尿細管性蛋白尿を呈する遺伝性疾患の全国調査

文献情報

文献番号
201510104A
報告書区分
総括
研究課題名
尿細管性蛋白尿を呈する遺伝性疾患の全国調査
課題番号
H27-難治等(難)-一般-037
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 健一郎(東京女子医科大学 腎臓小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 張田豊(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
770,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関の異動 研究代表者 三浦健一郎 東京大学医学部附属病院(平成19年8月1日~平成28年2月29日)➝東京女子医科大学腎臓小児科(平成28年3月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
尿細管性蛋白尿は低分子蛋白尿と同義であり、近位尿細管の再吸収機構(エンドサイトーシス)の障害によって生じる。この中にはDent病、Lowe症候群、シスチン症、特発性Fanconi症候群、Imerslund-Grasbeck症候群(IGS)、Donnai-Barrow/facio-oculo-acoustico-renal(DB/FOAR)症候群が含まれ、低分子蛋白尿を呈するだけの症例から小児期の末期腎不全や重度の精神発達遅滞を呈する症例まで、多彩な症候を呈する。本邦では学校検尿によって早期発見される症例が多く含まれるためか、Dent病は海外の既報告では30~50歳までに30~80%の男性患者が末期腎不全に至っているが、本邦では比較的軽症とされる。しかし私たちの86例の解析でも青年期以降に腎機能障害を認めた例が数例あり、本邦における長期予後の詳細は不明である。本研究ではアンケートによる全国疫学調査を行い、これらの希少疾患の本邦における患者数および臨床像、長期予後に関するデータを収集し、診断基準・重症度分類を確立することを目的とする。また、得られた患者情報をもとに、これらの疾患の発症における分子生物学的機序を明らかにする。
研究方法
全国疫学調査のため、上記疾患についての2013年1月から2015年12月までの3年間の診療患者の有無を調査する一次アンケート票を作成した。また、患者の診療ありと回答した施設を対象として臨床情報を収集する二次アンケート票を各疾患別に作成した。今後順次対象施設にアンケート調査票を送付する予定である。送付先は全国の200床以上の病院に勤務する小児科医、内科医、および日本小児腎臓病学会・日本小児内分泌学会・日本先天代謝異常学会の評議員(代議員)とした。一方、IGSの新規CUBN変異について、機能解析を行うために、培養細胞を用いてCUBNとAMNの膜発現量およびエンドサイトーシス量を定量化し、患者変異による影響を検討した。
結果と考察
全国疫学調査のための一次アンケート調査票の項目は上記疾患の診療の有無とした。二次アンケート調査票は各疾患別に作成した。共通の調査項目は患者の生年月、性別、血族婚の有無、家族歴、遺伝子解析施行の有無、発症年齢、臨床診断年齢、発見理由、血液・尿検査所見、透析導入/腎移植施行の有無とその時期とした。
IGS患児においてCUBN遺伝子のヘテロのミスセンス変異c.1957G>C (p.Gly653Arg)を検出した。新規変異であり、両親の解析からde novoと考えられた。次に腎生検組織標本を用いて、amnionlessおよびcubilinの染色を行った。正常近位尿細管ではこれらの蛋白は刷子縁に存在するが、患児においてはamnionlessとcubilinの局在が細胞質内へと変化しており、CUBAM複合体の細胞膜輸送障害が示唆された。
次に、培養細胞を用いてcubilinとamnionlessの膜発現量およびエンドサイトーシス量を定量化し、患者変異による影響を検討した。amnionlessはcubilinと共依存的に細胞膜表面上に輸送されるが、患者CUBN変異は両者の膜発現および複合体のエンドサイトーシスを著明に低下させた。さらにcubilinはamnionlessと共発現することにより特異な糖鎖修飾が起こるが患者CUBN変異によりその変化が阻害されることを見いだした。SILAC(stable isotope labeling using amino acids in cell culture)法を用いamnionless依存的なcubilin分子の糖鎖修飾部位を同定した。細胞に糖鎖修飾阻害薬を添加することによりamnionless依存的cubilin膜移行が阻害されたことから、糖鎖修飾こそが膜輸送に必要であることが示唆された。
結論
尿細管性蛋白尿を呈する遺伝性疾患の全国調査アンケートを作成した。また、IGSにおいて、CUBN変異はcubilinとamnionlessの膜発現および複合体のエンドサイトーシスを著明に低下させた。さらにCUBNはAMNと共発現することにより特異な糖鎖修飾が起こること、また患者CUBN変異によりその変化が阻害されることを見いだした。また、SILAC法を用いAMN依存的なCUBN分子の糖鎖修飾部位を同定した。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510104Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,000,000円
(2)補助金確定額
1,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 100,000円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 670,000円
間接経費 230,000円
合計 1,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
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