文献情報
文献番号
201511003A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の関節リウマチ診療標準化のための研究
課題番号
H26-免疫-指定-021
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
宮坂 信之(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学)
研究分担者(所属機関)
- 天野 宏一(埼玉医科大学総合医療研究センターリウマチ・膠原病内科)
- 池田 啓(千葉大学医学部附属病院アレルギー・膠原病内科)
- 伊藤 宣(京都大学大学院医学研究科整形外科学講座)
- 遠藤 平仁(公益財団法人湯浅報恩会寿泉堂綜合病院)
- 大野 滋(横浜市立大学付属市民総合医療センター)
- 小笠原 倫大(順天堂大学膠原病内科)
- 金子 祐子(慶應義塾大学医学部リウマチ内科)
- 川上 純(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座)
- 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科免疫内科学)
- 岸本 暢将(聖路加国際大学聖路加国際病院アレルギー膠原病科)
- 小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科内科学講座第二内科)
- 小嶋 俊久(名古屋大学医学部附属病院整形外科)
- 小嶋 雅代(千田 雅代)(名古屋市立大学大学院医学研究科医学・医療教育学分野)
- 酒井 良子(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターリウマチ性疾患薬剤疫学研究部門)
- 鈴木 毅(日本赤十字社医療センターアレルギー・リウマチ科)
- 瀬戸 洋平(東京女子医科大学八千代医療センター)
- 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
- 西田 圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科人体構成学整形外科)
- 針谷 正祥(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターリウマチ性疾患薬剤疫学研究部門)
- 平田 信太郎(産業医科大学医学部第一内科学講座)
- 深江 淳(北海道内科リウマチ科病院)
- 松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院リウマチ科)
- 松下 功(富山大学医学部整形外科)
- 山中 寿(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属研究機関および職名の変更
1)針谷正祥(研究分担者):東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害監視学講座 寄附講座教授(平成27年8月15日まで) → 東京女子医科大学附属リウマチ痛風センターリウマチ性疾患薬剤疫学研究部門 特任教授(平成27年8月16日以降)
2)酒井良子(研究分担者):東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害監視学講座 寄附講座助教(平成27年7月31日まで) → 東京女子医科大学附属リウマチ痛風センターリウマチ性疾患薬剤疫学研究部門 特任助教(平成27年8月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の関節リウマチ診療の標準化を目指して、1)エビデンスに基づいた一般医向け診療ガイドラインの作成、2)リウマチ診療の地域格差、施設間格差などに関する実態調査のための疫学データベースの構築、3)医療の標準化・及び拠点病院の構築、4)リウマチ対策の実施状況の調査と評価、などの研究活動を多角的に行う。
研究方法
1)RA診療ガイドライン作成分科会:本年度は「関節リウマチ診療ガイドライン2014」に基づき、「一般医向けガイドライン」作成の準備をした。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会:本年度は、Japan Medical Data Center Claims Data(JMDC Claims Data)を用いてRA群(6,712名)と非RA群(33,560名)での脳心血管疾患と骨折の罹患率を比較し、RAとこれらの合併症との関連性を解析した。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:日本リウマチ学会と連携を行いながら、日本リウマチ学会各支部において超音波検査講習会を実施し、中級者向けの講習会を行った。関節超音波検査を用いた「早期関節リウマチ分類(診断)基準」の確立の試みのために、過去1年間に早期関節炎のために受診した127症例を後ろ向きに評価し、RA早期診断における超音波検査の意義を検証した。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会:本年度は、Japan Medical Data Center Claims Data(JMDC Claims Data)を用いてRA群(6,712名)と非RA群(33,560名)での脳心血管疾患と骨折の罹患率を比較し、RAとこれらの合併症との関連性を解析した。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:日本リウマチ学会と連携を行いながら、日本リウマチ学会各支部において超音波検査講習会を実施し、中級者向けの講習会を行った。関節超音波検査を用いた「早期関節リウマチ分類(診断)基準」の確立の試みのために、過去1年間に早期関節炎のために受診した127症例を後ろ向きに評価し、RA早期診断における超音波検査の意義を検証した。
