難病患者への支援体制に関する研究

文献情報

文献番号
201510111A
報告書区分
総括
研究課題名
難病患者への支援体制に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-指定-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
西澤 正豊(新潟大学脳研究所 神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 朗子(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 小森 哲夫((独)国立病院機構箱根病院神経筋・難病医療センター)
  • 成田 有吾(三重大学医学部看護学科)
  • 小林 庸子((独)国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 菊池 仁志(村上華林堂病院)
  • 伊藤 道哉(東北大学大学院医学系研究科)
  • 川島 孝一郎(仙台往診クリニック)
  • 荻野 美恵子(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター)
  • 溝口 功一((独)国立病院機構静岡富士病院)
  • 豊島 至((独)国立病院機構あきた病院)
  • 宮地 隆史((独)国立病院機構柳井医療センター)
  • 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科)
  • 春名 由一郎((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター)
  • 川尻 洋美(田所洋美)(群馬県難病相談支援センター)
  • 伊藤 建雄(日本難病・疾病団体協議会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年1月より施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」(「難病法」)に基づく新たな難病対策制度では、難病患者と家族を地域で包括的に支援するために、保健所保健師と難病対策地域協議会による地域支援ネットワーク、難病相談支援センターによる福祉支援ネットワーク、難病拠点病院と難病医療コーディネーターによる医療支援ネットワークが重層的に整備される。本班は、この支援体制が全国に普く整備されるように、支援体制整備の均霑化に必要な施策のあり方を研究し、今後の行政施策に反映することを目的とした。
研究方法
本指定班に先行する「希少性難治性疾患患者に関する医療の向上及び患者支援のあり方に関する研究」班において包括的に検討された難病対策制度の諸課題の中で、本班は26年度に引き続き、1)難病に関係する多職種の連携のあり方、2)在宅医療体制のあり方、3)難病の災害対策のあり方、の3課題を対象として、制度の全国的な均霑化に向けた今後の行政施策の構築に資するデータの収集と解析を行った。
結果と考察
1)多職種連携による支援体制
保健所保健師、難病相談支援センター相談支援員、ケアマネージャー、就労支援員など、難病に関係する多職種に向けて、それぞれの難病対応マニュアルを策定し、難病専門研修体制と研修テキストを整備することを共通の目標として、現状を把握するための実態調査に基づき、マニュアルと研修テキストの整備を進めてきた。
都道府県と保健所設置市の難病担当保健師に対しては、難病保健活動の実施体制と難病保健師育成プログラムについて調査した。難病対策地域協議会は多くの自治体で平成27年度末までに組織される見込みであり、その効率的な運用のためのマニュアルを作成した。難病保健師育成プログラムの整備には遅れがみられ、中央機関で専門的な研修制度を整備する必要が指摘された。難病相談支援センターの活動実態調査からは、相談支援員の研修体制に改めて課題が指摘された。ピアサポーターの配置は1/4のセンターのみに留まり、1/3のセンターでは相談援助職とピアサポーターとの連携に課題を残していた。難病療養支援における介護の役割では、ケアマネージャーの活動指針を再検討し、難病患者等ホームヘルパー養成研修事業のためのテキストの改訂を行った。難病者の就労支援については、専門職の研修プログラム作成を試み、就労支援研修会において、担当者が抱える就労困難事例を共有するためにロールプレイを実施し、一定の効果を挙げた。
難病における患者会の役割では、2003年に設立された難病センター研究会の活動や、「難病患者サポート事業」の一環として実施されてきた「患者会リーダー養成研修会」の活動状況が報告され、「難病法」施行後の難病対策制度に関する患者団体の意識調査が開始された。
難病リハビリテーションについては、神経難病リハ研修に対するニーズと現状に関する調査が実施された。また、2地域で神経難病リハ研修会を実施し、実施上の課題が整理された。

2)在宅医療の支援体制
難病の在宅医療に従事する専門家育成のあり方では、国際生活機能分類に基づく実用的な相談・支援マニュアルの作成を開始した。
重症神経難病患者を対象とするレスパイト入院については、昨年度の初めての全国調査に続いて、より詳細な二次調査を実施し、現状と課題を明らかにした。また、ALSのレスパイト入院に関する当事者の聞き取り調査を三重県で実施した。
難病の緩和ケアに従事する人材育成では、難病に特化した緩和ケアの捉え方やモルヒネの効果的な使用を含む緩和ケア技術を広く普及・啓発するための方法として、当事者向けの自己研鑚ツールや説明パンフレットを開発した。

