潰瘍性大腸炎の発症関連及び予防要因解明を目的とした症例対照研究

文献情報

文献番号
201510100A
報告書区分
総括
研究課題名
潰瘍性大腸炎の発症関連及び予防要因解明を目的とした症例対照研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-033
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 吉博(愛媛大学 大学院医学系研究科 疫学・予防医学)
研究分担者(所属機関)
  • 日浅 陽一(愛媛大学 大学院医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学)
  • 古川 慎哉(愛媛大学 大学院医学系研究科 疫学・予防医学)
  • 田中 景子(愛媛大学 大学院医学系研究科 疫学・予防医学)
  • 永田 知里(岐阜大学 大学院医学研究科 疫学・予防医学分野)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 潰瘍性大腸炎の罹患率や有症率は世界的にも増加しており、潰瘍性大腸炎の発症関連要因及び予防要因を解明し、発症を抑制する保健的介入方法を確立することは喫緊の課題である。
 生活習慣や生活環境、さらには遺伝子多型の頻度の違いから、欧米の疫学研究で得られたエビデンスを安易に日本人に適用することはできない。日本人を対象とした疫学研究で得られたエビデンスを活用することで、日本人のための潰瘍性大腸炎の予防方法を体系的に開発できる可能性が高まる。
 国内ではこれまで2つの症例対照研究が実施されたが、遺伝情報が収集されておらず、現時点で栄養に関する2原著論文が報告されているのみである。
 本研究では、栄養摂取や喫煙曝露等の生活環境、生活習慣に関する情報を詳細に収集し、遺伝情報も収集することで、環境要因及び遺伝要因と潰瘍性大腸炎リスクとの関連、さらには、遺伝要因と環境要因の交互作用を評価できる。
研究方法
 症例群は80歳未満で潰瘍性大腸炎の診断から1年未満とする。対照群は病院対照とする。症例群1名につき、2名の対照群を選定する。5歳階級別に年齢、性別、医療機関をマッチさせ、潰瘍性大腸炎或いはクローン病と診断されておらず、下痢や腹痛の症状のない外来或いは入院患者とする。症例群400例、対照群800例を目標とする。
 半定量食事摂取頻度調査票および本研究用に開発した生活習慣、生活環境、既往歴、家族歴等に関する質問調査票を用いる。対象者自身により検査用綿棒を用いて口腔粘膜細胞検体を採取する。
 症例群のリクルート方法を示す。
①医師から対象候補者に調査協力と個人情報の研究事務局(愛媛大学大学院医学系研究科疫学・予防医学講座内)への提供の依頼を行う。
②同意が得られれば個人情報提供同意書に署名をもらい、説明文書を手渡す。
③患者シートに対象者の連絡先、重症度等の情報を記入し、署名済み個人情報提供同意書と共に研究事務局に郵送する。
④研究事務局より電話で詳細な説明をし、最終的な同意を得た場合、質問調査票と口腔粘膜細胞採取キットを研究対象者宅に送付する。
⑤研究対象者は回答済み質問調査票と採取済み口腔粘膜細胞を研究事務局に送付する。
⑥研究事務局は記入漏れや合理的でない回答を研究対象者に問い合わせ、すべての回答を得た後、薄謝(500円図書カード)を研究対象者に送付する。
 対照群についても同様の方法でリクルートを行う。
結果と考察
 平成27年5月25日に愛媛大学医学部臨床研究倫理審査委員会、平成27年6月24日に愛媛大学大学院医学研究科ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理委員会の承認を得た。これを受けて研究協力の内諾を得ていた全国26医療機関に倫理審査の申請を依頼したが、2機関が辞退した。その後平成27年12月までに7機関が調査に参加し、さらに、平成28年1月から3月までの間に12機関が調査に参加した。最終的に平成27年度末で43機関が研究協力に同意し、その内、25医療機関で倫理審査の承認を得ている。
 研究計画書では各医療機関に1名の症例群に対し、2名の対照群もリクルートすることを第一の運営手順としていた。ただ、これまで難病の疫学研究班において特発性肺線維症やパーキンソン病の症例対照研究を実施した経験上、各研究協力医療機関における対照群リクルートについては実行可能性が高くないと考えていたため、研究計画書に「危機管理の観点で、以下の状況を考慮しておく。対照群を選定できない協力医療機関が出現した場合は、別の特定の医療機関で年齢と性別をマッチさせた対照群を選定する。さらには、研究の進行上、マッチングを行うことが困難な状況になった場合は、厳密なマッチングにこだわらず、対照群の人数確保に重点を置く。」と記載していた。愛媛大学医学部附属病院整形外科及び耳鼻咽喉科・頭頸部外科より対照群リクルートへの協力について快諾を得、両科の入院患者を系統的にリクルートできる状況を得た。そこで、研究協力医療機関においては、症例群のみリクルートをする運営方法に変更した。
 結果として、平成28年3月31日においては症例群62名、対照群42名よりデータを得ることができ、平成28年1月から3月までの3ヶ月間で各群約30名増加した。
 研究事務局が責任を持って対照群のリクルートを行うことが研究運営上、合理的であることが確認できた。一方で、研究デザインの観点では、医療機関をマッチングすることができず、方法論的な大きな欠点となる。少ない研究費でより多くの研究対象者を確保するという観点でやむを得ないことと考える。
結論
 28年度以降についても、この方針を維持し、さらなる研究協力医療機関の確保と対象者数の拡大を目指す。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201510100Z