認知症非薬物療法の普及促進による介護負担の軽減を目指した地域包括的ケア研究

文献情報

文献番号
201515002A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症非薬物療法の普及促進による介護負担の軽減を目指した地域包括的ケア研究
課題番号
H25-認知症-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
鳥羽 研二(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 朝田 隆(東京医科歯科大学)
  • 山口 晴保(群馬大学大学院保健学研究科)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部)
  • 秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院)
  • 梅垣 宏行(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 松林 公蔵(京都大学東南アジア研究所)
  • 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 東 憲太郎(三重県老人保健施設協会)
  • 鷲見 幸彦(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 櫻井 孝(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 服部 英幸(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 遠藤 英俊(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,175,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症患者と家族の苦しみが社会問題化しているのは、医療・ケア・行政などのサービスの質と量が不十分であることの現れである。認知症の生活機能評価、BPSD、ADL障害などへの対応マニュアルを作成報告した。骨格となるのは、薬物療法の功罪を含めた見直しと非薬物療法の家庭への普及であるが、非薬物療法のエビデンスの研究は不十分であり、対応マニュアルの科学性の質を担保するため非薬物療法の研究と包括的ケアへの効果判定は同時進行して行う必要がある。これらは家族教室等の住民啓発、身近型認知症疾患医療センター、認知症短期集中リハビリを行うデイケア、もの忘れ外来などの認知症外来、BPSD対応病棟、身体疾患対応一般病棟におけるデータ収集と対応の効果判定というケア場面、病状進行に応じた時間軸を考慮し、実効性を縦断的に検証し、国家的な対策として提言を行う。
研究方法
1)予防的側面 縦断的に観察している1500名のフィールドにおいて、MCIの新規出現率を調べ、影響を与える因子を、血圧、血糖などの因子と生活機能因子の双方から関与を検討する。2)初期対応方法の確立 軽度認知障害・早期認知症の人の症状を悪化させない目的で、複数のリハビリテーション手法を併用して認知機能や日常生活機能への効果を検証する。また参加者自身の参加への満足度や仲間との交流度、家族介護者による参加への協力度も評価する、BPSDに関して在宅医療にかかわる職種すべてにとって今必要とされる情報提供をめざし、「在宅支援のための認知症BPSD対応ガイド(仮)」を作成する。3)認知症初期集中支援チームの活動内容と結果を解析する 4)認知症の新しい介護負担指標の確立と応用に関する研究 認知症に特有の、精神的負担を加味した新しい介護負担尺度の作成を通じ、上記の技術が、介護者の負担軽減に反映されるかを検証する。
結果と考察
早期発見:血糖管理と認知症の進展を縦断的に解析し、HbA1cの良好な群ではMMSEの低下が少なく、認知機能悪化を防ぐ上で血糖コントロールの大切さを縦断的に示した(梅垣)。地域住民に関して、ブドウ糖負荷試験を行った208名の認知症発症は横断調査ではMMSE<23となるリスクは、糖尿病型で31%、2.7倍であった。 5年間の縦断調査では、耐糖能障害の認知症発症率は22%、2.4倍であり、耐糖能障害の認知症発症危険リスクが初めて示された(松林)。認知症新規早期診断マーカーとして、血清ACYL-Lカルニチンが認知機能と逆相関する成績を得た(秋下) 嗅覚検査で、MCIの早期発見につながるにおいを同定した。 認知症でも保存されている、ケアに役立つにおいも同定した(秋下)
早期~中期非薬物療法:介護者への教育的支援によりコーピングや肯定的介護評価を獲得することで、介護者のストレスが軽減した(清家) 介護予防サロンを全国展開し、フレイル予防と認知症の早期発見に繋がった(東) 介護保険サービスを利用していない認知症高齢者は、抑うつ的な傾向が強いことが明らかとなった(神崎)
初期集中支援:認知症初期集中支援チーム介入により、BPSD(左)と家族の介護負担(右)に有意な改善が見られた(鷲見)
結論
以上から、認知症の地域包括ケアに資するエビデンスを提供出来た。
在宅を中心に、デイケア、老健、グループホームなどの介護保険サービスや、かかりつけ医、サポート医、認知症疾患医療センターなど医療サービスの中で、予防、進展予防、ケア、地域連携、人材育成まで新オレンジプランにう沿った、当事者の視点、介護者への配慮を一義的に考える研究班は一定の成果を上げたと言える

