文献情報
文献番号
201512005A
報告書区分
総括
研究課題名
脳死患者の家族に選択肢提示を行う際の対応のあり方に関する研究
課題番号
H26-難治等(免)-一般-104
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 荒木 尚(日本医科大学付属病院救命救急科)
- 織田 順(東京医科大学救急・災害医学分野)
- 加藤 庸子(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院脳神経外科)
- 久志本 成樹(東北大学 大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学分野)
- 小中 節子(国立研究開発法人国立循環器病研究センター病院)
- 坂本 哲也(帝京大学医学部救急医学講座)
- 田中 秀治(国士舘大学体育学部、同大学院救急システム研究科)
- 名取 良弘(飯塚病院副院長、脳神経外科部長)
- 山勢 博彰(山口大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
8,350,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関変更:
研究分担者 小中節子
公益社団法人日本臓器移植ネットワーク → 国立研究開発法人国立循環器病研究センター病院移植医療部(平成27年9月28日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
脳死下、及び心停止後の臓器提供に関する選択肢提示の方法が、臨床現場の感覚と大きく乖離していることが指摘されている。本研究では脳死下、あるいは心停止後の臓器提供の手順、とくに選択肢提示に関しての問題点を検討し、より円滑な方法を提示することを目的とした。
研究方法
以下に記載した各々の視点から研究を行った。①小児脳死例における選択肢提示の諸問題に関する研究、②クリニカルパスとしての選択肢提示の時期に関する研究、③地域の共通認識としての選択肢提示に関する研究、④コーディネーターの視点からみた選択肢提示の諸問題に関する研究、⑤看護師の視点からみた選択肢提示の諸問題に関する研究、⑥組織提供に際しての選択肢提示に関する諸問題に関する研究、⑦行政や社会と連携して選択肢提示に関する研究、⑨看護師の視点からみた選択肢提示のあり方に関する研究、⑧死体腎移植における選択肢提示の諸問題に関する研究、⑨選択肢提示のあり方に関する研究とした。
結果と考察
①小児に脳死例における選択肢提示の諸問題に関する研究
親への対応や虐待の有無の確認の手続き等で選択肢提示は成人と異なった方法を行う必要がある。セミナーを開催し、医師や看護師などの視点からその心情を配慮した選択肢提示のあり方を提案した。
②クリニカルパスとしての選択肢提示の時期に関する研究
臓器・組織提供の経験の多い施設の医師に医師へのインタビューでは、選択肢提示の説明医師が長時間を割き、納得を得るような実態が明らかになった。一方で、説明は「情報提供」のみで良いのかもしれない。選択肢提示の目標は、「臓器提供の承諾を得る」ことではなく、家族に「臓器提供という道もある」ということを知らせる「情報提供」がその本質であると考えられた。
③地域の共通認識としての選択肢提示に関する研究
日本臓器移植ネットワークに施設名公表を承諾した371施設を対象にアンケート調査を実施した。オプション提示の施行に関しては、家族の受け入れ状況を勘案しつつ、基本的には提示するとの回答は106施設で、その際の主治医以外の医療スタッフ同席は、必ず同席する92施設、同席するように努める68施設、基本的には同席しない31施設であった。選択肢提示への認識と過程は医療者による配慮が影響することから、画一的に規定することはできないものと考えられる。
④コーディネーターの視点からみた選択肢提示の諸問題に関する研究
27年度は、昨年度の研究を参考にして構成した調査項目において得た知見をもとに選択肢提示に関連する項目を重点的に検討し、ドナー家族への調査項目を作成することができた。今後はドナー家族調査実施し、家族にとっての適切な臓器提供の選択肢提示に関する方策やCoの適切なドナー家族対応についての提言できると思われる。
⑤看護師の視点からみた選択肢提示のあり方に関する研究
看護師の役割は「患者と家族の時間を確保」「終末期の家族ケアの提供」「チームの間で情報の共有」「患者と家族の意思を尊重」「家族の擁護者としての役割」である。そのため「移植医療に関する情報提供」など、目的・目標を表現した語に置き換えることを考慮すべきとされた。
⑥組織提供に際しての選択肢提示に関する諸問題に関する研究
