文献情報
文献番号
201512002A
報告書区分
総括
研究課題名
造血幹細胞移植ドナーの安全性確保とドナーの意向を尊重した造血細胞の利用の促進並びに相互監査体制の確立
課題番号
H26-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 造血細胞移植センター)
研究分担者(所属機関)
- 日野 雅之(大阪市立大学大学院医学研究科血液腫瘍制御学)
- 上田 恭典(倉敷中央病院血液内科)
- 田中淳司(東京女子医科大学血液内科学講座)
- 西田 徹也(名古屋大学医学部附属病院血液内科)
- 熱田 由子(一般社団法人日本造血細胞移植データセンター)
- 飯田 美奈子(愛知医科大学医学部造血細胞移植振興寄附講座)
- 高梨 美乃子(日本赤十字社血液事業本部 )
- 大橋 一輝(がん・感染症センター都立駒込病院・血液内科)
- 室井 一男(自治医科大学附属病院輸血・細胞移植部・無菌治療部)
- 矢部 普正(東海大学医学部再生医療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」の成立により、ドナーの人権と安全性の確保及び造血幹細胞の品質管理を通じ、わが国の患者に平等に最善の時期に最適な移植ソースを利用した移植を受けることができるよう努めることが義務付けられた。本研究では日本造血幹細胞移植ドナーの安全性の確保をメインテーマとし、造血幹細胞採取の安全性の向上・標準化を行う。合わせてドナーの人権、安全性を担保したうえでの造血幹細胞採取の効率化、造血幹細胞産物の凍結、品質管理、国際交換、細胞治療への応用、ドナー・レシピエントDNAバンクのための調査およびシステム作りを行う。今年度は1年目に行った本邦および各国の調査で明らかとなった課題に対する対応策を策定することを目標とし、3年目には対応策の評価を行い、必要に応じて改善を行うこととする。自家移植における採取事故を受け、再発予防、全例登録へ向けての取り組みを新たな課題とする。1年目に行った本邦および各国の現状について訪問調査、文献調査、アンケート調査などをもとに把握した課題を、2年目には、各研究者は問題点を解決する方法を作成し、研究協力者である日本骨髄バンク、日本赤十字社とともに、学会、全国の移植医師が集まる関連合同班会議で、課題に対する施策案を発表し、討論を行う。施策が定まったものから順次開始する。
研究方法
1造血幹細胞移植ドナーの安全性確保とQOL向上
1.ドナー安全情報の収集・解析・現場への情報発信
2.URPBSCTドナーの安全とQOL向上のための成績の解析
3.造血幹細胞提供の最適化
4.造血幹細胞移植採取の効率化・適正化
5.相互監査システム(日本・アジア版FACT/JACIE/ACTA)の確立
2ドナーの意向に配慮した造血幹細胞の細胞治療・研究利用についての基盤整備
6.細胞治療の基盤整備
7.ドナー・レシピエントDNAバンク
1.ドナー安全情報の収集・解析・現場への情報発信
2.URPBSCTドナーの安全とQOL向上のための成績の解析
3.造血幹細胞提供の最適化
4.造血幹細胞移植採取の効率化・適正化
5.相互監査システム(日本・アジア版FACT/JACIE/ACTA)の確立
2ドナーの意向に配慮した造血幹細胞の細胞治療・研究利用についての基盤整備
6.細胞治療の基盤整備
7.ドナー・レシピエントDNAバンク
結果と考察
平成27年度は班員の会議を7月、1月に行い、課題の進捗状況を報告。
1.日本造血細胞移植学会で行っていた血縁ドナー登録が、新たに発足した日本造血細胞移植データセンター(JDCHCT)に引き継ぎが完了。引き続き2015年度の血縁者間移植ドナー有害事象を公開。非血縁、血縁のデータベースの一元化に向けての調査を開始するとともに、アクシデントの原因調査と再発予防についての新しいシステムの構築を開始。
2.H26年6月に終了した観察研究、ドナーQOL研究の解析をし、複数の制限解除を行った。重篤な有害事象などドナー安全情報を公開、採取施設を91まで拡大。
3.国内の複数の臍帯血バンクに対して最適化に向けての講習会開催。
4.適切な末梢血幹細胞採取方法の実施計画書を作成し、凍結に関するアンケートを実施・解析、班会議で発表。