公開日・更新日

公開日
2016-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201515002B
報告書区分
総合
研究課題名
認知症非薬物療法の普及促進による介護負担の軽減を目指した地域包括的ケア研究
課題番号
H25-認知症-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
鳥羽 研二(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 朝田 隆(東京医科歯科大学)
  • 山口 晴保(群馬大学大学院保健学研究科)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部)
  • 秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院)
  • 梅垣 宏行(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 松林 公蔵(京都大学東南アジア研究所)
  • 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 東 憲太郎(三重県老人保健施設協会)
  • 鷲見 幸彦(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 櫻井 孝(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 服部 英幸(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 遠藤 英俊(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症患者と家族の苦しみが社会問題化しているのは、医療・ケア・行政などのサービスの質と量が不十分であることの現れである。解決策は、薬物療法の功罪を含めた見直しと非薬物療法の家庭への普及であるが、エビデンスの研究は不十分である。これらは家族教室等の住民啓発、身近型認知症疾患医療センター、認知症短期集中リハビリを行うデイケア、もの忘れ外来などの認知症外来、BPSD対応病棟、身体疾患対応一般病棟におけるデータ収集と対応の効果判定というケア場面、病状進行に応じた時間軸を考慮し、実効性を縦断的に検証し、国家的な対策として提言を行う。
研究方法
1)予防的側面 糖尿病の合併による認知機能・脳血流における非糖尿病縦断的に観察している1500名のフィールドにおいて、MCIの新規出現率を調べ、影響を与える因子を、血圧、血糖などの因子と生活機能因子の双方から関与を検討する。2)認知症初期症状11項目質問票で認知症を早期発見することに加え、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などアルツハイマー型認知症以外のタイプにも早く気づくことに有効な認知症病型分類質問票の開発を行う。3)初期対応方法の確立 認知症サポートチームを引き続き運用し評価する。今年度から精神福祉士(PSW)および、作業療法士(OT)がチームに加わる。健忘型軽度認知障害またはアルツハイマー型認知症と診断された高齢者において、BADL/IADL低下と、サルコペニア、大脳白質病変との関連を明らかにし生活障害の進行を予防するリハビリ、生活指導、また新たな薬物療法の可能性を探る。6)認知症に特有の、精神的負担を加味した新しい介護負担尺度の作成を通じ、上記の技術が、介護者の負担軽減に反映されるかを検証する。7)診療所型の認知症疾患医療センターが設置されているが評価は十分に行えていない。2015年度の認知症疾患医療センター活動状況調査では、基幹型、地域型、診療所型の機能の比較実態調査を行う。
結果と考察
早期発見:血糖管理と認知症の進展を縦断的に解析し、HbA1cの良好な群ではMMSEの低下が少なく、認知機能悪化を防ぐ上で血糖コントロールの大切さを縦断的に示した。地域住民に関して、ブドウ糖負荷試験を行った208名の認知症発症は横断調査ではMMSE<23となるリスクは、糖尿病型で31%、2.7倍であった。5年間の縦断調査では、耐糖能障害の認知症発症率は22%、2.4倍であり、耐糖能障害の認知症発症危険リスクが初めて示された。認知症新規早期診断マーカーとして、血清ACYL-Lカルニチンが認知機能と逆相関する成績を得た。嗅覚検査で、MCIの早期発見につながるにおいを同定した。認知症でも保存されている、ケアに役立つにおいも同定した。
早期~中期非薬物療法:介護者への教育的支援によりコーピングや肯定的介護評価を獲得することで、介護者のストレスが軽減した。介護予防サロンを全国展開し、フレイル予防と認知症の早期発見に繋がった。介護保険サービスを利用していない認知症高齢者は、抑うつ的な傾向が強いことが明らかとなった。
初期集中支援:認知症初期集中支援チーム介入により、BPSD(左)と家族の介護負担(右)に有意な改善が見られた。5在宅医療におけるBPSD対応の論点(表)を整理し、現状と課題、解決への道筋を分担で執筆することとなった。成果物として28年度には出版予定。
中期~進行期 老健施設における認知症リハビリテーション研究と前橋市で実施している「認知症初期集中支援チーム」の活動では、個別リハではなく小集団リハで検討した。23名をランダムに2群に分けて、3ヶ月間の介入を行い、両群間で検討すると、認知症の全般的重症度(MOSES)が有意に改善し、主観的QOLの維持・改善傾向も認めた。認知症短期集中リハビリテーション実施加算は入所から3か月間限定であるが、その後は小集団によるリハ継続が望まれる。一般病棟の認知症受け入れを潤滑にするべく、認知症サポートチームの標準行動指針、DVDなどを作成した。認知症サポートチームは愛知県内に普及してきた。一般病院の認知症うけいれ限度の目安をBPSD評価(CMAI)で出来ることを示した。介護負担尺度の新しい検討:初期の30項目程度の仮評価法を完成、27年度には有用性などの評価を行った。
結論
以上から、認知症の地域包括ケアに資するエビデンスを提供出来た。
在宅を中心に、デイケア、老健、グループホームなどの介護保険サービスや、かかりつけ医、サポート医、認知症疾患医療センターなど医療サービスの中で、予防、進展予防、ケア、地域連携、人材育成まで新オレンジプランにう沿った、当事者の視点、介護者への配慮を一義的に考える研究班は一定の成果を上げたと言える。

