先天性乏毛症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201510078A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性乏毛症に関する調査研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-011
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
杉浦 一充(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山 真志(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
745,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は以下の2つである。
1. 調査のための診断基準を確立したのちに、本邦における先天性乏毛症(CH)の発症頻度、診療実態、QOLを明らかにする。LIPHの遺伝子診断も実施する。(平成27年度、28年度の目的)
2. CHの診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの確立をする。(平成28年度の目的)
本疾患は世界的にも、国単位の全体調査は行われていない。本研究はCHの本邦における発症頻度、診療実態を初めて明らかにするだけでなく、診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの提唱を世界に先駆けて行うことになり、CHの病態の研究、CHの診療の標準化に大いに貢献することが期待できる。
研究方法
CHの全国調査
本疾患の本邦における診療実態、患者数を明らかにするため、全国調査を行う。具体的には、
① 調査のための診断基準を確立したのちに、全国の日本皮膚科学会専門医主研修施設と専門医研修施設に調査票を配り、本症の患者を集計する。
アンケート項目
年齢、性、既往歴、合併症、発症年齢、治療、治療反応性、診断根拠、患者QOL。
全国調査については、研究分担者の秋山は厚生労働省、道化師様魚鱗癬調査研究班の班長として、経験があり、実施する体制は整っている。
以上の結果を集計して、日本皮膚科学会総会等の皮膚科主要学会で本症について発表する。
②   全国疫学調査で得られた患者と家族の可及的多数例でLIPHの変異解析をする。解析法(直接シークエンス法)はすでに確立している。
③   日本皮膚科学会承認の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインを作成する。
結果と考察
先天性乏毛症で、患者の判断で市販のミノキシジルを使用して奏功した4症例をまとめて、論文を報告した(Tanahashi K, Sugiura K, Akiyama M. Topical minoxidil improves congenital hypotrichosis caused by LIPH mutations. Br J Dermatol 2015 Sep;173(3):865-6.)。つまり世界ではじめて、先天性乏毛症にミノキシジルが有効である可能性を報告した。
第20回 日本臨床毛髪学会学術集会(平成27年12月5日:高知市)のシンポジウムで「先天性縮毛症・乏毛症の病因遺伝子」について講演し、日本の毛髪の専門家(皮膚科医師、形成外科医師など)に先天性乏毛症について啓蒙した。
そして、全国調査のための診断基準を確立した。全国の日本皮膚科学会専門医主研修施設と主たる専門医研修施設、総数96施設に調査票を郵送して全国調査を開始している。したがって、成果、進達度は当初の予定通り得られている。

D.考察
本研究はすでに、ミノキシジルがCHに有効である可能性を世界で初めて示した。全国調査の結果を解析することにより、本疾患の診療実態を明らかにすることができる。本研究により、日本の毛髪の専門家への啓蒙活動も進んでいる。
結論
本研究はCHの本邦における発症頻度、診療実態を初めて明らかにするだけでなく、診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの提唱を世界に先駆けて行うことになり、CHの病態の研究、CHの診療の標準化に大いに貢献することが期待できる。さらに、ミノキシジルが有効であるか否かの医師主導型前向き治験をすすめ、本疾患に本当に本薬剤が有効であるか否かが明らかになると思われる。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510078Z