文献情報
文献番号
201514007A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護高齢者の経口摂取支援のための歯科と栄養の連携を推進するための研究
課題番号
H27-長寿-若手-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
枝広 あや子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
- 荒井 秀典(国立長寿医療研究センター)
- 田中 弥生(駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科)
- 安藤 雄一(国立保健医療科学院, 生涯健康研究部)
- 渡邊 裕(国立長寿医療研究センター,口疾患研究部,口腔感染制御研究室)
- 平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
要介護高齢者に対する口腔機能向上と栄養改善の複合プログラムや、歯科と栄養の連携による食支援で効果が得られることは、これまでの知見で明らかになっている。一連の知見に基づき、要介護高齢者に対して経口摂取維持への介護サービス等が導入されてきたが、いまだ職種間の効率的な連携が得られるには至っていない。そこで本研究では【目的1】経口摂取に関する問題のスクリーニング法を明らかにする【目的2】歯科と栄養の連携による経口摂取支援マニュアル(以下マニュアル)を作成しその効果を検証する、以上2点の目的を掲げ、前述した課題に対応することを最終目的とし調査事業を実施した。 マニュアル作成にあたっては、既存の知見の集積のみならず、職種間の連携に必要な要素の抽出を試み、その一環として介護保険施設利用者の口腔・栄養管理に関する支援の記録を用いた質的研究(以下質的研究)、および先進事例のヒアリングをもとにした専門職に対するアンケート調査(以下アンケート調査)を行うこととした。
研究方法
【研究1】対象は状態が安定し平成25年及び26年に調査に参加した要介護高齢者164名(平均年齢84.9±8.0歳)を対象とした。検討項目として年齢、性別、日常生活機能(Barthel Index:BI)、栄養評価(MNA-SF)、自立摂食力評価(SFD)、摂食嚥下機能(FOIS)、下腿周囲長(CC)、四肢筋肉量等の調査を行った。要介護高齢者における1年後の摂食嚥下機能を予測する因子について、血清Alb値、身体計測値の年齢性別を調整した残差を用いて検討した。
【研究2】①質的研究:介護老人福祉施設利用者83名に対して、経口摂取支援を行った際の管理栄養士と歯科衛生士の業務記録を分析対象とした。経口摂取支援は、口腔単独・栄養単独・口腔栄養複合の3群に分けて24か月間実施した記録をデジタルデータ化し、計量テキスト分析用ソフトKH Coderを使用してテキスト分析を行った。
②アンケート調査:要介護高齢者の経口摂取支援方法に関する研修会の参加者である医療・介護の専門職126名を対象とした。経口摂取のアセスメントに対する実施可能内容と課題、連携・コミュニケーションの方法の課題と対策について、自由記載で、要介護高齢者の経口摂取支援に関わる職種それぞれの課題や工夫を抽出した。
①②の結果を踏まえ、既存の知見の集積からマニュアルを作成した。またすべて研究は、東京都健康長寿医療センター研究部門倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【研究2】①質的研究:介護老人福祉施設利用者83名に対して、経口摂取支援を行った際の管理栄養士と歯科衛生士の業務記録を分析対象とした。経口摂取支援は、口腔単独・栄養単独・口腔栄養複合の3群に分けて24か月間実施した記録をデジタルデータ化し、計量テキスト分析用ソフトKH Coderを使用してテキスト分析を行った。
②アンケート調査:要介護高齢者の経口摂取支援方法に関する研修会の参加者である医療・介護の専門職126名を対象とした。経口摂取のアセスメントに対する実施可能内容と課題、連携・コミュニケーションの方法の課題と対策について、自由記載で、要介護高齢者の経口摂取支援に関わる職種それぞれの課題や工夫を抽出した。
①②の結果を踏まえ、既存の知見の集積からマニュアルを作成した。またすべて研究は、東京都健康長寿医療センター研究部門倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果と考察
【研究1】要介護高齢者における1年後の摂食嚥下機能を予測する因子について、血清Alb値、身体計測値を用いて検討した。初年度下腿周囲長(CC)と一年後のFOISでは強い相関が得られた(ρ=0.522、 p<0.001)。1年後のFOISともっとも強い相関を示したのは、CCであった。またCCは1年後のSFD、BI、MNA-SF、血清Alb値、四肢筋肉量とも相関関係を示した。CCは簡便な身体計測法でありながら、摂食嚥下機能の予知的なスクリーニング項目にもなりうることが示唆された。
【研究2】①質的研究:介入時期に関する分析では、「語」の使用パターンは、1-6ケ月と、7ケ月以降に2分化されていた。介入形態別分析では、口腔単独で使用されていた「語」と、複合で使用されていた語が類似していた。②アンケート調査:職種それぞれで方法は異なるものの、人間関係を取り持つ配慮を行っていた。同時に自信が提案した専門的な知識の伝達を連携相手に受け入れられるための工夫を行っていた。
要介護高齢者に対する経口摂取支援における多職種連携上の課題については、①職種間の共通言語の必要性や、②一定期間の腰を据えた取り組みの重要性、③それぞれの職種において課題意識は異なるものの、養成課程での学習機会の異なる専門職同志が有効な連携を行うための配慮、④それぞれの視点から人間関係を取り持つ配慮と、自身の提案した専門的な知識の伝達を連携相手に受け入れられるための工夫が抽出された。既存の知見の集積のみならず、これらの結果を取り入れ、「多職種経口摂取支援チームマニュアル(平成27年度版)」、家族や経口摂取支援の対象となる対象者の希望を取り入れ、施設での取り組みを説明するための「お食事に関するサポートのご説明(家族と本人への説明ツール)」を作成した。
【研究2】①質的研究:介入時期に関する分析では、「語」の使用パターンは、1-6ケ月と、7ケ月以降に2分化されていた。介入形態別分析では、口腔単独で使用されていた「語」と、複合で使用されていた語が類似していた。②アンケート調査:職種それぞれで方法は異なるものの、人間関係を取り持つ配慮を行っていた。同時に自信が提案した専門的な知識の伝達を連携相手に受け入れられるための工夫を行っていた。
要介護高齢者に対する経口摂取支援における多職種連携上の課題については、①職種間の共通言語の必要性や、②一定期間の腰を据えた取り組みの重要性、③それぞれの職種において課題意識は異なるものの、養成課程での学習機会の異なる専門職同志が有効な連携を行うための配慮、④それぞれの視点から人間関係を取り持つ配慮と、自身の提案した専門的な知識の伝達を連携相手に受け入れられるための工夫が抽出された。既存の知見の集積のみならず、これらの結果を取り入れ、「多職種経口摂取支援チームマニュアル(平成27年度版)」、家族や経口摂取支援の対象となる対象者の希望を取り入れ、施設での取り組みを説明するための「お食事に関するサポートのご説明(家族と本人への説明ツール)」を作成した。
結論
要介護高齢者の機能低下を予測する因子に関する基礎情報は未だ少なく、今回CCといった予測因子が示されたことは、要介護高齢者の支援に関わるケア提供者に対して有益な基礎資料となることが示唆された。また質的な検討において抽出された職種間の連携に必要な要素は、多職種経口摂取支援チームマニュアルが具備すべき要件として、効果的な多職種連携に寄与する可能性があると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2017-10-03
更新日
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