患者側とっては組織と臓器の区別は困難で、脳死下臓器提供と一連として捉えられる。選択提示の組織と臓器提供の共通点や相違点を整理し、本人や家族意思が円滑に反映できるような手続きや方法を検討した。
⑦行政や社会と連携して選択肢提示に関する研究
市民ホールでの啓発活動、本来あるべき情報発信の方法、具体的には臓器提供に関する意思表示の在り方、例えばリーフレット作成など情報発信方法や主体の在り方等を検討した。
⑧死体腎移植における選択肢提示の諸問題に関する研究(加藤)
院内体制の整備状況は実績のある施設でさえも、選択肢提示の方法は多様である。そのような中で、1)主治医の負担軽減、2)パンフレット等の整備、活用、3)院内コーディネーターの活躍などの重要性が示された。
⑨選択肢提示のあり方に関する研究(横田、坂本)
脳死死下臓器提供を経験、あるいは経験する可能性のある救急・脳外科施設の医師、看護師、臨床検査技師等を対象にセミナーを開催し、選択肢提示や提供の際の手順と今後改善すべき点を検討した。たとえば、事前意思が判明している場合、身内がいない場合、「脳死とされうる状態の判断」の省略を提案した。
親への対応や虐待の有無の確認の手続き等で選択肢提示は成人と異なった方法を行う必要がある。セミナーを開催し、医師や看護師などの視点からその心情を配慮した選択肢提示のあり方を提案した。
②クリニカルパスとしての選択肢提示の時期に関する研究
臓器・組織提供の経験の多い施設の医師に医師へのインタビューでは、選択肢提示の説明医師が長時間を割き、納得を得るような実態が明らかになった。一方で、説明は「情報提供」のみで良いのかもしれない。選択肢提示の目標は、「臓器提供の承諾を得る」ことではなく、家族に「臓器提供という道もある」ということを知らせる「情報提供」がその本質であると考えられた。
③地域の共通認識としての選択肢提示に関する研究
日本臓器移植ネットワークに施設名公表を承諾した371施設を対象にアンケート調査を実施した。オプション提示の施行に関しては、家族の受け入れ状況を勘案しつつ、基本的には提示するとの回答は106施設で、その際の主治医以外の医療スタッフ同席は、必ず同席する92施設、同席するように努める68施設、基本的には同席しない31施設であった。選択肢提示への認識と過程は医療者による配慮が影響することから、画一的に規定することはできないものと考えられる。
④コーディネーターの視点からみた選択肢提示の諸問題に関する研究
27年度は、昨年度の研究を参考にして構成した調査項目において得た知見をもとに選択肢提示に関連する項目を重点的に検討し、ドナー家族への調査項目を作成することができた。今後はドナー家族調査実施し、家族にとっての適切な臓器提供の選択肢提示に関する方策やCoの適切なドナー家族対応についての提言できると思われる。
⑤看護師の視点からみた選択肢提示のあり方に関する研究
看護師の役割は「患者と家族の時間を確保」「終末期の家族ケアの提供」「チームの間で情報の共有」「患者と家族の意思を尊重」「家族の擁護者としての役割」である。そのため「移植医療に関する情報提供」など、目的・目標を表現した語に置き換えることを考慮すべきとされた。
⑥組織提供に際しての選択肢提示に関する諸問題に関する研究
患者側とっては組織と臓器の区別は困難で、脳死下臓器提供と一連として捉えられる。選択提示の組織と臓器提供の共通点や相違点を整理し、本人や家族意思が円滑に反映できるような手続きや方法を検討した。
⑦行政や社会と連携して選択肢提示に関する研究
市民ホールでの啓発活動、本来あるべき情報発信の方法、具体的には臓器提供に関する意思表示の在り方、例えばリーフレット作成など情報発信方法や主体の在り方等を検討した。
⑧死体腎移植における選択肢提示の諸問題に関する研究(加藤)
院内体制の整備状況は実績のある施設でさえも、選択肢提示の方法は多様である。そのような中で、1)主治医の負担軽減、2)パンフレット等の整備、活用、3)院内コーディネーターの活躍などの重要性が示された。
⑨選択肢提示のあり方に関する研究(横田、坂本)
脳死死下臓器提供を経験、あるいは経験する可能性のある救急・脳外科施設の医師、看護師、臨床検査技師等を対象にセミナーを開催し、選択肢提示や提供の際の手順と今後改善すべき点を検討した。たとえば、事前意思が判明している場合、身内がいない場合、「脳死とされうる状態の判断」の省略を提案した。
結論
家族への対応は、その年齢や属性、地域の特徴などを十分考慮し、さらに臓器提供者が小児の場合は特段の配慮が必要である。事前意思が判明している場合、身内がいない場合、「脳死とされうる状態の判断」の省略を提案した。
公開日・更新日
公開日
2016-07-19
更新日
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