成人例の左室緻密化障害の全国調査

文献情報

文献番号
201510102A
報告書区分
総括
研究課題名
成人例の左室緻密化障害の全国調査
課題番号
H27-難治等(難)-一般-035
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(国立大学法人 信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 磯部 光章(東京医科歯科大学 医学部医科歯科)
  • 小山 潤(国立大学法人 信州大学 学術研究医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
883,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
左室緻密化障害(LVNC; left ventricular non-compaction)はこれまで見過ごされてきた希少心筋疾患で、従来は小児の疾患と考えられてきたが、最近は成人例での報告が散見される。左室緻密化障害は、突然死、心不全、塞栓症などの合併頻度が高いことが報告されているが、わが国における成人例の実態は全く不明である。
成人例の左室緻密化障害の一定の診断基準はまだないが、一般的には断層心エコーまたはMRI検査にて左室内面の肉柱形成とその間の深い陥凹を証明することで診断されている。Jenniは、断層心エコーによる診断基準として「左室が心膜側の緻密化層と心内膜側の非緻密化層の2層からなり、非緻密化層は肉柱様構造で、非緻密化層の厚さが緻密化層の2倍以上」であれば左室緻密化障害と診断できると提唱している(Heart, 2001)。Petersenは、MRIシネ画像で「左室の非緻密化層の厚さが緻密化層の2.3倍以上」であれば左室緻密化障害と診断できるとしている(JACC,2005)。
成人における左室緻密化障害の発症頻度は不明である。また、左室緻密化障害の予後についても不明な点が多い。Oechslinらの研究が最も大人数で、左室緻密化障害患者34名を平均44ヵ月フォローし、53%が心不全、41%が心室頻拍、24%が血栓塞栓イベントを発症したと報告しているが(JACC, 2000)、わが国のデータは皆無である。このように、希少難治性心筋症である左室緻密化障害の成人例のわが国における発症頻度や予後について明らかでなく、実態は不明である。そこで日本心不全学会では、申請者が委員長を務めるガイドライン委員会が中心となり、多施設コホート研究を実施し、わが国における成人例の左室緻密化障害の発症頻度および予後について明らかにする。
研究方法
【前向きコホート研究】
 研究代表者・分担者が所属する施設の心エコー検査室ならびに長野・山梨の両県の基幹病院の心エコー検査室にて検査を受ける患者(年間約50,000名)を対象とする。既に平成27年7月から、研究分担者(小山)が代表を務める甲信心エコー図セミナー会員所属施設において調査を開始している。

【後向きコホート研究】
 左室緻密化障害は希少疾患であるため、前向きコホート研究のみでは十分なデータを集積できない可能性がある。そこで、日本心不全学会会員(会員数2,443名)に対してアンケートを送付し、後向きコホート研究を併せて実施する。既に平成27年7月末に日本心不全学会会員にアンケートを送付し、8月中旬時点で約300名の会員から回答を得ている。
結果と考察
【前向きコホート研究】研究代表者・分担者が所属する施設の心エコー検査室ならびに長野・山梨の両県の基幹病院の心エコー検査室(20施設)にて検査を受ける患者(年間約50,000名)を対象とする。既に平成27年7月に甲信心エコー図セミナー会員所属20施設に調査依頼を行い、前向きコホート研究を開始している。これまでに新規に5名の成人例の左室緻密化障害症例が登録されており、定期的にホルター心電図検査、心エコー検査、血液検査(BNPなど心不全関連マーカー)を実施し、心不全、不整脈、血栓塞栓症イベントの発生について追跡中である。
【後向きコホート研究】平成27年7月に日本心不全学会会員(会員数2,443名)に対して、成人例左室緻密化障害の一次調査のアンケートを送付した。これまでに144名の会員から過去3年以内に成人例左室緻密化障害の症例を経験したとの報告を受けている。現在、これら会員に対して、症例の詳細に関する二次調査を依頼中である。
尚、これら前向きおよび後ろ向きコホート研究の中間結果を、日本心不全学会の分科会である第2回日本心筋症研究会(平成28年5月14日開催)で報告予定である。

考察
 平成27年度に、成人例の左室緻密化障害の前向きおよび後向きコホート研究に着手した。平成28年度は追跡調査を行い、成人例左室緻密化障害の実態を明らかにする。
結論
わが国における成人例の左室緻密化障害の実態調査のため、前向きおよび後向きコホート研究を開始した。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510102Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,147,000円
(2)補助金確定額
1,147,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 860,680円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 22,320円
間接経費 264,000円
合計 1,147,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
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