自己免疫性出血症治療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成

文献情報

文献番号
201510085A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫性出血症治療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成
課題番号
H27-難治等(難)-一般-018
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
一瀬 白帝(山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 家子 正裕(北海道医療大学 歯学部)
  • 松下 正(名古屋大学 医学部)
  • 浦野 哲盟(浜松医科大学 医学部)
  • 和田 英夫(三重大学 大学院医学系研究科)
  • 橋口 照人(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 北島 勲(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 惣宇利 正善(山形大学 医学部)
  • 尾崎 司(山形大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,276,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 「後天性出血症」は誰でも罹患する可能性がある疾病であり、これまでは希少であったが、超高齢社会となった我が国では次第に症例数が増加している。特に「自己免疫性出血症」は難治性疾患であるため、本研究では、その総合的な診断基準・重症度分類、診療指針等の作成、改訂と確立などを目的として、全国調査活動を実施する。特に、以下の凝固難病を主な対象とする:自己免疫性出血病XIII/13(AH13)、自己免疫性von Willebrand病(AVWD)、後天性血友病A(AHA)、出血性後天性抗線溶因子欠乏症(HAAFFD)。
研究方法
 臨床症例を調査し、各出血病毎の診断基準案、検査アルゴリズム案、診療指針案、日本版出血評価票(JBAT)を用いた抗線溶薬の止血効果、治療方法評価案などを作成、検証した。それぞれの疾患についての実施項目は以下の通りである。
1)AH13診断基準研究班版改訂、日本血栓止血学会案策定、指定難病資料提出、治療指針案作成
2)AVWDを含む後天性von Willebrand症候群(AVWS)参照ガイド刊行、診断基準案策定
3)AHA診療ガイドライン改訂への協力、指定難病基礎資料作成

 なお、予算の追加が可能になったので、27年度後半から、より多くのAHA疑い症例について免疫学的に抗FVIII/8抗体を検出した。
結果と考察
 平成27年度は初年度であったので、先ず、リーフレットを作製して全国調査再開の通知と共に、関連する診療科や血液専門医2137件に配布し、次に第1回全国アンケート調査を実施した。アンケートを2116件に送付した結果、485件の回答を得て、52例の後天性出血症例が報告されたので、現在二次調査中である(最多はAHA疑い36症例で、次にAH13疑い4症例、AVWD疑い3症例、その他4症例、不明5症例の順である)。別途、直接研究班に相談があった症例の内、15例について統一特別委託検査や実験的精密検査を実施するなど、基礎データを集積中である。広報活動の一環として、以下の10関連学会の年次学術集会でリーフレットを配布した(日本医学検査学会、日本血栓止血学会、日本皮膚科学会、日本老年医学会、日本動脈硬化学会、日本検査血液学会、日本血液学会、日本救急医学会、日本臨床検査医学会、日本小児血液・がん学会)。
 また、冊子体報告書で詳述したように、研究班として、AH13診断基準研究班版改訂、AH13診断基準日本血栓止血学会案策定を支援、AH13指定難病資料提出、自己免疫性AVWD診断基準案策定・厚労省提出、AHA診療ガイドライン改訂への協力、AHA指定難病基礎資料作成・厚労省提出などを実現し、AH13治療指針案作成、AVWS参照ガイド刊行も進行中である。本研究班が提出した資料を元にAH13が厚労省指定難病に採用され、平成27年7月1日から公的医療費助成の対象となったことは特筆すべき成果である。
 なお、初年度は、研究協力者の施設に予め「統一特別委託検査」の採血キットを配布して、必要に応じて使用して頂く体制を整備した。しかし、採血キットの一部に使用期限があり、年度の途中で差し替えが必要であるため、作業の手間、時間、費用が発生することが判明した。このことは、本研究の予算を確実に圧迫するので、来年度からは新規に症例が発生した時に事務局に連絡して頂き、必要に応じて発送するシステムに変更した(経費節減のため平成27年末から実施している)。
 以上のように、本研究は極めて順調に進捗している。
結論
 1年間のブランクはあったものの、研究体制、主治医ネットワークなどが健在であったので、広報活動、全国調査、臨床症例研究、診療ガイドライン関係の各実施計画は、スムーズにスタートし、順調に進捗している。来年度からも、実施計画に沿いつつ、臨機応変に修正を加えながら、当初の目標を達成するために邁進する。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201510085Z