結果と考察
1)RA診療ガイドライン作成分科会:ガイドライン作成委員に対してインターネットを用いて調査を実施した結果、1)すべての医師に期待される医療、2)リウマチ科を標榜する医師に期待される医療、3)リウマチ科専門医に任せるべき医療、の3群に診療内容が大別された。今後、一般医との間で合意形成の可否について検討する予定である。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会:JMDC Claims dataを用いて6,712人のRA患者を同定した。非RA対照者として、年齢、性別、観察期間、観察開始年でマッチングした33,560名をランダムに選択した。年齢の中央値および女性の割合は両群共に52歳、75.6%だった。観察期間の中央値は両群共に28か月だった。男女別における脳心血管疾患のIRRは男性で1.77 [1.32-2.39]、女性で1.52 [1.15-2.00]と有意にRAで高く、心血管疾患においても男女共に有意な上昇を認めた。骨折全体のIRRは3.35 [2.80-4.02]と有意な上昇を認め、男女共にIRRは有意に高かった(男性IRR 4.96 [2.78-8.84]、女性IRR 3.21 [1.80-5.73])。また、60歳未満および60歳以上における骨折のIRRは男女共に有意な上昇を認めた。さらに、各合併症の非RA群に対するRA群の調整済みオッズ比を算出したところ、脳心血管疾患全体では1.53 [1.20-1.94]、心血管疾患では1.67 [1.24-2.25]、骨折では1.85 [1.42-2.42]といずれもRAと有意な関連性を認めた。以上より、我が国のRA患者の臨床的特徴が明らかとなった。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:日本リウマチ学会と密接に連携をし、平成25年からは全ての支部で初心者向け講習会及びアドバンスコースが毎年開催されている。平成26年に日本リウマチ学会登録ソノグラファー制度の規則・カリキュラムを作成され、平成26年は237名が登録ソノグラファーとして学会に登録された。関節超音波検査を用いた「早期関節リウマチ分類(診断)基準」の確立の試みでは、本研究における2010年ACR/EULAR 分類基準の感度・特異度は各々73.2%、83.7%であったのに対して、超音波による関節滑膜炎の診断精度は、PDグレード2以上では感度85.4%、特異度93%と良好な結果がえられた。早期RAの診断精度を向上させる組み合わせを検証したところ、①PDグレード2以上またはPDグレード1≧+RF/抗CCP抗体陽性、②PDグレード2以上またはPD陽性腱鞘滑膜炎・腱周囲炎、③PDグレード2以上または抗CCP抗体3倍以上で良好な結果(いずれも正確度90.6%)が得られた。
2)RA臨床疫学データベース構築分科会:JMDC Claims dataを用いて6,712人のRA患者を同定した。非RA対照者として、年齢、性別、観察期間、観察開始年でマッチングした33,560名をランダムに選択した。年齢の中央値および女性の割合は両群共に52歳、75.6%だった。観察期間の中央値は両群共に28か月だった。男女別における脳心血管疾患のIRRは男性で1.77 [1.32-2.39]、女性で1.52 [1.15-2.00]と有意にRAで高く、心血管疾患においても男女共に有意な上昇を認めた。骨折全体のIRRは3.35 [2.80-4.02]と有意な上昇を認め、男女共にIRRは有意に高かった(男性IRR 4.96 [2.78-8.84]、女性IRR 3.21 [1.80-5.73])。また、60歳未満および60歳以上における骨折のIRRは男女共に有意な上昇を認めた。さらに、各合併症の非RA群に対するRA群の調整済みオッズ比を算出したところ、脳心血管疾患全体では1.53 [1.20-1.94]、心血管疾患では1.67 [1.24-2.25]、骨折では1.85 [1.42-2.42]といずれもRAと有意な関連性を認めた。以上より、我が国のRA患者の臨床的特徴が明らかとなった。
3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:日本リウマチ学会と密接に連携をし、平成25年からは全ての支部で初心者向け講習会及びアドバンスコースが毎年開催されている。平成26年に日本リウマチ学会登録ソノグラファー制度の規則・カリキュラムを作成され、平成26年は237名が登録ソノグラファーとして学会に登録された。関節超音波検査を用いた「早期関節リウマチ分類(診断)基準」の確立の試みでは、本研究における2010年ACR/EULAR 分類基準の感度・特異度は各々73.2%、83.7%であったのに対して、超音波による関節滑膜炎の診断精度は、PDグレード2以上では感度85.4%、特異度93%と良好な結果がえられた。早期RAの診断精度を向上させる組み合わせを検証したところ、①PDグレード2以上またはPDグレード1≧+RF/抗CCP抗体陽性、②PDグレード2以上またはPD陽性腱鞘滑膜炎・腱周囲炎、③PDグレード2以上または抗CCP抗体3倍以上で良好な結果(いずれも正確度90.6%)が得られた。
結論
これまでの本研究の進捗状況は順調である。本研究の成果は、我が国の関節リウマチ診療の標準化、適正化および均てん化、関節リウマチ患者の疫学データベースの構築と発展、診療の地域格差の縮小・改善、さらには今後のリウマチ対策の策定に大きく貢献するものと思われる。
公開日・更新日
公開日
2018-02-22
更新日
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