公開日・更新日

公開日
2016-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-02-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201515002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
耐糖能障害の認知症発症危険リスクが初めて示された
正常高齢者における血圧との関連では、起立性低血圧、起立性高血圧、降圧剤未使用がMCI
に有意に多く見られた
アルツハイマーの新規バイオマーカーAPP699-711/Aβ1-42がアミロイドイメージングによるアミロイド沈着と相関する成績を報告した(鳥羽、PJAB、2013)2) 認知症新規早期診断マーカーとして、血清ACYL-Lカルニチンが認知機能と逆相関する成績を得た
臨床的観点からの成果
嗅覚検査で、MCIの早期発見につながるにおいを同定した。 認知症でも保存されている、ケアに役立つにおいも同定した
オレンジカフェに繋がる家族教室で、RCT介護者負担感の変化を起こしうるかRCTを行った
認知症短期集中リハビリテーションによる在宅復帰促進機能を報告
ガイドライン等の開発
在宅医療におけるBPSD対応の論点を整理し、現状と課題、解決への道筋を
分担で[在宅におけるBPSD対応ガイドライン」として執筆することとなった。 成果物として28年度には出版予定
その他行政的観点からの成果
研究成果は参考にされ、新オレンジプランの骨格の大部分を形成した。
その他のインパクト
班長、班員は認知症国際G8レガシーイベントで発表し、内外にインパクトを与えた。
班長は、ジュネーブで開催された認知症大臣級会合で、認知症短期集中リハビリテーション、初期集中支援チームに関する本研究成果を報告し、諸外国の注目を浴びた。 

発表件数

原著論文(和文)
28件
原著論文(英文等)
65件
その他論文(和文)
62件
その他論文(英文等)
56件
学会発表(国内学会)
169件
学会発表(国際学会等)
33件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-08
更新日
2018-06-26

収支報告書

文献番号
201515002Z