神経免疫学的視点による難治性視神経炎の診断基準作成

文献情報

文献番号
201510090A
報告書区分
総括
研究課題名
神経免疫学的視点による難治性視神経炎の診断基準作成
課題番号
H27-難治等(難)-一般-023
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
石川 均(北里大学 医療衛生学部リハビリテーション学科視覚機能療法学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 三村 治(兵庫医科大学 眼科)
  • 吉冨健志(秋田大学 眼科)
  • 敷島敬悟(東京慈恵会医科大学 眼科)
  • 平岡美紀(札幌医科大学 眼科)
  • 中馬秀樹(宮崎大学 眼科)
  • 毛塚剛司(東京医科大学 眼科)
  • 中村 誠(神戸大学 眼科)
  • 後関利明(北里大学 眼科)
  • 田中惠子(新潟大学脳研究所  細胞生物神経学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,984,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 視神経炎は診断、治療の遅れにて両眼失明に至る可能性があり、迅速な対応が必要である。近年、抗アクアポリン(AQP)-4抗体、ならびに抗ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(MOG)抗体陽性視神経炎の研究が進み、視神経炎に対する考えは大きく変化してきている。そのため、早期診断、治療のための診断基準作成は急務である。以上の背景より我々は全国規模で難治性視神経炎患者の抗AQP-4抗体、ならびに抗MOG抗体検査を行い、臨床的特徴を考慮し診断基準を作成することとした。
研究方法
 全国23施設に受診した、難治性視神経炎の中から同意の得られた症例を対象に採血時、血液10ccを追加採取し、解析に使用した。検体は抗AQP-4抗体および抗MOG抗体をバイオアッセイ法で測定した。結果は検体送付元、同時に日本神経眼科学会に送付し、個々の臨床経過票と合わせ分析を行った。
結果と考察
 目標検体500症例のうち平成27年度、140検体の報告が終了した。140名中、抗AQP-4抗体陽性数は22名(15.7%)、抗MOG抗体陽性数は8例(5.7%)、両抗体陽性数は0名(0%)、両抗体陰性数は110名(78%)であった。

抗AQP-4抗体陽性群
 抗AQP-4抗体陽性群(n=22)の平均年齢は54歳 (31~82歳)、男:女=5:95。乳頭腫脹を呈したものは44眼中3眼。追跡可能であった10例の最低視力は平均0.06(手動弁以下を0と計算)。全体の割合は光覚なし:30%、光覚のみ:30%、手動弁、指数弁:20%、0.01~0.1:10%、0.1~0.5:0%、0.5~:10%となった。治療後最高視力の平均は0.3(光覚なし:20%、光覚のみ:10%、手動弁、指数弁:10%、0.01~0.1:20%、0.1~0.5:20%、0.5~:20%)。発作回数は22例で平均1.54回。視野変化は中心暗点22例中7例 (32%)、耳側半盲14%、水平半盲14%、鼻側半盲5%、全欠損23%。調査票提出時点でステロイドパルス施行22例中19例、ステロイド内服、22例中5例、血漿交換を施行したものは22例中1例であった。

抗MOG抗体陽性群
 MOG陽性(n=8)の平均年齢は38歳(23~67歳)、男:女=37:63。乳頭腫脹16眼中7眼。追跡可能であった7例の最低視力は平均0.08。全体の割合は光覚なし:14%、光覚のみ:0%、手動弁、指数弁:0%、0.01~0.1:57%、0.1~0.5:29%、0.5~:0%となった。治療後最高視力の平均は0.9 (0.1~0.5:14%、0.5~:86%)。発作回数は8例で平均1.75回。視野変化は中心暗点8例中6例(75%)、全欠損25%。ステロイドパルス施行、8例中7例(88%)、ステロイド内服は8例中3例であった。
両者陰性群
両者陰性(n=110)の平均年齢は47歳(10~81歳)、男:女=38:62。乳頭腫脹220眼中71眼(32.3%)であった。追跡可能であった51症例の最低視力は平均0.18。全体の割合は光覚なし:2%、光覚のみ:2%、手動弁、指数弁:22%、0.01~0.1:35%、0.1~0.5:25%、0.5~:14%となった。治療後最高視力の平均は0.8(光覚なし:0%、光覚のみ:0%、手動弁、指数弁:4%、0.01~0.1:15%、0.1~0.5:16%、0.5~:65%)。
発作回数は110例中で平均1.36回。視野変化は中心暗点110例中63例(57%)、耳側半盲2%、水平半盲10%、鼻側半盲3%、全欠損11%であった。ステロイドパルスを施行したものは110例中83例、ステロイド内服は110例中15例、血漿交換は110例中3例、Vit B12は110例中5例であった。

考察
 他群と比較して抗AQP-4抗体陽性視神経炎群では95%と圧倒的に女性が多く、視機能低下も著しく6割が光覚以下、視野異常も多彩であった。さらに治療に対する反応も悪く3割の症例が光覚までしか視力が回復しなかった。0.5以上の回復は2割であった。抗MOG抗体陽性視神経炎では比較的穏やかな視力低下であった。また8割以上で治療後の視力は0.5以上に回復していた。例数の関係上、単純な比較は困難であるものの、再発率は他の2群より高い傾向にあった。また乳頭腫脹が比較的多くみられ、前部型視神経炎を診察した際には注意が必要である。両者陰性の視神経炎群では視機能は0.01以上のものが8割を占め、治療後の反応も7割近くで0.5以上に回復していた。
結論
 登録検体より従来の報告通り抗AQP-4抗体陽性視神経炎は難治性で、抗MOG抗体陽性視神経炎症例数は予想を下回るものであった。調査を継続し、より大きな母体で各々の特徴を確認し、最終的な診断基準作成を進めるべきである。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201510090Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,878,000円
(2)補助金確定額
3,878,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,652,512円
人件費・謝金 0円
旅費 206,470円
その他 125,018円
間接経費 894,000円
合計 3,878,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-13
更新日
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