詳細は当報告書75ページ。
就労支援ニーズについて当事者ヒアリング調査: 26例を収集。10代~60代、男性13名、女性13名。疾患群は、神経・筋10名、免疫(膠原病)6名、消化器3名、内分泌1名、皮膚・結合組織1名、呼吸器1名、上記の複合1名、現在の就業状況は、正規6名、パート2名、無職5名、A型事業所1名、B型事業所8名、就労移行1名。紹介元は、主にハローワーク、福祉事務所、特別支援学校。
支援事例について就労系福祉サービス事業所ヒアリング調査:12事業所、15事例を収集。就労移行2、A型事業所1、B型事業所9。20代~60代、男性10名、女性5名。疾患群は、神経・筋4名、免疫(膠原病)3名、消化器2名、内分泌1名、呼吸器1名、腎・泌尿器2名、骨・関節1名、現在の就業状況は、復職1名、就労移行1名、B型事業所12名、自宅療養1名であった。紹介元は、主にハローワーク、福祉事務所、当事者会。
就労支援ニーズ調査の研究デザイン:
標準化を行ったデータを対象に疾患別に確認したところ、どの疾患もまんべんなく就労に困難がある。就労の意志があるが就労に至っていない群で、就労系福祉サービスを知っていたのは25.7%にとどまり、制度を知った場所は当事者団体、難病相談支援センターであり、医療機関は著しく低かった。制度を知らない場合、「知りたい」という回答は61.4%で、「不要(14.3%)」より「わからない(22.0%)」の方が多かった。就労したいが難しい人で障害者手帳未取得の理由は、「必要ない(38.8%)」「取得したいができない(31.4%)」「手帳制度を知らなかった・すすめられなかった(22.3%)」。
「就労系福祉サービス事業所における難病のある人への支援ハンドブック」作成および「難病のある人の福祉サービス活用による就労支援シンポジウム」開催:
支援ハンドブックは第1章に平成25,26年度実施した事業所および難病当事者の大規模調査の結果をもとに「難病のある人について知っておきたいこと」とし、第2章に平成27年実施したヒアリング調査で収集した事例を参考に「事例から見た支援のポイント」とし、第3章として資料をおく構成とした。印刷物およびWebでのダウンロードを作成(当報告書33ページ)。就労支援シンポジウムは平成28年3月21日札幌にて開催。福祉的就労、労働・障害者雇用、医療ソーシャルワークとしての就労支援について総論的発表に加え、札幌で地域支援に当たるハローワーク、就労継続A型事業所の支援者および当事者から発表。参加者110人。詳細は当報告書75ページ。
結論
今後福祉サービスを活用する方法の開発および普及が難病患者のADL向上に寄与すると考えられる。難病患者・家族、支援者に障害福祉制度の情報発信を行い、改めて制度の周知を図ることにより新たな難病対策施策の浸透に役立つと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2016-08-08
更新日
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