3)災害対策
在宅人工呼吸器装着者の外部バッテリーの装着状況、非常用電源の購入に対する公的補助、災害時の難病患者受け入れ調整について、前年に引き続き47都道府県を対象として実態調査を行い、在宅人工呼吸器装着者の実態を把握できていない自治体が多いことを改めて示した。また、26年度に引き続き、都道府県別に在宅人工呼吸器装着者の実数と外部バッテリーの装備率を明らかにした。
自治体による災害支援対策では、前年度に調査した467市町村に対し、災害時要援護者個別支援計画の策定状況に関する実態調査を再度実施し、個別支援計画の策定が何故進捗しないのか、現状の問題点を明らかにした。
宮城県では、東日本大震災とその後の状況について、県内全域の在宅人工呼吸器装着者と家族を対象とした調査を実施した。
結論
新「難病法」に基づく難病対策事業により、重層的な支援ネットワークが全国に普く構築されているかを検証し、難病患者と家族を地域で包括的に支援するための体制整備の均霑化に必要な施策のあり方を研究した。

公開日・更新日

公開日
2016-09-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201510111B
報告書区分
総合
研究課題名
難病患者への支援体制に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-指定-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
西澤 正豊(新潟大学脳研究所 神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 朗子(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 小森 哲夫((独)国立病院機構箱根病院神経筋・難病医療センター)
  • 成田 有吾(三重大学医学部看護学科)
  • 小林 庸子((独)国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 菊池 仁志(村上華林堂病院)
  • 伊藤 道哉(東北大学大学院医学系研究科)
  • 川島 孝一郎(仙台往診クリニック)
  • 荻野 美恵子(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター)
  • 溝口 功一((独)国立病院機構静岡富士病院)
  • 豊島 至((独)国立病院機構あきた病院)
  • 宮地 隆史((独)国立病院機構柳井医療センター)
  • 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科)
  • 春名 由一郎((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター)
  • 川尻 洋美(田所洋美)(群馬県難病相談支援センター)
  • 伊藤 建雄(日本難病・疾病団体協議会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成26年5月に成立した「難病の患者に対する医療等に関する法律」(「難病法」)に基づく新たな難病対策制度により、難病患者と家族を地域で包括的に支援するために、保健所保健師と難病対策地域協議会による地域支援ネットワーク、難病相談支援センターによる福祉支援ネットワーク、難病拠点病院と難病医療コーディネーターによる医療支援ネットワークが重層的に整備されることとなった。本班は、この支援体制が全国に普く整備されるように、支援体制整備の均霑化に必要な施策のあり方を研究することを目的とした。
研究方法
研究代表者は平成23年度から「希少性難治性疾患患者に関する医療の向上及び患者支援のあり方に関する研究」班を統括し、現行制度の諸課題を検討してきた。引き続き本班は、1)難病に関係する多職種の連携のあり方、2)在宅医療体制のあり方、3)難病の災害対策のあり方について、今後の行政施策の構築に資するデータの収集と解析を行った。
結果と考察
1)多職種連携による支援体制
都道府県と保健所設置市の難病担当保健師を対象に、難病保健活動の実施体制について実態調査を行った結果、難病保健師育成プログラムの整備には遅れがみられた。地域での研修は多くの自治体で実施困難であり、中央の機関で専門的な研修制度を整備する必要があった。各自治体保健所による難病保健活動の推進には、国の基本方針が早急に示される必要があった。
難病相談支援センターの活動実態について全国調査を行った結果、相談支援員の研修体制に改めて課題が指摘された。ピアサポーターの配置は23%のセンターのみであり、3分の1のセンターでは相談援助職とピアサポーターとの連携に課題を残していた。
難病療養支援における介護の役割では、ケアマネージャーに対する活動指針の骨子を検討した。東京都では、難病患者支援における現状を聞き取り、活動指針の構成について検討した。また、難病患者等ホームヘルパー養成研修事業の実状とその研修内容についても実態調査を行った。
 難病者の就労支援については、専門職の研修プログラム作成を試みた。就労支援研修会において、担当者が抱える就労困難事例を共有するためにロールプレイを実施し、一定の効果を挙げた。
難病における患者会の役割では、2003年に設立された難病センター研究会の活動や、「難病患者サポート事業」の一環として実施されてきた「患者会リーダー養成研修会」の活動状況が報告された。「難病法」施行後の難病対策制度に関する患者団体の意識調査が開始された。
難病リハビリテーションの役割については、神経難病リハ研修に対するニーズと現状に関するアンケート調査が実施された結果、約4割の施設で研修は実施されていたが、病院と地域との連携に困難があった。
2)在宅医療の支援体制
 難病の在宅医療に従事する専門家育成のあり方では、相談・支援マニュアルを作成するために、国内外のガイドラインなどを網羅的に検索し、体系的に整理した。これを基に、国際生活機能分類に基づく実用的なマニュアルの作成を開始した。
 重症神経難病患者を対象とするレスパイト入院について、初めての全国調査を実施した。神経学会教育施設のレスパイト実施率は57%、全国訪問看護事業団施設のレスパイト依頼率は28%であった。ALSのレスパイト入院に関する聞き取り調査を三重県で実施した。
 難病の緩和ケアに従事する人材育成では、難病に特化した緩和ケアの捉え方やモルヒネの効果的な使用を含む緩和ケア技術を広く普及・啓発するための方法として、当事者向けの自己研鑚ツールや説明パンフレットを開発した。
3)災害対策
 在宅人工呼吸器装着者の外部バッテリーの装着状況、非常用電源の購入に対する公的補助、災害時の難病患者受け入れ調整について、47都道府県を対象として実態調査を行った結果、在宅人工呼吸器装着者の実態を把握できていない自治体が多いことを改めて示した。前班に引き続き、都道府県別に在宅人工呼吸器装着者の実数と外部バッテリーの装備率を明らかにした。
自治体による災害支援対策では、前年度に調査した467市町村に対し、災害時要援護者個別支援計画の策定状況に関する実態調査を再度実施し、現状では要支援者が特定されていないなど、情報共有の実態を示した。
 宮城県では、東日本大震災とその後について、県内全域の在宅人工呼吸器装着者と家族を対象とした電子メール調査を実施した。
結論
新「難病法」に基づく難病対策事業により、重層的な支援ネットワークが全国に普く構築されているかを検証し、難病患者と家族を地域で包括的に支援するための体制整備の均霑化に必要な施策のあり方を研究した。