5.国内施設での「院内で行われる血液細胞処理のための指針」遵守状況について改訂版を作成。
6.非血縁者造血細胞を利用した細胞障害性T細胞治療についての臨床研究を施行。
7.米国CIBMTRのResearch Samples Repositoryの調査を行い、骨髄バンク検体保存事業との統合について、現在増えつつある血縁者間のハプロ適合移植における、兄弟間の細胞保存の必要性について周知。
UR-PBSCTについては、観察研究が終了し、その安全性を確認でき、ドナーのHLA条件並びに移住地制限の緩和を行い、UR-BMTと同じ条件とすることができた。海外での長期成績が骨髄より不良なことがわかり、来年度も引き続き観察を継続していく。ドナー安全については、血縁者は学会データセンターが行う体制が完了したが、非血縁は骨髄バンクが収集ならびに対応をしている。これを一元化できるかの討論を進める必要がある。さらに採取時の有害事象は自家造血幹細胞移植でも起こっている可能性があり、包括的有害事象のデータベースが必要である。これらは引き続き国際共同を進めていく必要がある。血縁末梢血幹細胞採取において現在でも多くの施設で凍結を行っていることが明らかになった。凍結のメリットと、デメリットについて、再度議論していくことが必要である。ドナー・レシピエントのDNAバンク設立に向けては、DNA情報を含む細胞やDNAも情報の一つとして、日本造血細胞移植データセンターでの管理が望ましいと考えられる。
1.日本造血細胞移植学会で行っていた血縁ドナー登録が、新たに発足した日本造血細胞移植データセンター(JDCHCT)に引き継ぎが完了。引き続き2015年度の血縁者間移植ドナー有害事象を公開。非血縁、血縁のデータベースの一元化に向けての調査を開始するとともに、アクシデントの原因調査と再発予防についての新しいシステムの構築を開始。
2.H26年6月に終了した観察研究、ドナーQOL研究の解析をし、複数の制限解除を行った。重篤な有害事象などドナー安全情報を公開、採取施設を91まで拡大。
3.国内の複数の臍帯血バンクに対して最適化に向けての講習会開催。
4.適切な末梢血幹細胞採取方法の実施計画書を作成し、凍結に関するアンケートを実施・解析、班会議で発表。
5.国内施設での「院内で行われる血液細胞処理のための指針」遵守状況について改訂版を作成。
6.非血縁者造血細胞を利用した細胞障害性T細胞治療についての臨床研究を施行。
7.米国CIBMTRのResearch Samples Repositoryの調査を行い、骨髄バンク検体保存事業との統合について、現在増えつつある血縁者間のハプロ適合移植における、兄弟間の細胞保存の必要性について周知。
UR-PBSCTについては、観察研究が終了し、その安全性を確認でき、ドナーのHLA条件並びに移住地制限の緩和を行い、UR-BMTと同じ条件とすることができた。海外での長期成績が骨髄より不良なことがわかり、来年度も引き続き観察を継続していく。ドナー安全については、血縁者は学会データセンターが行う体制が完了したが、非血縁は骨髄バンクが収集ならびに対応をしている。これを一元化できるかの討論を進める必要がある。さらに採取時の有害事象は自家造血幹細胞移植でも起こっている可能性があり、包括的有害事象のデータベースが必要である。これらは引き続き国際共同を進めていく必要がある。血縁末梢血幹細胞採取において現在でも多くの施設で凍結を行っていることが明らかになった。凍結のメリットと、デメリットについて、再度議論していくことが必要である。ドナー・レシピエントのDNAバンク設立に向けては、DNA情報を含む細胞やDNAも情報の一つとして、日本造血細胞移植データセンターでの管理が望ましいと考えられる。
結論
ドナー安全という移植医療の根幹をなす課題について、現在ある問題点を洗い出すことができた。ドナーソース別に異なる安全情報の管理、対策作成の一元化が課題である。造血幹細胞採取方法の適正化、相互監査の推進は、ドナー安全の見地からだけでなく、移植成績の向上に必要であり、さらには今後発展していく細胞療法を本邦から発信していくために必要である。
公開日・更新日
公開日
2016-06-01
更新日
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