性分化・性成熟疾患群における診療ガイドラインの作成と普及

文献情報

文献番号
201510092A
報告書区分
総括
研究課題名
性分化・性成熟疾患群における診療ガイドラインの作成と普及
課題番号
H27-難治等(難)-一般-025
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 勤(浜松医科大学 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀川 玲子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)
  • 位田 忍(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学)
  • 鹿島田 健一(東京医科歯科大学)
  • 中井 秀郎(自治医科大学)
  • 深見 真紀(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,129,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、小児慢性特定疾病対象とされた性分化・性成熟関連29疾患の診療ガイドライン作成である。また、正確かつ迅速な診断法の樹立、難病に必要とされる管理・治療法のまとめと普及、件来・症例登録も重要な課題である。
研究方法
性分化疾患の概要、診断基準、重症度分類:まず、全ての性分化疾患に共通する概要、診断基準、重症度分類の基本的考えをまとめた。次に、指定難病候補となる疾患の概要、診断基準、重症度分類を共同で作成した。
尿ステロイドプロフィール解析の有用性:CYP21A2あるいはPOR遺伝子解析により診断を確定した21水酸化酵素欠損症とPOR異常症の鑑別が、ガスクロマトグラフ質量分析法を用いた尿ステロイドプロフィルにより可能であるか否かを検討した。
遺伝子診断法の検討:われわれが集積した患者の遺伝子解析および文献的考察を行い、性分化・性成熟疾患群に対する効率的遺伝子診断システムについて検討した。
症例情報登録および検体保存:研究開発法人国立成育医療研究センターに構築済みの成育希少疾患症例登録システムを活用し、性分化・性成熟疾患患者の臨床情報と遺伝学的データの登録を行った。さらに6ナショナルセンターバイオバンク事業と連携し、サンプルのバンキングを開始した。
結果と考察
性分化疾患の概要、診断基準、重症度分類:全ての性分化疾患に共通する概要、診断基準、重症度分類の基本的考えをまとめ、これに基づき、指定難病候補となる11疾患(精巣形成不全、卵巣形成不全、卵精巣性性分化疾患、混合性性腺異形成症、5α-還元酵素欠損症、17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損症、アンドロゲン不応症、アロマターゼ過剰症、アロマターゼ欠損症、ターナー症候群、マッキューン・オルブライト症候群)の概要、診断基準、重症度分類を作成した。そして、この内容を、日本小児内分泌学会の承認を得た後、日本内分泌学会の基本的承認のもと、厚生労働省が推進する「小児慢性特定疾病と指定難病制度」との参考資料として提出した。この基本的考えの提唱は、今回作成した11疾患の概要、診断基準、重症度分類に使用されており、「小児慢性特定疾病と指定難病制度」の推進に大きく貢献すると期待される。また、11疾患の概要、診断基準、重症度分類の作成は、厚生労働省が推進する小児慢性特定疾病ならびに指定難病事業に大きく貢献すると期待される。
尿ステロイドプロフィール解析の有用性:11-hydroxyandrostenedioneの尿中代謝物11-hydroxyandrosteroneとpregnenoloneの尿中代謝物pregnenediol の比を用いることで、cutoff 1.0により21水酸化酵素欠損症(古典型および非古典型)とP450酸化還元酵素欠損症を感度特異度100%で鑑別できることを見いだした。
遺伝子診断法の検討:本研究期間では、147検体について、性分化疾患と性成熟疾患の全疾患責任遺伝子を搭載した次世代シークエンサー遺伝子パネルを作成し、変異スクリーニングを行い、これらの疾患患者における既知遺伝子変異陽性者の割合および変異パターンを明らかとした。また、MLPAおよびアレイCGHを用いてゲノムコピー数解析を行い、これによって、性分化疾患もしくは性成熟疾患を招く染色体微細構造異常を同定した。
症例情報登録および検体保存:本研究期間では、国内外の医療機関から303の臨床検体を集積し、バンキングした。これには、末梢血、ゲノムDNAのほか、尿道下裂患者の包皮などが含まれる。さらに、患者の臨床情報と遺伝子解析結果をデータベースに登録した。多数の患者の情報が得られた疾患に関する情報は、ホームページ上に公開した。これらは希少疾患であるため、個々の医療機関で把握されている患者は少数にとどまる。全国レベルでの症例登録を行い、追跡調査をすることによって、より良いガイドラインの策定が可能となる。また、バンキングされた検体は、将来の我が国における性分化疾患と性成熟疾患研究に活用可能である。
結論
全ての性分化疾患に共通する概要、診断基準、重症度分類の基本的考えをまとめ、これに基づき、指定難病候補となる11疾患(精巣形成不全、卵巣形成不全、卵精巣性性分化疾患、混合性性腺異形成症、5α-還元酵素欠損症、17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損症、アンドロゲン不応症、アロマターゼ過剰症、アロマターゼ欠損症、ターナー症候群、マッキューン・オルブライト症候群)の概要、診断基準、重症度分類を作成した。また、遺伝的異質性に富む性分化疾患に正確かつ迅速な診断法を樹立する上で、遺伝子診断ならびに尿ステロイド解析の有用性を確認した。さらに、検体集積体制の整備を行った。これらの成果は、本研究の目的達成に大きく貢献すると期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510092Z