文献情報
文献番号
201510096A
報告書区分
総括
研究課題名
若年性特発性関節炎を主とした小児リウマチ性疾患の診断基準・重症度分類の標準化とエビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H27-難治等(難)-一般-029
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
森 雅亮(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 武井 修治(鹿児島大学医学部保健学科)
- 伊藤 保彦(日本医科大学大学院医学研究科小児・思春期医学)
- 小林 一郎(北海道大学大学院医学研究科生殖発達医学分野小児科学)
- 冨板 美奈子(千葉県こども病院アレルギー・膠原病科)
- 岡本 奈美(大阪医科大学大学院医学科小児科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,296,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究代表者 森 雅亮
横浜市立大学(平成27年4月1日~平成27年6月30日)→東京医科歯科大学(平成27年7月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、小児リウマチ性疾患の中で発症頻度が高いリウマチ・膠原病の特に難治性病態(若年性特発性関節炎(JIA)のマクロファージ活性化症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)の中枢神経ループス、若年性皮膚筋炎(JDM)の急速進行性間質性肺炎(ARDS)、シェーグレン症候群(SS)の慢性疲労及び腺外臓器障害等を中心に診断・治療ガイドラインを3年間にわたって策定する。それに基づき、関連学会である日本リウマチ学会、日本小児リウマチ学会と本研究のプロダクトを共有し連携体制を密接に取り、患者および保護者を庇護する医療的ネットワークの構築を図ることを目的としている。
研究方法
平成27年度は、研究初年度として、各分担班にて診断・治療ガイドラインのためのロードマップとマイルストンを作成し、それを達成するために不可欠な活動に着手していくこととなった。
結果と考察
本研究は、JIA, SLE, JDM,SSの疾患毎に分担班を作成し、それぞれの方向性を具体的に掲げた。(1) JIA班 【目標】1)全身型以外のJIA(関節型)の指定難病認定 2)難治性病態の診断と治療に関する研究 ①マクロファージ活性化症候群の診断基準、重症度分類、診断・治療のガイドラインの作成②全身型発症関節炎の病態・治療研究③ぶどう膜炎の実態調査3)JIA疫学調査(ILAR分類の推移:発症時→経過中、および各病型の予後)4)JIA治療薬の長期安全性調査 (2)SLE班【目標】1) 小児SLEに特化した包括的な診療ガイドライン「小児SLE診療の手引き」の完成2) 難治病態の合併率(診断基準を含む)や予後予測因子の抽出3) 本邦の小児リウマチ学会登録システムを活用した以下のエビデンス集積①本邦での小児SLE分類項目(1986)とSLE分類基準米国リウマチ学会双方の基準の評価②本邦小児SLEでの腎炎及び中枢神経ループス合併率と予後予測因子の有用性の検証③ 患者登録システムを利用した、エンドキサンパルス、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ハイドロキシクロロキン(HCQ)の投与状況及び治療反応性の調査4)ガイドラインによる患者治療成績の調査と、見直しの検討 (3) JDM班1) 診断基準のvalidationと本邦の診断ガイドライン作成①代表者所属施設(東京医科歯科大)の倫理委員会にて承認後、各分担者施設の倫理委員会申請②JDM国際基準の妥当性に関する疫学調:調査用紙に基づいた、研究協力者の各施設での記載2) 急速間質性肺炎の診断と治療に関する研究:診断時およびその後の検査、画像の推移、剖検所見、治療の介入時期と予後を判定3) 診断治療の手引き作成:立案した分担執筆案に基づいた作成、成人DM/PMとJDMとの違いを明記4) 自己抗体による細分類の提案:日本人小児における各抗体と臨床像の違いの検討、臨床情報の収集と検体の抗体測定5)血清など試料の保管と測定のネットワーク構築:分子診断→バイオバンク等の方向性を検討 (4) SS班1) 診断の手引きの診断精度の検討2) 診断の手引きを用いて診断した患者の予後解析のためのprospective研究3) 腺外臓器障害の実態調査(病態、治療の実際)と文献検索4) 腺外臓器障害に対する診療ガイドラインの策定・本研究の自己評価 本研究の最終目標とした難治性病態の診断・治療のガイドラインの作成に向け、各分担班での作業内容が具現化され、十分に成果を得ることができ、来年度以降に継続する礎を構築することができた。小児リウマチ・膠原病の難治性病態を体系的に研究していく試みは、本邦では初めてであるため、この成果を将来国内外に提示することの意義は大きい。診断・治療のガイドライン作成と普及により、リウマチ・膠原病診療の一般医と専門医の診療の分業体制が進み、難治例は専門医の医療に集約化され、子どもたちの医療・福祉の向上につながる。政策的には、診断・治療のガイドラインを「難病指定」などに活用でき、治療の標準化は医療費請求の客観化につながる。
結論
本研究の最終目標は、小児期のリウマチ・膠原病の難治性病態に対する診断・治療のガイドライン作成である。平成27年度は、研究初年度として、各分担班にて診断・治療ガイドラインのためのロードマップとマイルストンを明示していただき、それに基づいた不可欠な活動に着手していただいた。来年度以降、本研究班では1)小児難治例の診断・治療に関わる問題点の把握と改善、2)文献検索システムによる世界的な希少難治性病態症例の収集と検討、3)炎症病態の基礎的検討からの治療法評価な、多角的に解析を行っていく予定である。今回の研究班での研究成果により各難治性病態の新たなる治療戦略が構築でき、その普及を図っていくことができれば、本研究班の意義は十分に発揮されることになるだろう。
公開日・更新日
公開日
2017-03-31
更新日
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