肥厚性皮膚骨膜症の診療内容の均てん化に基づく重症度判定の策定に関する研究

文献情報

文献番号
201510097A
報告書区分
総括
研究課題名
肥厚性皮膚骨膜症の診療内容の均てん化に基づく重症度判定の策定に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-030
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
新関 寛徳(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 感覚器形態外科部 皮膚科)
研究分担者(所属機関)
  • 横関博雄(東京医科歯科大学大学院医学総合研究科)
  • 石河 晃(東邦大学医学部皮膚科学)
  • 戸倉新樹(浜松医科大学医学部皮膚科学)
  • 椛島健治(京都大学大学院医学研究科)
  • 乾 重樹(大阪大学大学院医学系研究科皮膚毛髪再生医学)
  • 種瀬啓士(慶應義塾大学医学部)
  • 関 敦仁(国立成育医療研究センター整形外科)
  • 桑原理充(奈良県立医科大学付属病院形成外科)
  • 宮坂実木子(国立成育医療研究センター放射線診療部)
  • 三森経世(京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学)
  • 久松理一(杏林大学医学部内科学(消化器))
  • 亀井宏一(国立成育医療研究センター腎臓リウマチ膠原病科)
  • 新井勝大(国立成育医療研究センター消化器科)
  • 工藤 純(慶應義塾大学医学部遺伝子医学研究室)
  • 井上永介(国立成育医療研究センター臨床研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,070,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肥厚性皮膚骨膜症は、ばち指、長管骨骨膜性骨肥厚、皮膚肥厚を3主徴とする遺伝性疾患である。
有病患者は年間40人強と推定され、報告数も200例程度であったが、2012年にSLCO2A1遺伝子が責任遺伝子であることが発見されて以来少しずつ報告が増えている。
いまだ疾患そのものの認知度が低いため、該当する患者であっても、充分に重症度が評価されていないために通院も中断していることが推測されている。
当該疾患は2015年7月より指定難病として助成がはじまった。その重症度判定は最重症は明確であったが、中等度と重症ではQOLや治療法に明確な差が生じるかは稀少疾患であるために明らかでない部分も多い。活動性の指標を示す基準も未だない。
そこで今回重症度分類を行う手引きを作成し、重症度分類をさらに普及させ、指定難病への申請をふやすことを目標とし、さらには現在策定中の診療ガイドラインの準備としたい。
研究方法
1)2014年以降、国立成育医療研究センター皮膚科に通院中の患者来院時に使用している重症度判定表を分担研究者に配布し、各担当分野の重症度分類を検討し、加筆修正した。重症度分類や治療方針などの診療上よくある質問(FAQ)を設定し、回答を作成した。一部の回答には系統レビューを用いた(診療ガイドライン作成の準備)。
2)原因遺伝子の機能から推測される新たな活動性指標として、プロスタグランジンE2濃度(血中、尿中)、尿中プロスタグランジン代謝物PGE-M)を測定、検討した。PGE-MはELISA法とRadioimmunoassayの2つの方法を用いた。
3)当該疾患の重症度分類に「非特異性多発性小腸潰瘍」診断基準・重症度分類を導入した。
結果と考察
結果
1)下記19項目を検討した
① ばち指
② 皮膚肥厚(前額)
③ 頭部脳回転状皮膚
④ 脱毛症
⑤ にきび
⑥ 脂腺増殖症
⑦ 油性光沢
⑧ 脂漏性湿疹
⑨ 掌蹠多汗症
⑩ 眼瞼下垂
⑪ リンパ浮腫
⑫ 関節症状
⑬ 骨膜性骨肥厚
⑭ 関節症状
⑮ 全身倦怠感
⑯ CRP
⑰ 低カリウム血症、Bartter症候群
⑱ 非特異性多発性小腸潰瘍
⑲ 胃潰瘍

 今回策定したFAQは次の通りである。
FAQ1 皮膚肥厚の診断に生検は必要ですか?
FAQ2 頭部脳回転状皮膚の診断にMRIは有用ですか?
FAQ3 皮膚肥厚(眼瞼下垂を含む)の治療に外科的治療は有用ですか?
FAQ4 脱毛をきたすことがありますか?
FAQ5  関節水腫はどうやって診断しますか?
FAQ6 リンパ浮腫になることはありますか?
FAQ7 小腸潰瘍はどうやって診断しますか?
FAQ8 ばち指を合併する若年性胃潰瘍は当該疾患と診断できますか?
FAQ9 活動性の指標はありますか?
FAQ10  二次性肥大性骨関節症はどのように鑑別しますか?
FAQ11 遺伝子診断は、合併症予測に有用ですか?
FAQ12 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は有効ですか?

2)活動指標の検討
ELISA法とラジオイムノアッセイの2つの系でPGMを測定し、良く相関することが判明した(相関係数0.7)。プレドニン療法により変化した活動性とも良く相関した。

3)「非特異性多発小腸潰瘍」「原発性多汗症」合併例の検討
集積した症例のエクソーム解析および家系内発症例のゲノム解析から、SLCO2A1遺伝子に肥厚性皮膚骨膜症と同一の変異を有する常染色体劣性遺伝病であることが判明した。そこで、両者の診断基準を照らし合わせると非特異性多発性小腸潰瘍症患者の中に肥厚性皮膚骨膜症を合併する例が存在することを確認した。
 原発性多汗症患者では未だSLCO2A1遺伝子異常は知られていないので、今後の課題である。

考察
肥厚性皮膚骨膜症は全身性疾患であり、多彩な症状が知られている。しかし、症状が軽微なものもあり、一定の記入票を用いた診療記録の作成が期待されていた。今回このような試みを行うことで、診療の均てん化がすすむことが期待される。さらには診療上よくある質問を今回まとめたので実地で役立つことが期待される。検査すべき項目のなかに、活動性指標を示す項目も導入できる可能性もでてきた。合併症の診断基準に「非特異性多発性小腸潰瘍」が加わった。今後急速に増えている本症のcase seriesをもとに系統レビューも導入して項目を加筆していく予定である。



結論
重症度判定記入票(非特異性多発性小腸潰瘍を含む)を作成し、よくある質問項目を付記した。
 こういった記入票が普及することにより、診療の均てん化がすすむことが期待される。さらには診療上よくある質問を今回まとめたので実地で役立つことが期待される。今後急速に増えている本症のcase seriesをもとに系統レビューも導入して項目を加筆していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510097Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,290,000円
(2)補助金確定額
5,284,048円
差引額 [(1)-(2)]
5,952円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 913,178円
人件費・謝金 2,019,025円
旅費 54,100円
その他 1,077,745円
間接経費 1,220,000円
合計 5,284,048円

備考

備考
予定していた消耗品が想定よりも安価に購入出来た為

公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
-