予防接種健康被害者実態調査に関する研究

文献情報

文献番号
199800503A
報告書区分
総括
研究課題名
予防接種健康被害者実態調査に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
竹中 浩治
研究分担者(所属機関)
  • 前川喜平(東京慈恵会医科大学)
  • 秋山〓子(川崎医療福祉大学)
  • 池堂政満(福祉施設共済会)
  • 斎藤勉(予防接種リサーチセンター)
  • 藤井俊介(予防接種被害者の会)
  • 土屋優子(予防接種リサーチセンター)
  • 辻宣子(予防接種リサーチセンター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
被害者のうち在宅被害者は、自宅において同居する家族に介護、療育されてい
るが、その家族の構成や事情により種々な状況におかれている。特に介護者である親族
(主として父・母)の高齢化とともに介護の負担が大きくなり、ましてや発病、死亡など
の事情の変化により被害者が窮地に立たされる事態が発生することもあり、この種の問題
に深い懸念をもっている被害者家族が少なくない。
従って、被害者本人やその家族がおかれている状況、各種サービスの利用状況、被害救
済制度に対する要望等を調査し、その実態を把握し、救済制度の充実、殊に現在「予防接
種法」の見直しが行われている検討作業に反映させることとする。
研究方法
調査結果を実効あるものとするために(1)研究班において調査の対象、項目、
方法並びに調査結果の評価等調査全般について検討する。(2)調査票を作成のうえは、
調査票を被害者家族(約400 )に送付し、回答を求める(郵便)。(3)郵便による回答
の回収ができなかった家族については、全国の地方保健福祉相談員が各家庭を訪問し、面
接調査による回答を収集する。(4)上記(2)及び(3)の回答をとりまとめ、保健福
祉分野の統計調査専門家により集計解析を行う。(5)集計結果について、研究班におい
て総合的に評価をし、取りまとめを行う。
結果と考察
調査は予防接種による健康被害として認定を受け、障害児養育年金又は障害
年金を受給している 419人を対象とした。調査の期間は、平成10年12月1日より平成11年
3月31日までとした。調査の方法は、別に定める「予防接種健康被害者調査票」を調査対
象者 419人に送付し書面によるアンケート調査を実施した。
今回の調査は大別すると次の6つの事項である。
・ 本人と家族の現在の状況について
・ 現在利用されている福祉サービスについて
・ 地域との関わりについて
・ 今後について
・ 今後必要とする福祉サービスについて
・ 要望事項について
調査票の回答状況は対象者 419人に発送したが回答のあった者は 384人(うち、全項目無
回答2人)であり、回答率91.6%であった。
本人と家族の現在の状況は、78%の方が医療・療育を必要としている状況がうかががわれ
る。
その生活を支えているのは介護を含めてほとんどが家族であり、特に母親がその役割を担
っている。
本人の高齢化に比例して介護者も高齢化しており、介護者をどう支援していくかが今後の
重要な課題である。
現在利用している福祉サービスについては、「利用したことがない」が「利用したことが
ある」を上回っている。
福祉サービスを利用しない理由については、自分のことは自分で解決したいという考え方
もあるが、一方において地域の福祉サービスが充分でないか、あるいは福祉情報が個人の
ところまで十分に届いていない状況も示している。
また、医療を受ける場合や施設利用に関して困ったことについては、緊急時に入院できる
病院・施設がない、適切な治療が受けられないという不安を持っている回答が多い。
地域でちからになってもらえる人の存在は、「いない」が「いる」を上回っている。地域
で家族の会に入ってない理由は何らかの理由があると回答した人は30%で、特に理由はな
いと回答した人及び無回答が70%となっている。
今後について不安を感じているかどうか聞いたところ大半が不安を感じていると回答した。
その理由は、障害を理解した介護者がいない、介護できる親族等がいない、必要な時に施
設で受け入れてもらえるか不安という回答が多かった。
今後介護を必要とする状況で心配していることについては在宅、施設・病院に関わらず何
らかの心配を抱いている人が多く、両親とも介護できなくなることを最も不安に思い、母
親のみの介護になった場合についても心配している状況がうかがわれた。全体的には地域
の福祉サービスを利用したいがどれだけニーズに応えてもらえるか心配、あてがない、国
に考えて欲しい、又、自宅改造する、自分達で訓練する、地域で生活できる場をつくるな
どして在宅を続けたいという回答もあった。
その他に答えた中でも施設・福祉サービスを利用したい、親戚知人、ヘルパー利用や一時
的なら親戚に依頼する、長期になった場合はそれ以降のことはわからないという回答があ
った。
今後必要とするサービスについては親子で入所できる施設については希望する者は35%で
あった。認定等級別では1級が42%と高い要望を示している。主たる介護者の年齢30~40
歳代では希望する割合が低く、50歳以上では53%が希望し、また主たる介護者が疲労ぎみ
あるいは病弱と答えた者の49%でも希望すると回答している。本人の年齢からみると本人
が50歳以上では14%と希望が低く、本人の年齢が19. 20歳代では42%、40歳代では40%と
高くなっている。
本人の行動面との関連でみると、本人が多動である場合の55%、日常生活面との関連では、
全体的に排泄介助をし、また入浴サービスを利用している介護者に特に高い回答がみられ
た。
一方、親子で入所できる施設についてのイメージからの回答をみると、老人施設と同一敷
地内或いは同施設に同居のイメージを抱く者が26%、在宅サ-ビスがあれば不要と答えた
者は、28%となっていた。
親子で入所できる施設は在宅サービスがあれば不要と答えた中で、現在在宅者は35%、認
定等級では2級と3級が30%、主たる介護者が50歳以上では38%、本人の年齢が19・20歳
代では34%、病弱な主たる介護者と排泄時要介助では30%となっていた。その他の内容で
は、本人の障害が重いので老人との同居は困難で無理、年齢レベルに応じた社会参加を考
慮すべきでこの案に賛成しかねるという回答や現状では実現を疑問視する回答もみられた。
入所できる施設の条件は現在の居住地域内あるいは県内にあることの回答が全体の90%を
占めている。
入所施設を必要とする回答は半数を占め、その条件は医療が充実していることを要望して
いる。又、いざという時安心して利用できる施設が近くにあり、地域で充実した福祉サー
ビスを利用して今の生活を続けたいという期待が読みとれる。
結論
問題の解決は地域の中で図らなければならないので、地域の中で福祉サービスを活
用していくための援助は欠かせない援助課題と考えられる。
リサーチセンターの対応としては情報の収集に努め、関係機関との連携などを図り各都道
府県の保健福祉相談員の活動に有効な支援体制を考える必要がある。さらに介護者が日夜
経験している労苦に関して心理的な支えになること、及び地域の社会福祉サービスに関し
て必要なときに利用できるように支援体制を進めることが必要と考えられる。

公開日・更新日

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