地域要因に基づいた在宅医療・介護連携推進に関する研究-汎用性の高い在宅医療・介護連携推進・ガイドラインの作成

文献情報

文献番号
201514004A
報告書区分
総括
研究課題名
地域要因に基づいた在宅医療・介護連携推進に関する研究-汎用性の高い在宅医療・介護連携推進・ガイドラインの作成
課題番号
H27-長寿-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
葛谷 雅文(名古屋大学未来社会創造機構)
研究分担者(所属機関)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部高齢医学)
  • 三浦 久幸(国立長寿医療研究センター在宅連携医療部)
  • 飯島 勝矢(東京大学高齢社会総合研究機構)
  • 鈴木 裕介(名古屋大学医学部附属病院地域連携・患者相談センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会の持続可能な地域の社会保障体制構築のため、医療介護総合確保推進の考えに則り医療・介護連携推進事業が各市区町村で展開されている。自治体レベルでの事業展開における問題点として、医療・介護連携に関係する職能団体等との連携体制の構築における困難が予想される。当該研究の主たる目的は、事業推進のために必要なプロセスや克服すべき課題について俯瞰的、客観的な調査分析を行うことを目的としている
研究方法
【全体研究】全国の自治体で進行中の医療・介護連携推進事業の担当者を対象に、関係各団体との連携の現状および規定された実施項目の進捗率に関する調査を施行しその結果を分析した。国立社会保障・人口問題研究所の調査において2015年時点での75歳以上の人口比率が15%を超えている自治体(184か所:主に郡部)、2015年から2025年までの75歳以上の人口増加率が60%を超えると予測されている自治体(53か所:主に都市およびその周辺部)の当該事業担当者に対して、調査を実施しその回答結果を分析した。
【個別研究】
1)医療資源の少ない地域における事業分析
医療資源が少なく、連携事業がほとんど進んでいない市町村の把握を行った。進捗管理や対応に向けての助言の同意を得た新城市を対象自治体として、在宅医療整備における、課題抽出と今後の方向性について話し合った。
2)医療資源の豊富な地域における事業分析
東京都三鷹市における在宅医療・介護連携推進事業の進捗について、分担研究者自身が在宅医療委員会に参加し、調査および総括を行った。
3)タイムスタディによる事業担当者の業務分析
千葉県柏市の在宅医療・介護連携推進事業を所管する地域医療推進室の職員2名を対象にタイムスタディを実施した。記録した業務内容を「内容」「相手」「在宅医療・介護連携推進事業項目」によって分類し、コーディングを行った。
4)都市部における在宅医療支援機能構築の試み
 名古屋市医師会の在宅医療・介護連携推進事業と協働で、在宅療養患者の入院時のアセスメントシステムの考案と実施に向けた環境整備を行った。

結果と考察
全国237自治体の医療・介護連携推進事業担当者宛てに調査票を送付し、75歳以上の高齢者比率が15%を超える自治体 76か所(回収率 41.3%)、今後10年で75歳以上の増加率が60%を超えると予測される自治体31か所(回収率58.5%)から回答を得た。関連団体との連携状況に関しては、医師会との連携は都市部において進んでいる傾向がうかがわれたのに対して、看護団体との連携は地域を問わずあまり進んでいない傾向が観察された。地域包括支援センターとの連携は概ね進んでいるが連携と事業の進捗との相関は概ね低く、地域包括支援センターと行政は組織的には連携し易い側面はある一方で、事業推進のための協働体制や組織横断的な機能が既存の業務に賦与されていない可能性が示唆された。各達成項目の進捗に関しては、地域の医療・介護資源の把握の項目以外の進捗率は50%以下であった。事業項目ごとの進捗率と連携の程度の相関の結果からは、都市部においては各種団体との連携が事業の進捗につながりにくい可能性が示唆された。分担研究より、都市部は関係する各職種の連携を行政が主体となって推進すること、郡部は限られた資源を有効に活用するための重点的な施策を講じることの必要性が確認された。事業担当者のタイムスタディの結果からは医療・介護関係者の研修、切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進、在宅医療・介護連携に関する相談支援に多く時間が費やされていることがわかった。
結論
研究の結果、医療介護連携推進事業における当面の課題が明らかにされたと考える。事業の進捗に関して、切れ目のない連携体制の構築、医療・介護に関する相談支援、関係市区町村の連携に関しては未着手とする回答が多くみられたことは今後の事業進捗の指標として同項目を評価の目安とできる可能性が調査結果からうかがわれた。タイムスタディの結果からも事業推進においては関係職種団体との関係づくり、および従事者間や関係職種団体間の意見調整が中心的な役割として認識されており、行政における事業担当者の役割として調整機能を担う部署および人材の配置を行うことを提案していく方向性が確認された。相談支援業務に関して、次年度以降、各自治体における業務の定量的評価や事業内容の質的分析により、事業推進の進捗状況の指標として活用が可能かどうか検討を行い、その結果を事業担当者に提供することができると考える。また本年度に得られた知見をもとに、過去の報告、や事業成果を系統的に俯瞰することにより、現在までにどこまでが明らかにされ、今後何を明らかにしていく必要があるのかを探索的に調査し総括することで事業推進のための提案を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201514004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,194,257円
人件費・謝金 4,678,129円
旅費 621,790円
その他 1,206,688円
間接経費 2,300,000円
合計 10,000,864円

備考

備考
自己資金 864円

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-