適切な臓器提供を可能とする院内体制整備とスタッフの教育研修プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
201512003A
報告書区分
総括
研究課題名
適切な臓器提供を可能とする院内体制整備とスタッフの教育研修プログラムの開発に関する研究
課題番号
H26-難治等(免)-一般-102
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 篠崎 尚史(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)
  • 藤田 民夫(名古屋記念病院)
  • 有賀 徹(昭和大学 医学部 救急医学)
  • 高原 史郎(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 相川 厚(東邦大学 医学部 腎臓学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 国際移植学会イスタンブール宣言(2008年)、WHOヒト臓器移植に関する指導指針(1991年、2010年改定)では、各国は移植用臓器の自給自足体制の確立が求められている。日本では、臓器移植法改定(2010年)により臓器提供要件が緩和され、臓器提供の促進が図られたものの、人口100万人あたりのドナー数は1人以下と少なく、依然として低迷している。反面、世論調査(2013年)においては43%が自分の死後臓器提供を希望しており、これはヨーロッパ諸国と同等の水準である。日本におけるドナー不足の問題は、潜在的なドナーが多く発生すると想定される急性期病院におけるシステムが十分に確立していないことが影響していると想定される。
 本研究では、「ドナーを安定的・長期的に得ることが可能な院内体制構築のための標準的な手法の開発・人材の育成」を最終的な目的とし、下記の3点の特徴を有している。
(1)臓器提供者に対象を限定せず、急性期病院の終末期患者全体のケアの質向上を目的とする
(2)データの収集・解析から、問題点を抽出し、現場に改善をもたらすフィードバックの方法、院内体制の構築を可能とする担当者の研修プログラムの開発
(3)多くの病院が導入可能で、医療の質向上に寄与する仕組みの構築

研究方法
 上記の目的を達成するために以下の4点の活動を行った。
(ア)4日間の院内体制の構築にフォーカスを当てた研修プログラム(QMセミナー)の開発と実証
(イ)1日間のDAP(Donor Action Program)の導入・データ解析・改善策の立案・導入にフォーカスを当てた研修プログラム(DAP導入セミナー)の開発と実証
(ウ)組織診断ツール(MRR:Medical Record Review、HAS:Hospital Attitude Survey)としてのDAPのインフラ整備に相当するDAPのデータ管理
(エ)TPMのe-learningの日本での導入可能性の検討
結果と考察
 QMセミナー(2日間×2回の4日間コース)を36人の受講者(2015年度)を対象に実施した。プログラムは、講義と演習(グループワーク)で構成し、移植医療、スキル、マネジメントの大きく3つの内容に分類され、多くがマネジメントの内容で構成されている。小テストは2回に分けて実施したセミナーの其々前後で2回実施し、事前と比較して事後において全体的な正答率の向上が認められた。アンケート調査(理解度・難易度・推奨度)では、セミナーにおける各講義・演習の内容はほぼ理解することができており、当該セミナーの内容を推奨する傾向である評価が得られたことが明らかとなった。当該セミナーにおける最終的な効果指標は、行動変容にあることを重視し、今後も継続的に参加者が病院においてどのような仕組みの改善・構築を行ったかについて、追跡調査を行うことが重要といえる。
 QMセミナーの既参加者及び院内体制整備の実施病院の職員23名(2015年度)を対象としたDAP導入セミナー(1日間コース)を実施した。プログラムは、DAPの概要、HAS・MRRの調査法、グループワークの進め方、病院における取り組みの事例紹介、QMセミナー参加者へのフォローアップアンケートの報告、グループワークから構成される。小テストでは、事前と比較して事後の正答率が全体的に向上していた。また、セミナーの各講義・演習内容についての理解度、難易度、推奨度を各5段階評価のアンケート調査を実施したところ、理解度、推奨度は全ての項目で4以上であり、講義の内容は理解でき、また、他の人に推奨できる内容の講義であることが明らかとなった。
 2015年度はHASが5病院より3517件が、MRRは4病院より604件のデータが得られた。2015年1月末までの件数は、HASが48,749件、MRRが10,004件であった。HASの結果からは、一般的に臓器移植には6-8割が賛成と好意的な回答が多く、5割が死後自分の臓器提供を希望しているものの、看護師・その他事務職等においては脳死について懐疑的な者が少なくない事、ドナー候補者の特定や臓器提供の同意を得るために必要なな能力・知識については、医師で2割弱、看護師ではごく少数であることが明らかとなった。
結論
 本研究により、標準的な研修プログラムを開発し、インフラであるデータベース及び各医療機関での事例についての情報共有の場の構築とともに整備を図ることにより、QMセミナー既受講者の所属する医療機関に院内体制整備が適切になされるならば、現行の5倍程度のドナーが得られることが期待される。また、DAPのデータベースは、継続的に収集したHAS及びMRRのデータの解析を実施することにより、全国データとして経時的な結果を提示していくことは意義があるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201512003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,480,000円
(2)補助金確定額
6,480,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,091,137円
人件費・謝金 1,100,740円
旅費 2,214,609円
その他 593,514円
間接経費 1,480,000円
合計 6,480,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-