アレルギー疾患対策に必要とされる疫学調査と疫学データベース作成に関する研究

文献情報

文献番号
201511001A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患対策に必要とされる疫学調査と疫学データベース作成に関する研究
課題番号
H27-免疫-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
赤澤 晃(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 小田嶋 博(国立病院機構 福岡病院)
  • 斎藤 博久(国立成育医療研究センター 研究所)
  • 足立 雄一(富山大学医学部小児科)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 大矢 幸弘(国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科)
  • 秀 道広(広島大学大学院医歯薬学総合研究科、皮膚科学)
  • 岡田 千春(国立病院機構本部医療部)
  • 今野 哲(北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野)
  • 谷口 正実(国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター)
  • 下条 直樹(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
  • 大久保公裕(日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科)
  • 福冨 友馬(国立病院機構相模原病院)
  • 吉田 幸一(東京都立小児総合医療センターアレルギー科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本も他の先進諸国と同様に、アレルギー疾患の急激な増加を経験してきた。その背景には様々な環境要因と遺伝要因が考えられ研究が続けられている。国内でも局地的な疫学調査は実施されてきたが、全国レベルの調査は、限られたものしかない。アレルギー疾患対策基本法施行にあたって、基本的な疫学データを整理し、将来にわたり経年的変化を調査していくことは、医療政策策定の上で最も重要なことである。
本研究では、これまでの国内外の疫学データを収集し疫学データベースを作成し、将来にわたり活用できる疫学調査計画を立案、実施していく。
研究方法
成人気管支喘息、小児気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーそれぞれの疾患において、国内の有症率調査報告を医学中央雑誌、MEDLINEを使用し検索した。
研究グループを組織して協働作業で実施した。〇印は、各グループのリーダー。成人喘息・鼻炎調査グループ:〇谷口、今野、岡田、大久保、福冨。小児喘息・鼻炎調査グループ:〇足立、斎藤、小田嶋、吉田、赤澤。アトピー性皮膚炎調査グループ:〇秀、下条、大矢。食物アレルギー調査グループ:〇海老澤、秀、赤澤。
本研究の報告書は、グループ毎にまとめたため研究分担者ごとではなく、成人喘息・鼻炎、小児喘息・鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーでまとめた。
 アレルギー疾患疫学データーベース作成にあたり、次の仕様で検索を実施した。
(1) 検索データベース:医学中央雑誌、MEDLINE
(2) 検索対象期間:医学中央雑誌は、1983年から、MEDLINEは、1946年から2015年までとした。
(3) 検索キーワード:各疾患名、有症率、罹患率、予後調査、統計 等
(4) 対象年齢:小児は、0歳から18歳、成人は19歳以上とした。
検索された文献から、有症率と関連のないもの、記載の不備のあるもの、重複している調査等を整理した。
結果と考察
(1) 小児気管支喘息
医学中央雑誌では956件が該当し、そのうち45件を対象とした。MEDLINEでは469件が該当し、そのうち8件について検討を行った。重複を除き、引用文献1件を加えた計51件についてデーターベースを作成した。
(2) 小児アレルギー性鼻炎
医学中央雑誌では406件が該当し、そのうち38件を対象とした。MEDLINEでは165件が該当し、8件を対象とした。重複を除いた、計41件についてデーターベースを作成した。
(3)成人喘息
医学中央雑誌から5件、Medlineから4件が該当した。
(4) 成人鼻炎
医学中央雑誌から7件、Medlineから6件が該当した。
(5) アトピー性皮膚炎
医学中央雑誌、Medlineから合わせて33件が該当した。
(6) 食物アレルギー
医学中央雑誌から24件、Medline 9件が該当した。

 アレルギー疾患患者がどれだけいるのか、その分布、経年的変化を調査することは、アレルギー疾患対策を実施していく上で最も基本的なデータである。しかし、これまでの国内の疾患疫学調査体制は、医療機関、大学等による個別の特定地域の調査、公害指定地域における気管支喘息に関する調査、学校保健動向調査などに限られていた。
世界的には、喘息の調査用紙であるATS-DLD調査用紙、小児アレルギー疾患の調査用紙であるISAAC、成人喘息調査用紙であるECRHSが1970年以降に開発され、国内でも使用されるようになった。国内で、広域、全国レベルの調査は少なく、また、ATS-DLD,ISAAC調査用紙での調査は、1980年以降である。食物アレルギーでは標準的な調査用紙が開発されていない。
今回、1946年以降の日本のアレルギー疾患疫学調査の論文を国内海外で検索を行ったが、全国レベルで経年変化を見ることのできる調査が西日本での小学生喘息調査だけであること、地域差を見ることができる調査が少ないことがわかった。
今後、アレルギー疾患対策を的確に推進するために、正確な動向調査を実施していく必要があることがわかった。
作製したデータベース  https://allergysurvey.jp/
結論
国内でのアレルギー疾患疫学調査の実施状況を論文での報告数で調査し、一般国民にもわかりやすい形としてwebで公開した。都道府県別には、全国調査以外に実施していない地域も多くあり、調査方法も独自の方法で実施されてきた。今後のアレルギー疾患対策を実施していく上で定期的に、一定の調査方法での調査を実施し、分析する必要があることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2018-02-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-02-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201511001Z