公開日・更新日

公開日
2016-09-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201510111C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成27年1月より施行された「難病法」に基づく難病対策制度では、保健所保健師と難病対策地域協議会による地域ネットワーク、難病相談支援センターによる福祉ネットワーク、難病拠点病院と難病医療専門員による医療ネットワークが重層的に整備される。本班は、この包括的な支援体制整備の均霑化に必要な施策のあり方を、1)難病に関係する多職種の連携、2)在宅医療体制、3)難病の災害対策、を対象として研究し、今後の行政施策の構築に資するデータとして提示した。
臨床的観点からの成果
本班は新「難病法」に基づく難病対策制度の全国的な均霑化を目指して、この目的に資するデータを収集し、今後の行政施策に生かすことを目標としているが、難病を対象とした緩和ケアのあり方、重症神経難病のレスパイト入院のあり方の検討、神経難病リハビリテーション技術の向上を目指した専門研修会の実施、難病在宅医療の推進に資する実用的マニュアルの作成などを通じて、難病医療の臨床面にも寄与している。
ガイドライン等の開発
本班は、ガイドラインの策定には直接は関与していない。
その他行政的観点からの成果
新「難病法」に基づく難病対策制度がスタートし、その全国的な均霑化に向けた行政施策の展開、および対象疾患の追加や見直し、平成30年度に予定される指定市への業務移管や、3年間の移行措置制度の終了に向けた諸課題の検討が厚労省難病対策課で進められている過程で、本指定班の研究成果は利用され、行政施策に反映されている。
その他のインパクト
本指定班として公開シンポジウムは開催していない。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
39件
その他論文(和文)
42件
その他論文(英文等)
6件
学会発表(国内学会)
78件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-09-20
更新日
2021-06-08

収支報告書

文献番号
201510111Z